第1話 オキニスside



ここは、パンドール王国、

パンドール城内の一室にいる。



緑「……真澄…お願い…

目を覚まして…クモード王国に

帰るんでしょ…私達を置いていかないで」


黒夜「……起きてよ…ねぇ…真澄

僕、これから2人にいっぱい

好きな事や幸せにさせたいのに…

こんなの…あんまりだよ…」



現在、俺は…

真澄の母親の緑さんと…

愛狐の黒夜ちゃんらしい人物の

3人で…


真澄「……………」


未だ目を覚さない、

真澄を見守っていた。


牡丹王国では…

雛美火王子に刺された傷を、

治癒魔法で塞ぎ、様々な処置を行い、

彼女は危険な状態は脱した。


呼吸は安定している。

だけど…1ヶ月経っても

彼女は目を覚さない、


真澄と関わった妖怪達が、

色んな呪いや術を施しても…


魔力が膨大にある、

シルク魔王やシリンヌ王子が

呪文を唱えてみても…


だめだった…

あの綺麗な黒い瞳が

開く事はなかった。


どうして…何故…何が駄目なんだ…

もう、真澄は二度と目を覚さないのか


「オキニス君」って呼ぶ

あの優しい声も聞けないのか…



「……俺があの時、雛美火王子に

近づかなかったら…こんな事には…


俺のせいで…真澄…」



視界が揺らぎ、止めどなく涙が溢れる。


俺…最近泣いてばかりだな…

一国の王子がなんて情けない…


弱気になるな、真澄が目を覚ます

可能性が1つ残っているだろ!


ああ、真澄の家族がいるのに…


涙を見せない様に顔を下げようとした時、

目の前でハンカチを渡された。


顔を上げると目を赤く腫らした

緑さんが立っていて、


緑「…大丈夫ですよ。オキニス王子

真澄は絶対に帰ってきます


…あの子は強いです!どんな逆境に立っても

自分の道を切り開いたんですから」


緑さんはニコッと笑い、

俺を元気付けた。


笑い方や雰囲気が真澄にそっくりだ。



黒夜「……そうだよ

どんな時も真澄は諦めなかった

和菓子の試練だって…僕達が

弱気になって…どうするんだ


オキニス王子!!」


ガシッ!!


黒夜ちゃん…いや黒夜さんから

いきなり、肩を掴まれた。


力が強い…そう言えば…

この方、雛美火王子に両手・両足の骨を

折られたって聞いたけど


…大丈夫かな、普通に動けているし

治ったのか?



黒夜「お願いです!真澄を

あの世から意識を取り戻す為、

もう一度、協力していただけないでしょうか


どうか…お願いします…

貴方の協力が必要なんです…

ちゃんと対価は支払いますので…」


俺の肩に持つ手はブルブル震えていて

悲痛な面持ちで俺を見つめた。


それは表情はまるで…子供の帰りを待つ

親そのもの…


容姿も特に目元が真澄に似ている。


この人…本当は愛狐なんかじゃなて…

真澄の本当の父親なんじゃ…



「黒夜さんっ真澄を助けるのは

当たり前です!守りきれなかった

俺の責任です!」


黒夜「オキニス王子…」


「だから対価払うなんて言わないで下さい

『貴方の娘さん』は、俺が必ず目を覚まさせます!」


黒夜「……!!ありがとうございます

オキニス王子っ…」


黒夜さんは、深く頭を下げ、

続け様に緑さんも頭を下げた。



そうだ、真澄は生きている…

希望は充分にある。諦めるな俺


それに…此処はパンドール城、

強力な助っ人だっている



カツ


カツ


カツ


バンッ!!(扉が開く音)



パンド「オキニス君!!

真澄さんの魂を見つけたよ!」


パンド・トコノマ

パンドール王国、現国王。



彼は、たった1人の

あの世のこの世の掛け渡しができる、

重要人物だ。




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