ホテルFuckin' Tokyo

芥子川(けしかわ)

第1話

ここは『ホテルFuckin' Tokyo』。

今日もFuckin'な客が全国から泊まりに来てる。

全身タトゥーやピアスだらけの客、訳アリな客、田舎から出て来たばかりの客…色々。


「はーいお待たせしました! 本日のお部屋ルームキーになります」


俺の名前は 佐藤悠太さとうゆうた23歳。

このホテルで働いて4年目になるボーイだ。


実は俺はこの仕事に誇りを持っている。

理由は2つあって1つはお客様を満足させる為に日々努力してる事。

もう1つは……。


「いらっしゃいませ〜」


そう言ってロビーでお客様をカウンターまで案内してるのは、今年大学生になったばかりの新人バイトの女の子、 小鳥遊杏奈たかなしあんなちゃん。

彼女はとても可愛い顔をしていてスタイルもいい。

セミロングの髪を結んでポニーテールにしてるのもイイ。

そんな彼女がこの仕事を気に入ってくれているのだ。

そして…なんと言ってもこの笑顔!

疲れ切った心と身体が癒される〜♪


……おっと話が逸れた。

2つ目の理由だが……それはこの部屋に泊まる人達にあるんだ。


例えばさっき入室したカップルの男性の方を見てみようか? 彼は40代後半くらいだろうか?


明らかに『薬物を試しに来ました』って風貌だが、他の客に迷惑かけない限り俺には一切関係ない。

逆に女性の方は20代前半に見える若い子だったりする。


まあ注射器は持ち帰ってくれると助かるけどね…ここは医療廃棄物の処理は扱ってないんだ。


しかし何度見ても思うんだけどさ、あの若さであんな原色バリバリな派手な格好するなんて凄いな〜。

俺なら恥ずかしくて絶対無理だよ。

……ん?ああ、ごめんね? 別に偏見があるわけじゃないよ?


えっと次は……あっ、またカップルかな? 今度は30前後の夫婦みたいだ。旦那さんはちょっと柄が悪い感じだけど奥さんの方は清楚系美人という感じだな。

……おっといけない、見惚れてる場合じゃなかった。


俺はフロントに行ってチェックインの手続きをしないといけないんだよな。

睨まれない程度の人間観察もまた醍醐味って事で…。


宿泊者の名前を確認しながらパソコンを操作していく。

すると……。


「おい、お前これ間違ってんじゃねえのか?」

「えっ!?︎」


いきなり後ろから声をかけられ振り向くとそこには……常連の近藤さんが不機嫌な顔をしていた。


近藤さんは常に拳銃を携帯してるヤクザのボディーガードだ。

でも見た目とは裏腹に人当たりと面倒見が良く、優しい人なので従業員からは慕われてる。

宿泊時は毎食後に地下のトレーニングジムで身体を鍛えていて、他の常連客と談笑しつつ汗を流してたりもしてる。


「どうしましたか?」


とりあえず事情を聞いてみる事にしよう。

もし何か問題があるなら対処しないとだしな。


「アメニティのサイズだよ。俺の身長に、この館内着は合わねぇよ」


そう言って近藤さんは自分の胸元を見せてきた。

……確かに言われてみるとサイズが違うようだ。


「申し訳ありません!すぐに交換いたします!」


俺は慌てて頭を下げた。

これは完全に俺の不注意だ。

お客様に対して失礼にも程があるだろう。


しかし……それにしても……近藤さん、いつもながらガタイデカいなぁ。




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