本編 最終章
プロローグ 死者の都【サイハテ】
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ザァァ…ザァァ…
「…んん……あっ…
あれ…ここは…どこ?」
暖かい日差しが顔に当たり
目を覚ました。
キョロキョロと
上下左右、辺りを見渡す。
空は雲ひとつない鮮やかな青空
辺り一面中には色とりどりの
花が咲き乱れていた。
「……綺麗な場所だな…
なんだか落ち着く…」
『ここ』はどこなんだろう
どうして、私は『ここ』にいるんだろう。
『ここ』に来る前は何を
していたんだっけ…
「…………………」
うーん…だめだ思い出せない…
でも、すごく大切な事を
忘れている様な気がする…
……取りあえず、
気分転換に『ここ』をお散歩しよう。
何がキッカケで思い出すかも
しれない
すくっと立ち上がり、
私は真っ直ぐ続く一本道を
歩き始めた。
「穏やかだな…このまま
『ここ』に居たいな…」
…でも
ダメな様な気がする
『ここ』に居続けたら、
戻れなくなってしまう
……どこに?
「………あっ……」
…思い出した
【クモード王国】だ。
どうして大切な事を
忘れていたんだろう
私、クモード王国に異世界転移して、
それからっ…洋菓子を広めていて、
仲間ができて、親友ができて、
好きな人ができてっ…
毎日が楽しくて、
時にはあっと驚く様な
日々を送っていた。
だけどっ…
「………っ……イタタッ」
一瞬だけ、腹部に激痛が走った。
ナイフに刺されたような鋭い痛み…
「……そうだ……」
この痛みで全てを思い出した。
私、牡丹王国に攫われて、
和菓子を献上していたんだ!
元の世界から助っ人に来た
母さんと黒夜ちゃん
牡丹城でお仕事している
蓬ちゃん、翠狐さん、
櫻海さんに檸門さん…
桜貝町の呉紅店主
助けに来てくれた
オキニス君、ダージリンさん、
シリンヌ王子…
皆んなで力を合わせて
和菓子を作って…
9個献上する事ができて、
残り1個になって…
あと、少しだった
あと少しでオキニス君達と
クモード王国に戻れるはず
だったのに…
「…………っ…」
ポロポロと涙が出た。
あまりの悔しさと悲しさに
思わずしゃがみ込んでしまった。
「……どうして…」
……どうして…『あんな事』が
起きてしまったんだろう
まだ、死にたくなかった
もっと生きたかった
クモード王国で…
母さんと黒夜ちゃ…ううん父さんと
3人で暮らしたかったし
仕事仲間にも会いたい…
ピンキーさんとダージリンさんで
女子会をする予定も
ヨーグルさん一家と一緒にお菓子を作る
約束だってある
それに…
「一度でも良いからオキニス君と
デート…してみたかったな…」
…でも…もうそれは
出来ない…『ここ』にいると言う事は…
私は死んでしまっている事だよね
多分きっと…『ここ』は
あの世なんだろうな…
『ここ』は景色が綺麗で
落ち着く場所だから…
………もう
覚悟を決めよう…
立ち上がり、歩みを進めようとした
その時、
???「それ以上、進んじゃダメ!
貴方はまだ死んでいないわよ!!
止まって!!」
私を引き止める声がした
振り向くと
???「はぁ…はぁ
良かった…なんとか間に合って…」
薄い亜麻色の髪に紺青色の瞳、
クラシックメイド服を着た女性が
息を切らして立っていた。
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