第79話 【国王様゛のお話】―7

 うぅぅぁうぅぅ、腹が痛いぃぃぃぃ。


 牢獄で出されるクソ不味い食事。このアザトーイ王国国王セバスチャン様に、臭った野菜など出しやがって、ただでは済まさんからな!



「もが《コラ》、ほふおがひへほがあへ《もっとうまいものだせ》」



 あのクソガキ、俺様に訥弁とつべん(上手く喋れない)の魔法なんぞ掛けやがりやがって!



「何言ってんだか、分かんねえよ! うぜぇから黙ってろ」



 あぎゃ!



 牢屋番のクソ衛士が槍の石突柄の下側で俺様を突いてくる。



「ほへ《クソ》、ひやろ《やめろ》!」



 うぐ、また腹が痛くなってきた。


 ぐわッ!


 衛士の突く石突が俺様の腹に刺さる。


「こ、コイツ、漏らしやがった!

臭えッ! テメェ終わってんぞゴラァァァ!」


 ク、クソ。この俺様が…………。





 牢獄に入って何日経ったか分からない。


 牢獄の中は排泄物の異臭が立ち込めているが、俺様はもうどうでもよくなってきた。


 不味い食事を食えば腹を壊すし、今や衛士が投げ入れる飯は、すぐに汚物にまみれて食えたものじゃない。


 畜生! あのクソガキとルミアーナのせいだ! 絶対に許さんぞ!


 そんな時だった。



「陛下! 助けに参りました」



 牢獄の廊下から聞こえる声。よく見れば見覚えのある顔だ。



「今から鍵を開けます」



 たしか、アホダインの部下だった男だ。


 俺様は弱った足腰で鉄格子まで歩くと、ちょうど男が鍵を開け終わった。


 まったく来るのが遅いぞあほアホダインめ!


 扉を潜り、文句の一つを男に言おうとした矢先に、ガチャりと首に何かをつけられた。



「陛下、喋ったり、暴れたりしないで下さい」


「………………」



 あれ!? 声が出ねぇぞ? なんだよ、この首輪は?



「とあるお方から、陛下が暴れるといけないとのご指示で、絶対服従の隷属輪を付けさせて頂きました」



 ふざけるなよ、テメェ! って、コイツをぶん殴ろうとしても体が動かねえ!



「陛下、裏庭の納屋にある隠し通路から脱出しますので、ついてきて下さい」



 チッ、まぁいいか。この便所みたいな牢獄から抜け出せるなら。


 クソガキ、テメェは絶対にぶっ殺す! それにルミアーナ、生きているのが辛くなるほどの辱めをさせてやるからな!



「陛下、行きますよ」


「………………」

 

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