チワワ

「兄貴、兄貴!」

『どうした』

「チワワ飼ったんですよ! このつぶらな瞳、激かわいいっす。ほら、見てください!」


 兄貴が視線を向けると、舎弟の腕の中で洋服を着たクリーム色のチワワがぷるぷる震えてこちらを見ていた。


兄貴『……(スッ)』

チワワ「(シュンッ)」


 兄貴が手を近づけると、震えてるのが嘘のように、俊敏な動作で手を躱すチワワ。


兄貴『……(シュバババババ)』

チワワ「(スサササササ)」


 半ば意地になって手を近づけてはかわされ、手を近づけては躱され続け、とうとうあきらめてしまった兄貴を見て、チワワはどやぁと得意げにしていた。


「兄貴、千手観音せんじゅかんのんのモノマネですか? さすがのポルチーニちゃんもドン引きっす」


 ポルチーニ。トリュフと松茸に並ぶ世界三大きのこであり、その名前はイタリア語のポルチーノ(子豚)が複数形になったものである。


 舎弟の腕の中でしっぽをブンブン振ってるチワワをよく見ると、リードをつけた首元のお肉がぽよんと寄っていて、お洋服から桃色のぽっこりお腹がでーんとはみ出ていた。


『(……チワワというより、ボンレスハムなんだが)』

「そういえば兄貴、猫なのにチワワ平気なんですね!」




————————————————————

『ねこぱーんち』

 ぺしっ

「あいたっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る