第2章 レッドゾーンを超えて (霧宮ナツハ編) 後編
あれから数日が経ち、空いている時間には練習をただただ繰り返えしていた。
今日も音楽室で練習するはずだったのだが……
六郭星学園 音楽室
霧宮ナツハ
「ああ、莉緒くん……。」
真瀬莉緒
「…………?……どうかしましたか?」
霧宮ナツハ
「実は…………。」
僕は霧宮さんの話を聞く。すると思いのほか重たい話だった。
真瀬莉緒
「撮影が大量に入った?」
霧宮ナツハ
「ええ……しかも1、2本とかじゃなくて何十本も……仕事のオファーとは言え、これは学業に弊害が出るわ……。」
真瀬莉緒
「断ることは出来ないんですか?」
霧宮ナツハ
「断った結果がこれ……嫌って言ったら何十本も増やされたのよ……。」
真瀬莉緒
「そんな……。」
霧宮ナツハ
「ひとまずやるしかないわね……。」
真瀬莉緒
「大丈夫ですか……?」
霧宮ナツハ
「わからない……けれどやるしかないわ……。申し訳ないけれど、しばらくは練習出来ないかもしれないわ……。」
真瀬莉緒
「そうですか……。わかりました。大変なときは連絡してくださいね。」
霧宮ナツハ
「そう言ってくれるとありがたいわ。……よろしく。」
真瀬莉緒
「はい。」
結局その日は解散することになり、僕は食堂へと向かった。
六郭星学園 食堂
食堂に行くと、そこには学園内でモテることで有名な不知火カイル(しらぬい かいる)さんがいた。
女子生徒A
「不知火さん!これを受け取ってください!」
不知火カイル
「ありがとう。大切にするよ。」
モテる男はすごいな……
すると後ろから人とぶつかってしまう。
??
「ああ、ごめんなさい!すみません…………。」
後ろを振り向くとそこにいたのは内野タスク(うちの たすく)くんだ。
内野タスク
「邪魔ですよね…………。失礼します。」
真瀬莉緒
「こちらこそすみません……。」
そう言うと内野くんは一番端っこの席へと座った。
僕も座ろうとすると隣にふんわりとした女子が座る。よく見ると名雲メイ(なぐも めい)さんだった。
名雲メイ
「あ、失礼しますね。」
真瀬莉緒
「はい。どうぞ。」
そう声をかけられると、さらに名雲さんから話しかけられた。
名雲メイ
「頑張っているらしいですね。霧宮さんとの練習。」
真瀬莉緒
「ええ……まぁ……。」
名雲メイ
「頑張ってくださいね。応援しています。」
真瀬莉緒
「はい。ありがとうございます。」
僕は照れながら、そう言うと僕はカレーライスを食べて、部屋に戻った。
六郭星学園寮 莉緒・ノクアの部屋
風亥ノクア
「ああ、おかえり。今日はどうだった?」
真瀬莉緒
「風亥さん……実は……。」
僕は霧宮さんが大量に仕事が入ってきて、練習が出来ないことを話した。
事情を聞いた風亥さんは驚いた様子を見せた。
風亥ノクア
「それは大変だ。ナツハのやつ……辛いだろうな。」
真瀬莉緒
「はい……僕にはどうもすることも出来ないので……」
風亥ノクア
「そうだろうね……。」
真瀬莉緒
「ただ……とても心配ではあります。」
風亥ノクア
「うん。そうだよね……。ちなみに見学はできるの?」
真瀬莉緒
「見学ですか……そういえば聞いてなかったですね。」
風亥ノクア
「少しだけでも一緒にいてくれたらナツハのやつも少しは楽になるんじゃないかな?」
真瀬莉緒
「……そうかもしれませんね。明日はまだ仕事ではないみたいですから見学できるか聞いてみます。」
風亥ノクア
「ああ、よろしくね。ナツハのことを……。」
真瀬莉緒
「はい……わかりました。」
翌日……
僕は見学ができないかを霧宮さんに話してみた。
霧宮ナツハ
「ちょうどいいタイミングね。できればついてきて欲しかったのよ。」
真瀬莉緒
「……!それじゃあ決まりですね!」
霧宮ナツハ
「ええ、よろしく。お願いね。」
真瀬莉緒
「はい!」
霧宮ナツハ
「ふふ……ありがとう。」
こうして僕は霧宮さんの撮影について行くことにした。
撮影現場
撮影が始まる。霧宮さんのマネージャーさんは僕を歓迎してくれた。
マネージャー
「いやあ……いつもありがとうね。特に今日は何十本も撮影があるからね。」
真瀬莉緒
「はい……でも……どうしてこんなに仕事を……?」
僕は不思議に思ったことをマネージャーさんに話した。
