多才な子供②

「お母さん、見てよ! これ僕がやったんだよ」


 そう言って絹のチュニックを着たゴードステインは的の中央に見事に当たった矢を指さした。ローラが聖堂から大広間へ続く回廊を歩いている時だった。


 右側には壁、左側には柱が等間隔に並んでおり、上部でアーチ状になって天井と繋がっていた。子供はその柱の間から見える庭で武芸の稽古をしていたのだ。


「素晴らしい、素晴らしいわ! 」


 ローラの口が独りでに言った。


 会話している間、ローラは自分がどう見えるか想像していた。部屋着の絹のドレスを着た城主夫人が、その子供と楽しそうに話している。さぞ、理想的に見えるに違いない。でも私の心は……。



「お母さん―――」

 ローラは大広間に一人で向かう間ボソっと呟いてみた。しかしその言葉を聞くと心臓がキュッと絞めあがる感じがした。


 まるで、お母さんなんだから子供の面倒を見なきゃだめよ、と暗に言われているよう。


“ゴーディは愛を強いる子供アマ―ティス=エテルヌスなんだわ“


 大広間へ向かいながらローラは思う。


 表面上は優しく接したが、心の底に、子供を愛することができない冷淡な一面があると自分でも分かっていた。


“このまま城に一生閉じこもってしわくちゃになるのかしら。そんなの嫌だわ! ”


 ローラはそわそわし出した。


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