ミノリ ―行動―
晩御飯を食べ終えて、ミノリは自室に戻る。机の上にあった課題には手をつけていない。
「……どうしようかなぁ」
シャープペンシルの替わりに、手には包装されたパンダのストラップがあった。
顔を背け、壁掛けカレンダーを見遣る。今日の日付には赤い丸印。ハルカの誕生日だ。
女の子同士は各々の誕生日を祝うが、男同士は変に思われて仕方がない。同じ『祝う』なのに不公平だ。そんなこともあって、プレゼントは渡せず仕舞いだった。だが自分が渡さなくても、彼なら女子にプレゼントを貰っているだろう。
「でもなぁ……せっかく買ったんだし……」
――安価だけど。どれくらい安いのかというと、千円札を出したらお釣りがある安さである。
長く付き合っていても、ハルカがなにをほしいのかが解らない。携帯につけられるストラップしか思いつかなかったのだ。
ハルカは誕生日になると暗い顔をしていた。今日もそうだ。笑ってはいるが、それは表面上にしかすぎない。
誕生日が過ぎると何時もの明るいハルカに戻るのだ。
誕生日に心から笑っているハルカを見たことがない。一度も、見たことがなかった。
「……よし」
ミノリなにかを決めた。――ハルカに会うことを決めたのだ。
片手にストラップを握りしめ、部屋を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます