流星との本当のお別れ

目が覚めたら、流星はいなかった。


リビングに向かった。


「おはよう、シャワー浴びてこい」そう言ってペットボトルを投げてきた。


俺は、水を飲みながら風呂場にきた。


懐かしいな、ここ。


シャワーを浴びてリビングにやってきた。


「はい、これ」


出されたのは、煮物だった。


「いただきます。」食べた瞬間に口の中に広がったのは俺の味だった。


「月、お別れだな。」


言われると思ったよ。


「ここにきたら、必ず食べてるんだ。煮物」


そう言った流星が、向かいに座る。


「愛してるのに傍にいれない」


なんで、ハモってんだよ。


こんな悲しい言葉せりふ


「やっぱり、月も同じ事思ってたんだな。」


「流星を愛してるけど、俺は流星の幸せを願えない。」


そう言ったら、涙がでてきた。


「俺も同じだ。月の幸せを願えない」


そう言って流星も泣いてる。


「流星を胃袋におさめてしまいたいと思う。俺の体の中にしまっておきたくなる。誰にもさわれない場所に置いておきたくなる。こんな自分が怖くて怖くてたまらない。沸き上がる衝動をコントロールできなくて、気づくと流星を傷つけている。」


涙が煮物におちてく。


「わかるよ。俺も月を体の一部にしたいと思ってる。誰にもれて欲しくないしれられたくない。止めたくても止められない。俺も、ここに化け物を飼ってる。」


そう言って胸をつかんでる。


流星は、コーヒーをいれてもどってきた。


コーヒーを渡された。


「服、買ったやつ。着て帰ってくれよ。」


「いつ、買ったの?」


「25歳の月に渡すはずだったやつ。」


「はいるかな?」


「サイズかわってないだろ?」


「そっか、着てくよ。」


そう言って笑った。


「あと、これつけてて欲しい」


渡されたのはペンダントだった。


「これ」そう言って流星は、自分がつけてるのを見せた。


「ペアって事?」


「うん。繋げるとさ」


月の形になった。月の中に星が刻まれてる。


「月を、一生愛してる。オーダーメイドで作った。プラチナだから、はずさないでいれる。俺のきもち


「流星も、はずさないのか?」


「仕事上無理だから、でもすぐにつける。毎日必ず」


「わかった。」


そう言うと流星は、ネックレスをつけてくれた。


「ありがとう、大切にするよ。」


そう言った俺を流星は、抱き締めた。


「俺が、月を幸せにしたかった。彼みたいに、優しくしてあげたかった。」


「流星、俺だっておなじだよ。」


「こんな愛情を持ちたくなかった。月に優しくしてあげたかった。」


流星の涙が俺の肩を濡らす。


「俺も、流星を幸せにしたかったよ。ごめん。こんな愛し方になってしまって。兄弟に産まれてきてしまって。」


流星は、俺から離れて座った。


「俺もごめん。月をこんなに愛してしまって…。兄弟なのに、愛してしまって。」


流星の涙が、コーヒーカップにおちてく。


「俺は月を化け物にしたくない。苦しんで欲しくない。悲しんで欲しくない。もう、これ以上傷つけたくもない。だから、傍にいれない。こんなに愛してるけど、一緒にはいれない。だから、俺は月を解放するよ。」


そう言って、流星は泣いてる。


「俺も流星の心が化け物にかわっていくのは見たくない。泣かないで欲しいし、辛い顔もしないで欲しい。愛してるから、一緒にはいれない。流星は、もう俺に縛られなくていい。」


こんなにも、愛しているのに一緒にいれないなんて


最初から、こんな愛の結末をたどることがわかっていたら


俺は、流星を求めただろうか?


わかっていても、求めたのだと思う。


それは、決められた事だったんだ。


この家に産まれた時から、決まっていた事だったんだ。


流星と兄弟じゃなく出会って愛し合いたかった。


優しくて、穏やかな愛を与えてあげたかった。


「流星、今まで幸せだったよ。ありがとう。」


「俺も、幸せだったよ。」


そう言って笑った。


「ごちそうさま」皿を下げてると流星が服を持ってきた。


着替える俺を抱き締めた。


「次、会うときは兄弟だ。」


そう言って離れた。


俺は、服を着替えた。


「次、会うときにこの服持ってきてくれない?」


「ああ」


「理由がないと会わないだろうから」


俺は、流星に服を渡した。


「送るか、タクシー呼ぶか?」


「駅近いから、歩くよ。」


「わかった。」


すぐにでも、出ないとまた飲み込まれてしまいそうだった。


飼い慣らした化け物に食べられてしまいそうだった。


玄関までくると、流星は俺にキスをした。


長い長いお別れのキスをした。


「さよなら、流星」


「さよなら、月」


扉を閉めた瞬間、流星の泣き声がした。


俺は、振り返らずに泣きながら歩く。


愛してたよ、流星


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