必要ないだろ
しつこいぐらいに追いかけられるから、もう話すしかなくなってしまった。
俺は、近くのベンチに流星兄さんと座って星は少し離れた向かいのベンチに座ってる。
「なに、追いかけてきて」
「月が、壊れるって聞いたから」
「へー。同情してきたんだ。」
「違う。」
冷たい言葉や酷い言葉しか、今は浮かばないから話したくなかった。
「だったら、何?そっちは、幸せなのに俺に構う理由なんてないよな」
「あるよ、月を愛してるから」
胸を貫く痛み、さっさと帰ればいいのに…。
「あの日、言った言葉を冗談だなんて思わずにちゃんと受け止めてあげればよかった。」
「もう、ガキはいらなかったんじゃなかったのかよ。あんたさ、嘘つきだよね。俺の事、ずっと期待させて。あんな事までして…。いい加減、あんたの愛に縛られて生きていきたくないわ」
どうやったら、いなくなんのかな?もっと、傷つけたら帰ってくれんのかな?
「ちゃんとしていたよ。妊娠は避けたかったから…。でも、彼女の方が上手だった。酔っ払った俺に無理やりしたり、穴を開けたりしていた。だから、妊娠してしまった。結婚してるから、拒めなかった。」
「めんどくさ。俺、長々とあんたのしょうもない言い訳聞くためにこんな寒い中いたくないんだけど。」
「あんたって言わないでくれよ。流星って呼んでくれよ。俺を突き放したいのか?」
そう言って、俺を見つめてくる。
「だからさ、もういいからそういうの。俺には、あんたはもう必要ないし、あんたに俺も必要ない。年に一回、正月ぐらいはあの家に顔だすようにするからさ」
これで、やっと帰れる。
そう思ったのに、流星兄さんは俺を抱き締めてきた。
「やめろよ、離せよ」
俺は、頑張って離れた。
バチン…初めて流星兄さんの頬を叩いた。
最低って言った女の人の気持ちがわかった気がした。
流星兄さんは、また抱き締めてきた。
「離せよ」
「離したくない」
もう、めんどくさかった。
俺は、星とこの町を離れる約束をしたから…。
年一会いに行けば充分だろ?
そう思って、もう流星兄さんのやりたいようにさせるつもりだった。
流星兄さんは、抵抗しなくなった俺のおでこにおでこをくっつけた。
「この半年、メッセージだけでも月と繋がれて幸せだった。」
胸が締め付けられる。
「俺が、月を愛してる気持ちはかわってないよ。」
だから、何なんだろうか?
「俺には、月の愛が必要な事ぐらいわかるだろ?星さんと幸せになってもらっていい。そんな関係になっても構わない。でも、必要ないとか言って俺を拒絶しないで欲しい。」
流星兄さんを叩いた手が、ジンジン痛い。
負けないぐらい、胸が痛い。
流星兄さんは、どこまでも俺を縛る。
「月がいないと、家族に愛を与えれない。」
もう、いい加減。
俺を解放してくれよ。
この痛みから、苦しみから解放してくれよ。
歩けなくなる程の重い鎖をはずしてくれよ。
俺の目から涙が流れてくるのを感じた。
冷えた頬に注がれていく暖かい涙。
限界通り越して、潰れそうだ。
そう思った瞬間、流星兄さんは俺にキスをしてきた。
俺は、抵抗するけど…。
酒がはいってるから、うまく力をいれられない。
やめてくれよ。
手を掴まれてるから、うまく力がだせない。
離して欲しいのに、動けない。
唇を離してくれた、よかった。
そう思ったのに、手を離してくれなくてベンチから立ち上がれなくて、またキスをされた。
何なんだよ。
今まで以上にだされてる流星兄さんの力に思うように身動きがとれない。
心臓が、ギュウギュウ締め付けられて苦しくて痛くて離れたくて離して欲しくて…。
俺の目からは、どんどん涙が
本当に、何なんだよ。
もう、やめてくれよ。
これ以上、苦しめないでくれよ。
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