第153話 ホーム3
「あぁ? 暴れてる奴がいるって言うから来てみりゃ、谷々じゃねぇか」
「……御法川?」
未だ土埃の煙る中、そこには懐かしい同級生の姿があった。
「こんなとこで何してんだ?」
拳についたコンクリート片をぱっぱと払い、鷹揚な態度で近づいてくる。
どうやら先程の爆裂音は御法川がアビリタで壁を砕いた音らしい。
「それは僕のセリフだよ。校庭でゾンビに追いかけられる御法川を見て随分心配していたんだから」
僕以外が。
「はっ、俺があんなもんで死ぬかよ。きっちり全員ここに連れてきてるぜ。進藤も奥にいっからよ。会うだろ?」
そう言うと御法川はくるりと踵を返し、奥へ進んでいく。
相変わらず不遜かつ勝手な態度だがそんなところも懐かしく感じてしまう。
「そうだね。積もる話もあるし、お言葉に甘えようかな」
御法川の言葉に応じ、モーセの海のように分かれた観衆の中を歩いていく。
「ちょ、ちょっと待ってください御法川さん! その余所者は危険です! それに俊樹さんも
最初の方でテディベアパンチを食らっていた男性が叫ぶ。
まぁ、流石にこのまますんなりとは行かないか。
当初の予定とは随分異なり、だいぶ派手に暴れてしまった。
とはいえ元はと言えば不可抗力なわけだし、この状態ならちょっと頭を下げるだけで許してもらえないだろうか?
そんな打算を描いていると、先を歩いていた御法川が歩みを止める。
その様子を見て、観衆の中で何人かが「ヒッ!」と息を飲んだ。
「……俺の決定が気に入らねぇか?」
怒鳴り声を上げたわけでもないに、その声は遠くまでよく響いた。
意識を向けられた男性は「あっ、あっ」と声にならない声を上げている。
……以前はそこらにいる喧嘩自慢くらいのドスしかなかったが、少し見ない間に随分言葉に殺気がのるようになった。
これは僕が止めるべきなんじゃないかと思案していると、殺気だけで過呼吸になりかけている男性の後頭部へ拳が突き刺さった。
「すいませんでした! こいつには後でしっかり言い聞かせておきます! どうぞそのまま行ってください! 副総長!」
はっ倒した男をそのまま土下座させ、自らも頭を深々と下げる。
その姿は龍之介さんのものだった。
っていうか。
「副総長?」
グリン、と視線を戻して御法川を見つめる。
すると本人は得意げな顔で
「おう、かっけぇだろ?」
と応えた。
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