第1章 青空の下で (柊木アイ編) 後編

そして、翌日……



六郭星学園 Eクラス教室


お昼休みの時間になった。私は柊木さんのところに向かおうとしたが、柊木さんの席の周りに月川さんと夜坂さんがいた。


月川タクト

「アイ!せっかくだからお昼一緒に食べようぜ!」


柊木アイ

「あー……ごめん!今日はちょっと真瀬さんとお昼を食べるんだ!」


夜坂ケント

「真瀬さんと?なんでだ?」


柊木アイ

「ちょっと課題のことで色々と話さないとなって。あと他にもスキンシップも兼ねてね。」


月川タクト

「アイは真面目だな!まあ良いよ。行ってきな!」


柊木アイ

「うん。……あ、真瀬さん!こっちおいでよ!」


真瀬志奈

「はい!……せっかくなので屋上で食べませんか?課題のことなら落ち着いた場所でお話しましょう!」


柊木アイ

「屋上?……うん、いいよ。行こうか!」


私たちは月川さんと夜坂さんに見送られながら屋上に向かった。



六郭星学園 屋上



柊木アイ

「へぇーここが屋上か……。」


真瀬志奈

「広いですね……!」


六郭星学園の屋上はかなりの広さだった。しかも今日は快晴で景色も良い眺めだった。


真瀬志奈

「それじゃあ、ブルーシート敷きますか。」


私たちはブルーシートを敷き、お弁当を置きお互いに自分が作ったお弁当を開けた。


真瀬志奈

「わあ……!すごいです!」


柊木さんのお弁当はとてもカラフルだった。パプリカやニンジンのオレンジ色を中心に卵焼きやブロッコリーなど、色彩よく入っている。


真瀬志奈

「美味しそうですね!柊木さんのお弁当!」


柊木アイ

「ありがとう!僕特製のオレンジ色弁当!僕はオレンジ色が好きだからオレンジを中心のお弁当にしたんだ。僕の好きな色も知って欲しかったし!」


真瀬志奈

「はい!オレンジ色がお好きな様子がお弁当から凄く出ています!」


柊木アイ

「真瀬さんのもとても美味しそうだね!……ん?これは……?」


真瀬志奈

「あっこれはピザですね。サンドイッチじゃ物足りないかもと思い購買部のピザを用意しました。」


柊木アイ

「ピザ……?何それ……?」


その時、私は唖然とした。ピザを知らない……?


