第19話 何故に王女様とお風呂?

 分からん。ルミアーナ様の話を聞くのに何故一緒にお風呂に入っているんだ?


 いや、嬉しいよ。メチャメチャ興奮していると言っていい。


 湯船の隣に入るルミアーナ様は、バスタオルを巻いているとはいえ、シルフィよりもふくよかなバストがバスタオルの上からはみ出ている。


 見ないように意識すればする程に気になってしまう。


 チラッ


「トーマ様」

「は、はい!」


「真の国王である父は間もなく他界します」

「……お具合はかなり悪いのですか?」

「既に死去していてもおかしくはありません」


「……それ程に病気は悪化されているのですか?」

「いえ、寿命でしょうね。わたくしが産まれた時には六〇を過ぎていましたから」


 そうだった。リオンの記憶にあるように、アザトーイ国王は既に亡くなられている正妃様を愛し、王妃様が存命中は側室を持たなかった。しかし子供に恵まれぬまま正妃様は他界した。


 ルミアーナ様も、国王を名乗る義兄のセバスチャン王子も、その後に娶った二人の側室の子である。正妻は亡くなられてもなお正妃様となっている。


 そしてルミアーナ様のお母様も、セバスチャン王子のお母様も馬車の事故で既に他界している。


「父は余り良い国王では有りませんでしたわ。正妃様が存命の頃は良王と呼ばれていたそうですが、正妃様が亡くなられてからは国政に興味を持たなくなりました」


 少し悲しげに瞳を伏せるルミアーナ様。そして瞳を見開くと、


「内政も外政も私腹を肥やす大臣に任せたまま。私の母が亡くなり、五年前から床に伏せる辛い日々も分かりますが、義兄の暴挙を止めて頂きたかったですわ……」


 リオンの記憶でも、国が傾き始めたのは五年程前からだ。


「義兄が国王代理を名乗ってからは、内務大臣と結託して、内政に使う貴重な資金を趣味嗜好の贅沢品を買い漁り、義兄や大臣につく太鼓持ちの貴族を呼んでは、無駄な舞踏会を繰り返す日々。昨年、内務大臣が病に倒れ、そのポストにロックフェラー子爵が付いてくれましたので、国政も少し回復してきたのですが、あのクソバカアホのセバスチャンが子爵に告白して、振られた腹いせに更迭しやがりやがって……ですわ。オホホ」


 ん? 今のが素なのか? 義兄である国王代理様を心底嫌いなようだ。


「ロックフェラー子爵?」


「はい。とても美しい方で、領民思いの素敵な方ですわ」

「美しい方? 女性なんですか?」


「はい。まだ二十代ながら家督をついで、貧しかった子爵領を再建した手腕。わたくし達女性の英雄的なお方ですわ」


 色々と語ってくれたが、美少女との長風呂は色々な意味でヤバい。


「そろそろ、お風呂出ませんか?」


「いえ、本題はこれからでございますわ。オホホ」


 マジか!? 俺のおピンクの脳と下半身は限界突破寸前なんだが。


 そんな俺の気も知らんと、ルミアーナ様が湯船から出ると、バスタブの縁に座り白く長い足をクロスに組む。


 やめれ! その奥にある神秘に気持ちが奪われるやろ!


 





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