第5話 オキニスside


ここはクモード城、



今、俺は真澄とお茶をしている。



「美味しいですね。この

グリーンチャイのクッキーが

特に…この紅茶と合います!」


真澄「……お口に合えてよかったです…」


本当は市民(一般人)は入る事は出来ないが、

俺が誘った為、真澄には城に入る許可が得られた。


当の彼女は城に入った事がないのか、

緊張で全身ガタガタと震えている。


それを見て可愛いと思ってしまうなんて

俺は重症だ。


「真澄の作るお菓子は優しい味がして、

俺は好きです。それで…」


次もお菓子を作って欲しい、

また、このようにお茶でもしないかと

言おうとしたが、


彼女は辺りを見渡し、ティーカップを、

見て さらに挙動不審になっていた。



…よっぽど高価な物に慣れていないのか

家を与えた時も、


(こんな豪華な家貰えません!

部屋は一部屋あれば、充分です)って…


青ざめた顔で言われた時は、

今までどんな暮らしをしていたのか

疑問に思ってしまう。


…そろそろ彼女の意識をこっちに戻すか。



「真澄?どうかしましたか?」

まあ、理由なんて分かっているが


真澄「いえっ!大丈夫です。

何でもございません!

私こそ紅茶ありがとうございます。

とても美味です!!」


「いえいえ、どういましまして、

俺の方こそお口にあえて良かったです。」


真澄「あっあとクモード城で

お茶が出来るなんて…夢みたいです。


オキニスさんはお城で働いているのですか?

一般の方は入れないと聞いたので…」



ぎくっ!!


…まずい…お城に招待できるのは、

一部の者のみ…彼女に伝えるべきか…

俺の正体…いや、言った所で、

遠ざけられてしまったら…


今の様に関わる事ができなくなってしまう。


それだけは阻止したい。

…何か言い訳をしなくては…


「………えっーと…

はい、そうなんです…

なので知り合いや友人を

お城に招待でき…「あらっオキニス帰ってきたのね?」」


「「………!」」


…なんでこういう時に

現れてくるんだ 母さん…



ルビー「あら?そちらの

可愛らしいお嬢さんは

もしかして、オキニスの……」


「ちょっと!! …真澄、少しお待ち下さい。」


母さんの事だから、口止めさせないと、

俺の正体や極秘の内容を

うっかり話してしまうかもしれない。


母さんの手を引っ張り、

真澄に話の内容を聞かれないよう、

少し離れた場所に連れて、

今の状況を話した。



ルビー「……えっ!!まだ、

彼女に話していないの?

私達の正体や、てっきりあなたの事だから、

もう、告白して付き合っているのかと……」


「しー……!!声を抑えて!!

まだ、何も伝えてない。

真澄は恋愛経験はないと言っていたし

いきなり がっついたら、

避けられるどころか、警戒するよ。」


ルビー「あ…ごめんなさい。なるほどね

分かったわ。確かに恋愛経験が0だと、

真澄ちゃんの身も持たないわね。

私もそうだったわ。


良かった、オキニスはちゃんとしてて、

お父さんと大違いだわ。」


「……父さん」


ルビー「じゃあ、そろそろ行きましょうか?

真澄ちゃんを待っているしね。」


ちらちらと頬を染めながら

俺達2人を見る彼女。


なにか勘違いしているなきっと…。


案の定、戻った所で

真澄から恋人同士ですかと

言われた時は、どうしたらその様に

見えるのだと、心の中でツッコミして

しまった。



…その後は、口止めしたのも関わらず、

母さんは、真澄に対して、

俺の嫁になってくれないかと

言いかけたり、


クッキーを横取りされたりと、

散々な事がおき、


「母さん!!!」



真澄の目の前で

声を荒げてしまった。

お願いだから、変な事をしないでくれ!


