みたくない。

病院のロビーに入った瞬間に、流星兄さんの奥さんが大きなお腹をしてる気がしたけど…。


よく見えなかった。


ICUについた時、氷雨君が大きなお腹の女の人と母親と話してるのが見えてひかるが行ってしまった。


俺は、急いで追いかけた。


突然、腕を誰かに掴まれた。


「あの、月さんですよね」


「はい」


「星さんは?」


「離してもらえませんか、今は追いかけたいので」


「傷ついてますよね?」


「わざとですよね?」


俺は、そう言ってしまった。


足早に、星を追いかけた。


流星兄さんと奥さんと子供が目にはいった。


やっぱりお腹が大きい、涙が流れてきた。


星がぶつかってきた。


俺を引っ張るけど、わざと俺は兄さんの方に進んだ。


視界にいれないように必死で通りすぎて、駅前まで走った。


星を忘れてた。俺が待ってると息を切らしてやってきた。


俺は、星に声をかけて家に帰ってきた。


ブー、ブーずっとスマホが鳴る。


「電源切るわ」着信が、30件。


全部、流星兄さんだった。俺は、電源を切った。


星も電源を切っていた。


「30件も鳴ってた」


「同じ」


そう言って二人でスマホをテーブルに投げた。


「栞にお願いして休みもらうから、とりあえず旅行、行かないか?」


「どこに行く?」


「どこでもいい。ここから離れられたら」


「そうだね」


「逃げたい。」


「僕もだよ。」


胸が押し潰されるように痛くて、苦しい。


あの日、冗談なんて言わなければよかった。


「苦しいだけの愛もあるんだね。」


星がワインを飲みながら言う。


「そうだな。」


「氷雨君が、子供抱いてるのみたくないよ。」


「俺も同じだよ。」


そう言った俺の手を星が握る。


「もう、僕達もそうなったらいいんじゃない?」


「そしたら、苦しくなくなるかな?」


「わからないけど、もう忘れてしまいたい。」


「俺も、もういらないよ。」


そう言うと、涙が流れてくる。


ここからいなくなってくれないね」


「うん。ずっといる」


星は、俺の涙を手で拭ってくれる。


俺も、星の涙を手で拭う。


「今日は、とことん飲もう」


「ああ」


ワインを飲み干した、グラスにまたワインを注ぐ。


ピンポーン


「誰かきたよ。」


「見てみる」


二人でドアスコープを交互に覗く。


言葉にしなくても、来た人はわかる。


電源を切ったからだ。


無視して、星と飲む。


「何の用かな?」


「二人いたよ」


「本当に、ウザいね」


ピンポーンって何度も鳴ってる。


「どこに引っ越す?家バレてるから」


「そうだな。とりあえず、太陽町たいようまちが広いからあっち行く?」


「そっちなら、会う事ない。」


俺と星は、家の酒を全部飲み干してしまった。


「まら、のめる」


「俺も」


「コンビニ買いに行く?」


「星の家は?」


「最近は、お前さんちばかりでウォッカとシャンパンだけしかないりょ」


「ハハハ、じゃあコンビニだなぁ」


俺と星は、立ち上がって家を出た。


部屋を出る。もう誰もいなかった。


鍵を閉めて、下に降りた。


二人で、腕を絡めて歩く。


「お前さんは、僕を好きであるか?」


「大好きだーよ。ひかるを愛してりゅです」


「ハハハ、るいちゅ。僕とそりょそりょあたらすいせきゃいにいくりょ」


「からだの関係かにゃ」


「こるだけ酔ってたりゃもーわかりゃにゃいでありやす」


「なんじゃそりゃ、ハハハ」


俺と星は、フラフラしながら近所のコンビニに入ってビールとワインを買って、またフラフラ歩いた。


家の近くに来たら、星が、


「チュー」って俺に言ってくるから、唇を重ねた。


何時かは、わからなかったけど…


人通りは、まばらだった。


おかしくなって俺と星は、チュッチュッしまくった。


「ハハハ、では。まいるぞ」


星は、俺の手を引っ張る。


「危ないから」


フラってなった俺のお酒を持ってる手を誰かが掴んだ。


顔をあげた、流星兄さんだった。


星は、氷雨君に手を掴まれてる。


「飲みすぎだ、月。」


「離せよ。」


パリン、ワインが落ちた。


酔いがいっきにひいた。


星も氷雨君を振りほどいて、俺の手を引いて元来た道を引き返す。


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