第12話 異世界にて9

「……魔法適性直は限りなく0です。1stの段階の魔法すら行使は難しいでしょう。それに……マナの器もほとんど標準かそれ以下といったところでしょう」


一番たちと分かれた後、来た道の途中にあった狭い個室へと通された。


1人残された部屋で待っていると、しばらくして黒いローブを着た男たちが3人ほど部屋に入ってきた。


男たちは挨拶すらしないまま「これに手をかざせ」とぶっきらぼうに言い放ち、ローブの裾から水晶玉のようなものを取り出した。


言われた通りにすると、水晶玉は薄ぼんやりとした光を少しだけ放ちすぐに落ち着いた。


なんだこれ、と不思議に思っているところに先ほどの声がかかったのだ。



「……召喚されたものはエゴの方ばかり注目されるが、魔法への適性値やマナの器の容量が異常に高いケースも多い」


向かって右のローブの男が不躾に話し出す。


「その場合、仮にエゴが弱くとも魔法戦闘力の高さで補える場合がほとんどなのです」


右の男の言葉に続けるようにして真ん中のローブの男が話す。


「くくっ、そんな頼みの綱だった魔法適性値、マナの器ともにダメダメのダメ。終わってんなぁ、お前」


今度は左のローブの男がその言葉に繋げて愉快そうに告げる。


「これではいくら修練を積んだところでまともに魔法を行使することは不可能だ。……そしてそんな無駄なものを城に囲う余裕はないとすでに王が仰られている」


「はぁ……」


返す言葉もないまま、とりあえず男たちの言葉に答える。


「はっ! 余裕がないんじゃしょうがねぇだろ? 残念だけど残念ながらお前は不合格! よってぇええ?」


「追放となります。お疲れ様でした」


3人の男が変わるがわる話し、最後に丁寧な口調の男が話をまとめた。



「……追放と言うと、国外追放とかそんな感じですかね?」


追放されたことがこれまで無いため、いかんせん想像でしか話すことができない。



「なんだぁ? 存外冷静じゃねぇか。つまんねぇな。……安心しな。追放はあくまで城からだ」


「そうですか。……他の勇者……みんなには僕の追放についてなんと伝える気ですか? 才能の有無で決めた、なんてのは一番あたりが結構猛烈に抗議してきますよ」


差別的発言だけでもあれだけ怒りをあらわにしていたのだ。


追放したなんて知ったら最悪手を出すかもしれない。


「その辺りは心配ありません。勇者様方に『谷々様は特殊な修練のために城を出立した』とお伝えしておきます。違和感は持たれるでしょうが、本人に会えない以上我々の言葉を信じるしかないでしょう」


丁寧な口調とは裏腹にとんでもないことを言う。


おそらく、例え僕がここで暴れだしたとしても簡単に制圧できるという自信があるのだろう。


「……そうかもしれません。しかし、僕が言うのもなんですが、それだと城外への追放程度だと甘いんじゃないですか? 城下町で一番達に出会ったら、僕は挨拶より先に告発しますよ」


「それも心配ありません。なぜなら本当に修練に出てもらうのは他の勇者様方の方ですから。魔王討伐までこの街に戻ることはないでしょう。……それに国外追放となると国境付近の兵にあなたの情報を伝え、監視や場合によっては捕縛など、余計な手間が増えることになりますから」


あなたごときにそんな手間も金もつかっていられないのですよ、と冷淡な言葉が続いた。




……あのティアラとかいう王女、最初からこうなることを見越していたのだろうか。


だとしたらとんだ性悪だ。




「……なるほど。最後にひとついいですか?」


「あぁ? なんだぁ?」


「広間での話しではエゴも成長が可能だとききましたが、ここに来てその話が特にないと言うことは」


「ハっ! 察しがいいじゃねぇか。想像通りだよ小僧。エゴの成長は理論上可能ってだけで、過去にそれができたやつは1人もいねぇ!」



その言葉を聞いて僕は思った。

そこまでは想像していなかったなー、と。

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