そんな俺達のやり取りを見て

何を思ったのか、彼女は…


真澄「……母さんに会いたいな…」


小さな声でポツリと呟いた。


悲しげな表情に思わず、

胸が痛くなり…


「真澄……」


ルビー「真澄ちゃん……」



母さんにも聞こえていたらしく、

同時に彼女の名を呼んだ。


真澄「あっ…いや…気にしないで下さい。

何でもないです。」



ルビー「…無理しないで、元の世界に家族がいるのよね。会いたくなる気持ちもわかるわ。でもね、ここにいる間は、


オキニスでもいいから、

一人で抱え込まないで

みんなに頼ってほしい。


元の世界に戻る方法も一緒に協力するわ」

 


オキニス「……………」


何か声をかけようとしたが、

母さんが早く、真澄を慰めてくれた。


「ルビーさん……うぅ…

ありがとうございます」


ただ…母さんには申し訳ないが、

俺は彼女を元の世界に戻す気は更々ない…


たとえ、本人が元の世界に戻してと、

言ったとしても…


ルビー「はいっ これで暗い話はおしまい!

真澄ちゃん、クッキーありがとう。

ご馳走様でした。」


真澄「どう致しまして、もし気に入っていただけなら、また作ります。」


ルビー「あらっ嬉しい!でもこの美味しさ、

私達だけじゃ、勿体無いから…

ねえ、真澄ちゃんが良ければ………


クモード城でお菓子を販売してみない?」


真澄「………えっ…私の作ったお菓子を…?!」


なっ…何をいきなり、言っているんだ、

母さん…呆気に取られていると、


カチッと母さんと目が合い、口パクで…


ルビー(オキニス、大丈夫よ。

お城でお菓子を販売したいのは本当だけど、

もう一つ ちゃんとした理由があるの、


真澄ちゃんが帰ったら、後で話すわ)


……さすが、母さん、

俺の思惑はバレていたか。


分かったと俺も母さんに向けて、

頷いた。



……………………………………………………


【おまけ 真澄が家に帰った後の

2人のやり取り】


※2人の会話のみとなります。


オ…オキニス

ル…ルビー


時間は夜となり、

真澄が家に帰った後…


俺と母さんは、先ほどの話の内容(お菓子をお城に売る事)について話し合っていた。




オ「母さん、真澄に言っていた内容は、

どういう意味なんだよ。彼女がつくったお菓子をお城に売るって…」


ル「まあ、まあ、落ち着いてオキニス…

貴方の気持ちも分かるわ…


私が(元の世界へ戻る方法も協力する)って

言った時、貴方、恐ろしい表情になっていたわよ。


彼女を元の世界に戻してたまるかって…」


オ「……………」


ル「でもね、オキニス このまま真澄ちゃんを

元の世界に戻さなかったら、今までの信頼が無くなってしまうわよ。」


オ「じゃあ、どうしたら…」


ル「そこで! まず、真澄ちゃんが得意とする

お菓子をお城で売る。そしてゆくゆくは、

メチル街で、お菓子を売って、お菓子を作れる人を増やすの! お菓子が有名になれば、真澄ちゃんはこの国とって必要な人間なるでしょう。」


オ「……っ!なるほど……いや、だけど

もし…元の世界に戻るとなってしまったら…」


ル「もしそうなった場合は、再度ここの世界に転移出来る方法を見つけて、

真澄ちゃんのお母様も、

迎え入れたら良いじゃない。」


オ「…その発想は無かった。

ありがとう母さん。俺…頑張って再度

この国に転移できる方法を

探してみるよ。」


ル「どう致しまして、じゃあ私は元の世界に

戻る方法を探すわ。それとオキニス…」


オ「なに?母さん」


ル「間違ってもお父さんみたいに監禁とか、強姦まがいな事はしないでね。お願いよ…」


オ「監…するわけないだろ!!

約束する。(何やってるんだ…あの人は…)」


ル「オキニスはしないと信じてるわ。

あらっそろそろお父さんが

帰ってくる時間だわ

出迎えに行ってくるわね。」




そう言って母さんは、

お城の外へ足を進め、


俺は…


「…さっそく、書物庫へ行きますか。」


彼女がもう一度この国に転移する方法を

探す為、書物庫へと足を進めた。



…………………………………………………





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