60話 共闘

 ティータイムを楽しんでいた私達の前に、魔獣が現れた。

 アリシアさんが一人で立ち向かおうとしている。


「な、何を言っているの!? アリシアさんを一人残して行けるわけないでしょう!」


「その通りですね。レディを犠牲にするわけにはいきません」


 私とオスカーは抗議した。


「しかし、わたしが足止めをしないと皆さんが危ないのです。お願いします。わたしのことなら心配いりません。ですので、二人はできるだけ遠くへ行ってください」


 アリシアさんは覚悟を決めた表情をしている。

 この子は絶対に引かないつもりだ。


「わかったわ……。でも、それなら私も一緒に戦うわよ」


「いいえ! イザベラ様は戦ってはいけません! わたしなんかのために命を懸けるような真似をしてほしくありません!」


「そんなこと言わないでちょうだい。私にもアリシアさんを守らせてよ」


「ダメです!」


 私とアリシアさんのやり取りを見て、オスカーが口を開く。


「では、こうしましょう。アリシア殿は光魔法でサポートをお願いできますか? 私は氷魔法で奴を攻撃します。私達が魔獣を弱らせたら、イザベラ殿がとどめを刺すのです。これならば、三人共無事に済む可能性があります」


 さすがはオスカーだ。

 瞬時に最善の方法を考え出した。


「……わかりました。それで構いません」


 アリシアさんも納得してくれたようだ。

 彼女が光魔法の詠唱を始める。


「聖なる光よ。我らに加護を与えたまえ。【セイントガード】!!」


 アリシアさんがそう唱えると、私達はそれぞれ光の膜のようなものに包まれた。

 これで私達の防御力は上がったはずだ。


「凍てつく冷気よ。我が敵を貫く槍となれ。【アイスランス】!!」


 続いてオスカーが氷魔法を放った。

 氷柱のような鋭い氷が一直線に飛んでいく。

 見事に命中し、魔獣の巨体がぐらりと揺れる。

 だが……。


「グアアァアッ!!」


 魔獣は怯むことなく、猛然とこちらへ向かってきた。


「なっ……!? 私の魔法を受けて無傷だと!? なんて頑丈な奴なんだ!」


 驚くオスカー。

 魔獣はさらに速度を上げて迫ってくる。

 狙いは私みたいだ。


「イザベラ殿! 下がってください! 【アイスウォール】!!」


 オスカーは素早く魔法を発動させた。

 私の前に氷壁が現れる。

 壁の向こう側で激しい衝突音が響いた。

 どうやら魔獣の攻撃を防いでくれたらしい。


「ありがとうございます、オスカー様!」


「いえ、礼を言うのはまだ早いですよ。奴はまだまだ元気いっぱいですからね」


 オスカーがそう言う。

 確かに、まだまだ戦闘は始まったばかりだ。

 気を引き締める必要がある。

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