第7話 ばあやとバニラビーンズ(カスタードプリン)



チャイ家に1泊して、

2日目の朝…



ダージリン「2人とも準備は出来たか?

早速、ばあやの所に行くぞ!ついて来い」


ダージリンさんの案内の元、

ばあやさんの家に向かった。


ばあやさんの家はチャイ家から

15分歩いた場所にあり…



「……この甘い香り…もしかして!!」


ピンキー「やっぱり真澄ちゃんが

探していた物よね?この香り、

お菓子に合うんじゃないかって

思っていたのよ」


「はいっ!間違えありません

私が探していた物はこれです。」


…長い道のりだった…

森の中ひたすら歩き続けて

やっと…やっと…見つけた。


私一人じゃ無理だった。

ピンキーさんとダージリンさんに、

感謝しなくちゃ…


ただ1つ問題が、ばあやさんが

食材を分け与えてくれるかどうか…


元いた世界ではバニラビーンズは

高級食材。たった二本で1300円以上は

したはず、


作るのにも手間がかかり、

たしか、成熟したバニラ豆が63℃のお湯の入った大きな桶に入れ、すばやく水を切って、


1日2時間ずつ日光のもとで乾燥させ、それ以外の時間は布でくるんでおき…と言う


とても長い行程を行った後、

やっと完成する。


手間も時間もかかるから、

普通だと分け与えてくれないのが、

当たり前かも知れない…


でも…!!


カスタードプリンを作るには必要な材料なの

どうしても欲しい!!


その為、私は賄賂と言う名のお菓子を

持参してきた。



そう…持ってきたのは

バニラビーンズを使用していない

カスタードプリンを


ダージリン「じゃあ、中に入るぞ!

ばーや!お菓子職人の真澄を

連れてきたぞ」


ダージリンさんがドアノブに手をかけ、

ギィ…とドアを開けようとした瞬間…





ドッカーン!!!



突然、爆発音がした。



真澄・ピンキー・ダージリン「「「…………」」」


そして もくもくと煙が立ち込んできた。


「……ほっ…え?かっ…火事っ?!

たた大変!!消火活動っ!!」


ピンキー「……あ~また、

この様子だと失敗したわね

ばあや…真澄ちゃんこれは大丈夫よ」


ダージリン「あぁ、そうだな…俺らも最初はびっくりしたけど…ばあやー大丈夫か?」


ダージリンさんがげんなりした顔で、

声をかけると、


ゲボッ ゴホッと咳き込みながら、

ばあやさんが現れた。



ばあや「……よっようこそ、

私の実験室兼我が家へ げほっ…」


その姿は見るからに

爆発に巻き込まれた人そのもの…


服や顔には灰が付いており、

髪の毛はボサボサになっていた。


傷は無さそうな感じはするけど、

だっ…大丈夫かな?


ダージリン「ばあや、また今日も

派手にやらかしたな 連れてきたぞ!

こいつが真澄だ。」


「はっ…初めましてばあやさん、

新川 真澄と言います。

よっ…よろしくお願いします。」


ばあや「ほお…可愛らしいお嬢さんだ。

オキニス様と同い年ぐらいかな。よろしくね

私は ばあや バニラビーンズの職人だよ」


にこっと笑いばあやさんは

握手をしてくれた。


ばあや「ところで真澄ちゃんはお菓子職人と、ピンキーから聞いたけど、

お菓子ってどんな物なんだい?」


「はいっ、お菓子はこう言う物です。

良かったら、食べていただけない

でしょうか。」


ゴソゴソとカゴから昨日作った

カスタードプリンを出した。


ピンキー「えっ?!何それ

まだ食べた事ないわよ そのお菓子!!

