第3話これが妹って・・・

「お姉様」

鈴を転がすような愛らしい声で廊下を早足で歩いていたユーリアシェを呼び止めたのは宝石姫こと、リーシェだ。

金髪の巻き毛を揺らしユーリアシェの腕に抱きついてきた。薄ピンクのゆったりしたフリルのドレスが彼女の可憐さを引き立てている。


見たものを幸せにすると言われる笑顔を見てもユーリアシェの心には波紋一つ起きない。

「何かしら?」

無表情で訊ねると少し怯んだ様子で上目遣いにユーリアシェを伺う。

「あ、あの最近全然お会いできなかったから、お茶会にお誘いしようと‥」最後は消え入りそうになりながら伝える。

それを聞きユーリアシェは呆れて妹を見た。

今のユーリアシェの服装はシンプルな紺のワンピースに頑丈な茶のブーツを履いて外套を羽織っている。どう見ても外出する格好だ。


「残念だけど今からハルシュ地方に視察に行かないといけないの。お茶会はまた今度にしてもらえるかしら」


ハルシュ地方が先日の大雨で土砂崩れがあり街道が塞がれたと王城に伝えられたのは夜も更けた頃だった。早急に復興しなければ往来が困難になり西からの交易にも支障が出ていると報告された。 

国王はユーリアシェを呼び、ハルシュの事を伝えてこの件を一任すると命じた。


夜半に言われたのに次の日に出発しろって、あんたは鬼か!と飛鳥ユーリアシェは心の中で叫んだが、言えるわけもなく「かしこまりました」と微笑んで答えるしかなかった。

だがユーリアシェの記憶には何度かこんな理不尽な経験があったので、急いで騎士団長に今回の事を伝えて護衛騎士を頼み、侍女長に付いてきてくれる侍女を選んでもらった。

急いで準備し、護衛騎士との打ち合わせが終わって出発する頃には昼前になり、妹とのお茶会などユーリアシェができるはずもない。


「お忙しいのにごめんなさい」


あからさまに落ち込んでるが、ユーリアシェは慰めることはせず絡み付いた腕をゆっくりと外した。リーシェの侍女達に睨まれたが、相手にはせずに「ではね」と淡々と返した。

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