マネージャー
「ああ……あのチーフマネージャーだよ。「霧宮ナツハは稼がないといけないんだ」って言ってね……。」
真瀬莉緒
「あの人ですか……。」
マネージャー
「チーフマネージャーは正直なところあまり好きではないんだ。僕もナツハも。」
真瀬莉緒
「そうなんですね……。マネージャーさんも苦労をされているんですね。」
マネージャー
「……まあね……。」
そんなこんなで霧宮さんの撮影が終わる。終わるや否やすぐに次の撮影現場に向かう。僕もそこへ向かう。それを1日で繰り返すこと……12回。
霧宮ナツハ
「ハア……ハア……。」
マネージャー
「大丈夫かナツハ?無理しないでくれ……。」
霧宮ナツハ
「大丈夫です……これくらい……。」
マネージャー
「そうか……でもその様子じゃあ…………とりあえず今日の撮影は終わりだから、ゆっくり休んで!」
霧宮ナツハ
「はい……ありがとうございます。」
僕たちはマネージャーさんが運転する車に乗り、六郭星学園寮まで戻ることになった。
僕が車の後ろ座席に座ると隣に霧宮さんも座る。
車が動くや否や、霧宮さんは不安をもらしていた。
霧宮ナツハ
「疲れた……明日も撮影…………。」
霧宮さんはそう言うと疲れたのか、僕の肩に頭を乗せて静かに眠りについた。
真瀬莉緒
「霧宮さん……。」
僕はそのままにしておこうと思った。
霧宮ナツハ
「莉緒…………くん…………。」
霧宮さんは寝言なのかどうかわからない言葉を呟いていた。
霧宮ナツハ
「今日は……ありがとう…………。」
真瀬莉緒
「霧宮さん…………。」
どうもいたしまして。けれど……無茶はしないでほしい。僕はそう思った。
翌日…………
霧宮さんは再び撮影に取り掛かる。
しかし、霧宮さんの様子は少しおかしかった。
何も運動をしていないのに汗をかいている。昨日の疲労がまだ回復できていなかったのだろう。
カメラマン
「霧宮さん……大丈夫?なんか少し様子が変だよ。」
カメラマンさんもさすがに気づいた。
しかし、霧宮さんは大丈夫の一点張りだった。
霧宮ナツハ
「大丈夫です…………。撮影お願いいたします。」
カメラマン
「……わかりました。」
カメラマンさんは心配しながらも撮影を行う。
霧宮さんはきっとチーフマネージャーのことを考えているんだろう。ここで、やめればさらに仕事を増やしていくんだろう。そう思っている。僕もそう思っているからどうすればいいのかわからない。
真瀬莉緒
「霧宮さん…………。」
撮影はさらに続き、移動も何回も繰り返してひたすらと撮影に取り掛かる。
何度か撮影をしているうちにカメラマンさんが首を傾げ、マネージャーさんに話しかけてくる。
カメラマン
「…………マネージャーさん。霧宮さんのスケジュール帳見せてください。」
マネージャー
「あ、はい…………。」
マネージャーさんから借りたスケジュール帳をカメラマンさんはじっくりと見る。スケジュール帳をしばらく見ているとカメラマンさんはマネージャーさんに怒鳴った。
カメラマン
「なんですかこのスケジュールは!!彼女の体調が悪くなるのも当然ですよ!!」
マネージャー
「はい……申し訳ありません!」
マネージャーさんも理解していたのか、カメラマンさんに何度も何度も頭を下げた。
カメラマン
「このスケジュール……考えたのはチーフマネージャーさんでしょ!」
マネージャー
「は……はい……。」
カメラマン
「チーフマネージャーさんはどこですか!今すぐこのスケジュールを変更してください!!」
チーフマネージャー
「ここにいるけど何か?」
気がつくと後ろにはチーフマネージャーがいた。
チーフマネージャーは悪びれることもなく堂々としていた。
カメラマン
「なんてスケジュールを組んだんですか!!今すぐこのスケジュールを変えてください!彼女……倒れますよ!」
カメラマンさんは霧宮さんのことを心配してくれている。しばらくするとチーフマネージャーは口を開く。
チーフマネージャー
「はぁ……何言ってんの?ナツハには稼いでもらわないといけないの。たとえ倒れてでもその顔撮りゃ良いでしょ。」
カメラマン
「な……!人をなんだと思っている!」
チーフマネージャー
「はあ……うるさいな。これでもくらっておけ。」
バチ……バチ……!