何で昨日出してくれなかったの?!」


ダージリン「……食い意地はりすぎだ 姉貴…

昨日いっぱい菓子を貪ってただろ

しかも俺様の分まで…」


「ごめんなさい2人とも、

これはカスタードプリンと言って

……持ってきたのは

まだ未完成の物なんです。」


すると、ばあやさん目を光らせ、

こう言った。


ばあや「…未完成って…もしかして、

このお菓子は私が作るバニラビーンズが

必要なんだね。


なら、早速いただこうじゃないか

みんな中にお入り!」


「ありがとうございます!お邪魔します」


頭を下げ、私は ばあやさん宅へ

足を一歩踏み入れた。





ばあやさん宅へお邪魔して、

爆発により部屋の換気と掃除をしてから


未完成のカスタードプリンを4つ、

テーブルに並べた。


お供のコーヒーをつけて、


「では、皆さん食べてみて、

思った事を教えて下さい。」


ピンキー「待ってました!いただきまーす」


ダージリン「黄色い物体にかかってるソースが気になるな」


ばあや「どれどれ、一体どんな味がするんだろうね」



パクッ と3人はカスタードプリンを

口に入れた。


「……どうでしょうか?」


ピンキー「何この食感うまっ!!卵料理で

こんな甘いお菓子が出来るなんて、

信じられない」


ダージリン「ああたしかに、ソースの甘苦さにも合うぜ!真澄、このソースは何から作られてるんだ?」



「ダージリンさんソースは砂糖と水の二種類から

作りました。」


ダージリン「へっー…たったそれだけで

真澄のいた世界はすげーな」


ピンキーさんとダージリンさんは、

美味しそうに未完成のカスタードプリンを、

食べていた。


肝心のばあやさんは……


ばあや「うーん…たしかに美味しい…

だけど何か物足りないような?

2人はそう感じないのかい?」


微妙な顔をして、ピンキーさん達に

問いかけた。


……そう、私はこの言葉を待っていた。



お菓子の存在を知らない人達に、

物足りなさを気づいて貰えるか

至難の事だったけど、


気づいて貰えて良かった。

さすが、バニラビーンズの職人さん!!


ピンキー「えっ?そうかしら、

私はこのままで、充分美味しいと思うけど…

真澄ちゃん、未完成って言ってたけど、

もしかして……」


「はい、ばあやさんの言う通り、

実はこのカスタードプリン、

材料が1つ足りないのです。」


ばあや「その足りない材料と言うのが…」


「ええ、ばあやさんが、作っている バニラビーンズです。その…この世界でのバニラビーンズの使用方法はたしか…」


ばあや「そうだね、香水や香り関係の物に使っているよ。まさか、バニラビーンズを食材に使用する世界があるとは…ふむ……」


私も食材にしない世界があるなんて、

びっくりします。


「…ばあやさん、

いきなりで申し訳ございません。


実は、このカスタードプリン、

クモード城で販売する事になりまして…

可能でございましたら、バニラビーンズを

私に分けていただけないでしょうか」


…と言い、深く頭を下げた。



……先刻の爆発はきっと、バニラビーンズを

作る為に起きたアクシデントだろう…


彼女は命がけでバニラビーンズを作っている


今更だけど…分けて貰えるのは、

難しいのかも知れない


諦めと不安が入り混じった、

感情でばあやさんを見た



ばあや「そっそんな畏まらなくていいんだよ!頭をあげて!!


私が作っている物が何かの役に立つなら

いいよ。真澄ちゃんにあげる」


「本当ですか!!あっありがとうございます!」


ばあや「ただし、バニラビーンズをあげる代わり、条件がある、


…バニラビーンズを使ったプリンを

今、食べたいけど…作ってくれるかい?」


「もちろん!喜んで、今から作ります!

お台所借りますね。」


そう言って私は急いで、

本当のカスタードプリンを

作る為、作業に取り掛かった。




……………………………………………………





…………………………………………




……………………………





その後…


完成した本当のカスタードプリンは、

未完成のプリンより、大好評だった。


ばあや・ピンキー「「美味!!おかわり!!!」」



ダージリン「2人とも、食い過ぎた……って

何でいる?!爺ちゃん!

というか、いつから来た?!」


アール「うまいのぉ

わしこんな食べ物初めてじゃ」


バニラビーンズの甘い香りに誘われて、

住人の何人かがばあやさん宅にやって来て、

私が作ったプリンを食べてくれた。


その中にはラピスラズリの森の村長、

アールさんがいた事にはとても驚いた。



こうして、カスタードプリンを、

材料がなくなるまで、作り続け、


全員「「ご馳走様でした!!」」


「いえいえ、召し上がっていただき、

ありがとうございます。」



気づけば、終わる頃には夜になっていた。





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