第7話 結成


 ダンジョンに入らなければ死ぬ。本当にそうなのか?


「なんて顔してんのよ。死ぬって言うけど、実際に死んだ人はいないわよ」

「うん?」


 なんだそりゃ?


「死ぬ前に、ダンジョンに入れば済む話よ。多分、一年くらいダンジョンに入らなければ死ぬんじゃない?」


 と、ここでパフェが来た。

 細長いスプーンでクリームを掬い、ぱくりと口にした。


「ん、甘い」


 葛篠はあまり表情が変わる方ではない事はここまでで知ったが、パフェを食べると少しだけ口角を上げた。甘味が好きなのか?


「なるほど、色々聞けて助かった」


 聞きたいことは聞けたので注文されたパフェを口に運ぶ。うむ、このパフェのクリーム、甘ったるくなくて食べやすいな。



「助けになれたのなら良かったわ……ところで、頼みがあるんだけど?」


 色々、聞いたからな。その対価として、手を貸すくらいはするが。一体なにを頼む気だ?


「なんだ頼みって」

「私たち二人、パーティ組まない?」


 ……随分と、唐突だな。


「いきなり過ぎないか。そもそも俺と葛篠は、ほとんど会話したことも無かっただろ?」

「そんなことないわよ。幼稚園、一緒だったでしょ。ほら、幼馴染的な?」


 覚えてねぇーよ、んな昔のこと。


「つか、小中は別だったろ」

「なんでかしらね? 私の家とそんな離れてないのに」


 そりゃ、学区が違うからだな。


「冗談は置いといて。現実的な話、私も貴方も他にパーティ組んでくれる人いないわよ」

「なんでだよ?」

「ほら、共通のこの症状。多分、私たちは二日に一回はダンジョンに入らないと、不調をきたすと思うの」

「ああ、ずっとダンジョンに入らなければ死ぬって話の延長線か」


 なんの前兆もなく死ぬのなら、既に死人が出てるだろうしな。徐々に不具合が出てくるのだろう。


「何でも、体に貯めておける魔力がどうこうって話らしいけど。専門的な分野だから聞きかじっただけじゃ、何がなんだかサッパリね」

「ダンジョン研究か。あれも分からんことだらけだしな」


 そーいや、進路も考えないといかんな。ダンジョン研究か。こんな状況だ。それもアリかもな。


「ま、返事は急かさないわ。多分、今日ダンジョンに入らなければ、明日の午後あたりには体調に変化が出るはずよ。その時に返事をちょうだい」


 話は終わり、あとは二人で黙々とパフェを食べ解散した。




 そして、翌日の昼休み――


「ぉお、ヤバい……想像の三倍ヤバかった」


 リビングデッドが如く、保健室へ呻き声を上げながら向かう。


 ノックして保健室へ入る。

 ベッドで横になるようにと言われ、カーテンをめくると、そこには先客が。


「どーも、不景気な顔してるわね」

「ああ、最悪な気分だ。これダンジョンに入るまで、この状態が続くのか?」

「いいえ、どんどん悪くなっていくのよ」


 よし、決めた。


「葛篠さんや、パーティ組もうぜ」

「よろしく、カズキ。あと葛篠じゃなくて、シズクって呼んで」


 パーティを組む仲だ。形から入るのも大切か。


「オーケー、シズク。じゃ、つーわけなんで、俺たち早退します」


 カーテン越しに保健室の先生へ告げる。


「まあ、その体調なら仕方ない」


 と、あっさり許可が降りたので早退することに。


「どこのダンジョンに入る?」

「それなら、うちに来て。パパが浅い所は探索したし、私でも問題無しのお墨付き」


 まあ、この体調で遠出は出来ねえ。家からも近いからそうするか。

 さっさと、教室へ戻って荷物を回収。

 二人揃って、帰宅した。

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