真瀬志奈

「柊木さん……ピザを知らないんですか!?」


柊木アイ

「うん……いつもメイドさんたちが作るものを食べていたからね。料理を作る時もメイドさんたちにレクチャーしてもらいながらだから……。」


メイドさんもいるんだ……私はすごい人とペアになったんだと、改めて実感してしまう……。


柊木アイ

「まあ……まずはサンドイッチを食べよう!」


真瀬志奈

「あっはい。そうですね。私もニンジンをいただきます!」


私たちはそれぞれ作ったお弁当を交換して食べた。柊木さんのお弁当は見た目通りとても美味しく、柊木さんも私のサンドイッチを美味しそうにたべていた。


柊木アイ

「うん!とても美味しい!」


真瀬志奈

「ふふ……ありがとうございます!せっかくなのでピザも食べてみてはどうですか?」


柊木アイ

「ピザか……どんなのだろう?食べてみたいな!」


真瀬志奈

「それじゃあ、はい。これどうぞ。」


柊木さんはピザを手に取り、一口食べる。


柊木アイ

「おお……!美味しい!これがピザか……!美味しい……!とても美味しいよ!なんで今まで食べてこなかったんだろう!」


真瀬志奈

「ふふ……良かったです。美味しく食べてもらえて……。」


柊木アイ

「ありがとう!真瀬さん!サンドイッチも美味しかったし、とても満足だよ!」


真瀬志奈

「こちらこそ美味しかったです。ありがとうございます!」


私たちはお弁当を食べ終えた後、ブルーシートの上で横になってたわいもない話をしながら、青空を見上げた。


柊木アイ

「ああ……こんな感じなんだね。」


真瀬志奈

「こんな感じって……?」


柊木アイ

「実は僕、お父さんを早くに亡くして母親1人で育ったんだ。過保護なのかお母さんにこうして青空の下で、横になって同級生と話すのしたことなかったんだよね。」


真瀬志奈

「そうだったんですね……お父様を……。」


柊木アイ

「でもお母さんの言うことは絶対って思っているんだ。僕はお母さんのことを好きだから。」


真瀬志奈

「それはとても良いと思います!親子で仲良くっていうのは大切ですからね。」


柊木アイ

「うん。ありがとう。それじゃあそろそろ授業始まるから教室に戻ろうか。」


真瀬志奈

「そうですね。戻りましょう。」


私たちは午後の授業が始まるので教室に戻ることにした。


午後の授業を終えた後、私たちはまた音楽室でベースの練習を行うことにした。



六郭星学園 音楽室



柊木アイ

「失礼します……。」


??