カメラマン
「ぐあああ!」
真瀬莉緒
「カメラマンさん!」
カメラマンさんはチーフマネージャーからスタンガンをくらって倒れた。
慌てて僕とマネージャーさんはカメラマンさんに駆け寄る。
マネージャー
「井上さん!大丈夫ですか!」
井上……おそらくカメラマンさんの名前だろう。
チーフマネージャー
「なんだ、君もいたのか。ちょうどいい。」
バチ……バチ……!
僕にスタンガンが襲い掛かる。その時……。
??
「危ない!!」
僕は何者かに押されて、強く頭を打ち、意識が遠のいていく…………。
マネージャー
「莉緒くん!!」
霧宮ナツハ
「莉緒くん!!」
チーフマネージャー
「さあ、こっちへ来い!!次の仕事だ!」
霧宮ナツハ
「い、いやぁ!!」
その声で僕は完全に意識を失った。
目が覚めると……僕は草原にいた。
風亥ノクア
「目が覚めたか……大丈夫かい?」
そこにいたのは風亥さんだった。
真瀬莉緒
「風亥さん……。どうしてここに……?」
風亥ノクア
「ナツハのマネージャーさんが教えてくれたんだ。チーフマネージャーがここの草原に莉緒くんを投げ捨てたって……。」
投げ捨てた……?しかもここで……?
ギギ……ガガ…………。
ぐっ……頭が……!耳鳴りが……!
風亥ノクア
「大丈夫かい!?」
真瀬莉緒
「はぁ……はぁ……大丈夫です。今落ち着きました。」
風亥ノクア
「そ、そうか……なら良いけれど……。」
真瀬莉緒
「それよりも霧宮さんは……!?」
風亥ノクア
「ナツハか……ナツハはおそらく次の現場にいると思う。柿本先生も呼んだからそこへ送ってもらおう。」
真瀬莉緒
「助かります。ありがとうございます。」
僕と風亥さんは柿本先生の車に乗り、霧宮さんの撮影現場に行った。
霧宮ナツハの撮影現場
撮影現場が慌ただしい。外には救急車が止まっていた。
マネージャー
「ああ、莉緒くん!無事だったんだね!」
真瀬莉緒
「マネージャーさん!霧宮さんに一体何が!?」
マネージャー
「ああ、ナツハが倒れた……。救急車で搬送される。」
真瀬莉緒
「そんな…………!?」
マネージャー
「あのチーフマネージャー……倒れた顔もカメラマンさんに撮影させようとしたんだ。もちろんカメラマンさんは撮らなかったんだけど…………。」
真瀬莉緒
「……………………。」
マネージャー
「後のことは僕に任せて、今日はゆっくり休みなさい。」
真瀬莉緒
「……はい。」
六郭星学園寮 莉緒・ノクアの部屋
部屋についた。僕たちは疲れ果てた。……が、
部屋に戻るやいなや、部屋に姉さんが入ってきた。
真瀬志奈
「莉緒……ナツハのことだけど……。」
姉さんがナツハのことで……?何かわからないが、話を聞いてみた。
真瀬志奈
「ナツハが何かあったときにこれを聞いてって……。」
そう言って差し出してきたのはCDだった。
僕は渡されるとすかさずCDプレーヤーにCDを入れて曲をかける……
霧宮さんのCDは僕らの練習をしていた曲だった。
霧宮さん……陰でもっと努力していたんだ……。
風亥ノクア
「莉緒くん。負けられないね。」
真瀬莉緒
「はい。頑張ります!」
僕は渡された曲をもとに更なる高みへと向かっていく……。
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