第二章

第十六話「二刀使いの結月」

 鋭く見つめあった二人が間合いを取り、互いの思考と次の動きを読みあう。

 数分にも数十分にも感じられたその心理戦は突如終わりをつげ、時が動いた──


「ふっ!」


 風を切りながら、小ぶりの刀が男に向かって鋭く突かれた。

 確実に肩に届いたと思われたが、寸でのところで男が交わす。

 すかさず女がもう一方の手に持っていた二本目の刀で脇めがけて切り込んだ。


 しかし、男がその攻撃を素早く刀で受け止め、一気にそのまま自分の身体を180度回転させ、勢いを殺す。

 攻撃が受け流されたことに加えて、わずかに引っ張られた女は体制を崩し、そのまま地面へと倒れこむ。


 すかさず落ちた刀を拾い、立ち上がろうとする女の喉元にはすでに男の刀の先があった。

 女な息をのんで、相手の顔色をうかがう。逆光の中で黒く長い髪が光る。表情は見えない──


「お見事です、結月様」


 男は言いながら、刀を鞘へと納めた。

 同時に結月が立ち上がる。


「負けました。ここまで歯が立たなかったのは初めてです、実桜さん」


「いえ、『二刀使いの結月』と評されるだけの実力でした。ありがとうございました」


「こちらこそありがとうございました」


 お互いにお辞儀をして礼を言う。


「どうでしたか、実桜。結月さんの実力は」


 屋根の下で見学をしていた凛がいう。


「剣技はかなりのものかと。これにイグをのせて実戦で来られたら、私も苦戦します」


「おや、実桜がそこまで言うとは珍しいですね。さすがですね、結月さん」


「いえ、実際に実桜さんと戦っていたら死んでいました。まだまだ修行が必要だと感じました」


 結月がそういうのも無理はなかった。

 結月が息を切らしているにも関わらず、実桜は息一つ切らせていない。

 実力差は歴然だった。


「実桜に頼んで正解でしたね。これだけの実力があれば、妖魔退治も大丈夫でしょう」


「え?」


 夕日が沈み、あたりが暗くなる。


「さあ、それでは、妖魔退治に出かけましょう!」


 凛は意気揚々と二人に告げた──

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