第4話 ある鬼と従者の物語② ※武虎side
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※武虎side
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あれは…25年前
私が13歳の頃…
当時の私は桜貝町に1人で
生活を送っていた。
両親はいない。
母は身体がもともと弱かったせいか
私を産んで2年ぐらいで亡くなり、
男の手一つで育ててくれた父は、
病に倒れ、闘病も虚しく、
ついに3ヶ月前に息を引き取ってしまった。
「お父さん…私
これからどうしたら良いの…
1人はやだよ……」
…悲しんでいる暇はない。
働く場所……探さなくちゃ…
未成年でも働ける場所…
お父さんの貯金だけだと、
そろそろ底がついちゃう…
でも…お父さんが亡くなった事は、
私とって傷が大きくて…
悲しくて、苦しくて、辛い…
「うぅぅ……」
涙を零し、食材を買いに、
道中を歩いていると…
ドンッ!!と誰かにぶつかり、
尻餅をついた。
「いたたっ…ごめんなさ……」
ぶつかった相手を見て、
私の息が止まった。
だって……
この王国の王様だったから、
変装しているようだけど、
私から見たらバレバレ…
明らかに国王様だ。
特徴の角が隠しきれていない!!
なんで王様がこの町にいるの?!
よりによってぶつかった相手が、
王様だなんて笑えない…
…そう言えば…噂で聞いたけど
雛美火王子の方はぶつかった人(人間)を
容赦なく殺したって…1週間前…
どうしよう…殺される…
「ごめんなさい…わざとじゃ…」
焔火「儂の方こそすまない…
大丈夫だったかお嬢さん」
「えっ……」
……手を差し伸べ、心配そうに伺う
焔火国王…予想外の対応に、
声を漏らす。
てっきり…雛美火王子と同じだと
思っていた。
焔火国王は私の土埃を払い退けると
じっと私の姿を見た。
「…………あの…どうされましたか?」
焔火「…お嬢さん…何故
見なりが煤だらけなんじゃ?
ご両親は?」
「…お父さんとお母さんは…
病気で亡くなって
…着物を買うお金がなくて…
国王様の前にも関わらず、
汚い格好で申し訳ございません」
焔火「……そうか…
それは辛かったろう…
こんなにも幼いのに…
…だけと…桜貝町だと…
未成年で働ける場所は…
そうじゃ!」
ポンッと手を叩き、
私の肩を掴んだ。
焔火「お嬢さん!牡丹城の
お掃除係の仕事はどうじゃろうか?
住処は万全じゃ!お給料も高時給じゃ!
妖怪たちも雛美火以外は優しくて、
思いやりのある奴じゃ!
…どうじゃろうか?」
「…………」
……牡丹城で働く…雛美火王子がいる
あのお城へ……正直に言うと怖い…
行きたくない…
……でも…
こんなに待遇の良いお仕事…
今ここで逃してしまうと…
2度とチャンスは訪れない…
子供の私じゃ…何もできない…
働く場所を見つける事も
生活を送ることも…
このまま野垂れ死ぬぐらいなら…
「国王様…私…牡丹城で働きたいです
お願いします…」
焔火国王に深く頭を下げ、
私は牡丹城に働く方を選んだ。
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…そうして、
焔火国王と出会って1ヶ月後。
私は牡丹城のお掃除見習いとして、
妖怪さん達と一緒に働いた。
妖怪さん達は、本当に気さくで優しくて、
すぐに仲良くなった。
妖怪1「武虎『君』、お仕事を
覚えるの早いね。助かるよ~」
「先輩達が丁寧にご指導いただいた
お陰です。ありがとうございます。」
妖怪1「もう、お世辞の良い事を
言って!ご褒美に可愛い雑貨を1つ
プレゼントしよう!」
「先輩!ありがとうございます」
和気あいあいと楽しく
会話していると……
衛兵「大変だー!!2人ともっ!」
バタ バタ バタ
衛兵さんは顔を青ざめ、
私達に駆け寄った。
妖怪1「どうしたの?
そんなに慌てて何かあったの?」
先輩の問いに衛兵さんは、
震えた声でこう言った。
衛兵「雛美火王子が…城に帰ってきた…」
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