第59話 裁判と、かっぱ巻きと、俺達の捜査はこれからだ

 9月19日、裁判が始まった。

 起訴状が読み上げられ、俺は全否定した。


 それから証拠について色々と説明が行われ、主尋問や反対尋問などが行われた。

 捏造の証拠映像が出た時は、傍聴人がどよめいた。


 帰ってからテレビをつける。


 『冤罪か?』とテロップが出る。


「捏造の証拠が出て来たわけですが、どう思います?」

「隠し撮りは証拠として認められません。しかし、心象は悪いでしょう」

「無罪になりますか?」

「覚せい剤の使用と所持に関しては、かなり難しいと言わざるを得ません。医療行為についてはやってない証拠がないの一点張りです」

「別人がやった可能性があると主張しているわけですが」

「確かに証拠がありません。供述調書は精神的に不安定だったと言ってますし、採用されるかどうか」

「容疑者にはストレスの病気で通院歴があるのも分かってます。この辺はどうお考えで」

「精神鑑定がなされるでしょう」


 俺は後日、精神鑑定した。

 何を言っても頷く状態で精神鑑定を受けた。

 結果は異常が認められるだった。

 催眠状態みたいな物だから、正常とは言えない。


 ライトの光にも反応しなかったらしい。

 医者がどういう状況か首を傾げたとか。

 血液も採られたが薬物などでない。

 魔法だからな。


 さあ、今日はお祝いだ。

 極上寿司を食うぞ。

 家のキュウリを才華が良く行く寿司店に持ち込んだ。

 これでかっぱ巻きを作ってくれと言ったら嫌な顔もせずにやってくれた。

 かっぱ巻き以外は最高のネタで握ってくれと注文しておいた。


 才華と寿司を食う。

 まずはかっぱ巻きからだ。

 キュウリの柔らかさと甘さが違う。

 調和を壊しているのかも知れないが、キュウリとしては美味い。

 自信を持って言える。


 トロを食おう。

 おう口の中でとろける。

 油が少しもしつこくない。

 甘みもあるし、しつこくなくて、さっぱりしている感じさえある。


 白身もイカも玉子もおいしゅうございました。


Side:刑事


 くそう、どうしてこうなった。

 傍聴席で俺は震えた。

 捏造の証拠映像だと。

 才華が隠しカメラを仕掛けやがったに違いない。

 俺は署内を探したが痕跡はなかった。

 部外者が署に入れば分かるはずだ。

 それがないという事は、隠しカメラを仕掛けたのは警察官か。


 そして、それだけじゃなかった。

 精神鑑定で異常が認められた。

 これでは有罪にできようはずもない。

 だから言ったんだ。

 魔力の事が分からないうちは手を出すべきじゃないってな。


「先輩、顔が怖いですよ」

「怖いのは生まれつきだ。こんな裁判は茶番だ」

「ですよね。僕もそう思います。謎が一つも解けてないのに、これはおかしいです」


「畑山に会いに行くぞ」

「不味いんじゃないですか」

「捜査から外されたし、構わんだろ」

「しょうがないですね。付き合いますよ」


 畑山に会いに行った。

 会って早々に俺は切り出した。


「おい、本当の事を言え」

「医療行為は悪かったと思ってますよ。でも、やってもいない覚せい剤なんて物を持ち出されたら、本気になるしかない。こんなの茶番ですよ」

「そうか」

「やった事だけだったら、罪をつぐなっても良いとさえ思ってたよ」

「警察が間違ったんだな。地球滅亡の件はどうなった?」

「10年掛けるとなんとかなるそうです」


「それは良かった。最後に聞きたい。不思議な力の源は何だ?」

「魔法だよ。信じないかもしれないけど」


 くそう、この事件は謎が一つも解けなかった。

 結局、畑山は利用されていたのかもな。

 黒幕はやはり才華か。

 だが、捏造の証拠を撮影したカメラさえ見つからない。

 その犯人もな。


 才華は何枚も上手だ。

 証拠を残す事がない。


「先輩、完全に負けですね」

「負けじゃねぇ。捜査に負けがあってたまるか。証拠集めが俺らの仕事だ。まだ終わってねぇ。諦めるまで終わりはないんだよ」

「そうは言っても手掛かりゼロでは、どこから手を付けていいか」

「現場100遍だ。家電の量販店の防犯カメラの映像を再チェックするぞ。それが済んだら、神社だ」

「はいはい、とことん付き合いますよ」


 何年掛かっても、手掛かりをつかんでやる。

 たとえ起訴出来なくてもだ。

 それが刑事ってもんだ。

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