「あら?どうしたの?」


今日は先生がいた。見たことない先生だった。


真瀬志奈

「はい……。少し音楽のことで練習をしようと……先生ですか……?」


笛花奏

「ああ、ごめんなさい。私は笛花奏(ふえばな かえで)。Kクラスの担任やっているからよろしくね。」


真瀬志奈

「Kクラス?ということは莉緒の担任なんですか?」


笛花奏

「そうよ。もしかして、双子のお姉さん?真瀬くんに似ているからそうなのかなって。」


真瀬志奈

「はい。真瀬志奈です。莉緒がお世話になっております。」


笛花奏

「そう。よろしくね!私は音楽の担当だから、何かあればいつでも言ってね。色々と教えてあげるわよ!」


真瀬志奈

「ありがとうございます。では、早速なんですけど、柊木さんにベースを教えて欲しいんですけど……。」


柊木アイ

「はい。もし良ければ教えてください。」


笛花奏

「ベースねえ……少し弾いてみてくれる?」


柊木アイ

「はい……。」


柊木さんは先生に言われるがままにベースを弾いた。昨日よりも格段に腕が上がっている。飲み込みがものすごい早い。


笛花奏

「柊木さんすごい弾けているじゃない。いつから始めたの?」


柊木アイ

「実は……昨日なんです。真瀬さんに色々と教えてもらったんです。」


笛花奏

「すごいわね……もっと練習すればかなりの腕前になるわよ。」


柊木アイ

「あ……ありがとうございます!」


古金ミカ

「うんまた腕が上がっているよ。」


真瀬志奈

「えっ!?」


柊木アイ

「わっミカ!?」


そこにはハンバーガーを食べながら棒読みで褒めてくれた古金さんがいた。


柊木アイ

「ミカ何しにきたんだよ!」


古金ミカ

「いいじゃないベースの音が聞こえてきたんだから聞いたっていいじゃない!」


柊木さんと古金さんのやりとりを見ながら、笛花先生は呆れた顔をしていた。


笛花奏

「古金さん!ここでは飲食は禁止って言ったでしょう!」


古金ミカ

「げっ!?先生もいたの!?逃げないと!」


笛花奏

「こら!待ちなさい!」


笛花先生は古金さんを追いかけて行った。


柊木アイ

「はあ……ミカのペースに合わせるのは本当に苦労するよ……。」


柊木さんはため息をつく……確かに神出鬼没ではある。悪い人ではないのはわかるけど……


柊木アイ

「まあいいや。先生はいないけど、邪魔する人がいなくなったから先生来るまで練習しようよ。」


真瀬志奈

「そうですね。じゃあここから弾いてみましょう。」


柊木アイ

「はい。レクチャーお願いします。」


こうして私たちは先生が戻るまで練習を続けた。


笛花奏

「ふう……ごめんなさいね。練習はどうかしら?」


笛花先生が戻ってきた。


真瀬志奈

「はい。順調です。ですが、そろそろ部屋に戻ろうと思います。」


柊木アイ

「先生ありがとうございました。また音楽室で練習をさせていただきます。」


笛花奏

「ええ、いつでもいいわよ。頑張ってね!」


柊木アイ

「ありがとうございます。」


私たちは笛花先生にお礼を言ってそれぞれの寮の部屋に戻ることにした。



六郭星学園 寮 志奈・ミカの部屋



古金ミカ

「お!おかえり!待っていたよ。」


真瀬志奈

「古金さん……お疲れ様。あの後どうだった?」


古金ミカ

「もちろん怒られたよ……。まあいいんだけどね〜!」


真瀬志奈

「そう……それならよかった。」


古金ミカ

「で、ベースで何してるの?もしかして作曲?」


真瀬志奈

「まあ、そうなるのかな?」


古金ミカ

「作曲か〜ということは課題は作曲を披露するの?」


真瀬志奈

「いえ、課題は料理を披露することにしてるから作曲はまた別の所で披露するの。」


古金ミカ

「あ、そうなの?……せっかくなら作曲にしたら?今日、掲示板に貼ってあったけど、課題発表は6月から来年の3月になったらしいわよ。」


真瀬志奈

「えっ!?そうなの?」


古金ミカ

「そうだよ〜。……ねぇ、曲調とかはできているの?」


真瀬志奈

「曲調……?」


曲調か……まだできていないけどあの声優さんならこんな風に……かつ柊木さんの技術力を考えるとこんな曲調かなと私の中で考えているものはある。


真瀬志奈

「一応、柊木さんに聞かせようと考えているものはあるけど……」


古金ミカ

「本当?ならちょっとだけ聞かせて!」


真瀬志奈

「えっ?今から……?」


古金ミカ

「いいじゃん、こう見えて私もベース弾けるから。」


真瀬志奈

「……それなら聞いた後にアドバイスをお願いできますか?それでいいのなら構わないけど?」


古金ミカ

「ええ、いいわよ。聞かせて。」


真瀬志奈

「わかった……じゃあ……。」


私は古金さんに考えている曲調を演奏した。



弾き終えた後、古金さんはにこやかな表情で聞いていた。そのあと、拍手をいただいた。


古金ミカ

「いい曲だね〜。お姉さん聞き惚れちゃったよ〜!」


真瀬志奈

「あ、ありがとう……。」


古金ミカ

「これならアイも練習したら弾けるし、あの声優さんにもピッタリな曲調だよ!」


真瀬志奈

「本当に?ありがとう。」


純粋に褒められた。明日これを柊木さんに聞かせてみよう。


古金ミカ

「ところで〜アイは自分の母親のことはどう思っているのか聞いてる?」


真瀬志奈

「そうね……良い親子関係だと思う。柊木さんはとてもお母さまのことを尊敬していると思うし、私もとても良いことだとは感じてる。」


古金ミカ

「そうか〜。よっぽど尊敬しているんだね〜。」


古金さんは満面の笑みでそう言った。


真瀬志奈

「はい。柊木さんはとても自慢げに話していました。」





古金ミカ

「それを壊すことできないの?」


真瀬志奈

「えっ……?」


今までの表情とは違い真剣な眼差しで私に訴えかけてきた。


古金ミカ

「そうか……知らないのね。アイの親について……。」


真瀬志奈

「親……?お父さまのことですか?」


古金ミカ

「違うわ……。アイの母親がやっていること。それをアイは知らない。」


真瀬志奈

「柊木さんのお母さまがやっていること……?」


古金ミカ

「ええ……真瀬さん、パートナーだよね。可能なら、アイに母親がやっている本当のことを知って欲しいの。」


真瀬志奈

「私が……?」


古金ミカ

「お願い……します。このままアイのことを放ってはおけないの。」


真瀬志奈

「…………わかりました。」


古金ミカ

「…………よろしい!ではでは早速と言いたいところではありますが〜?もうこんな時間です!また今度お話させていただきます!」


真剣な表情から元の陽気な表情に戻った。あんな表情を初めて見たので少し驚いた。


真瀬志奈

「……はい。また今度よろしくお願いします。」


真剣な表情に圧倒され私はそう言うしか出来なかった。


古金ミカ

「よし。私は購買に行って来ます!ではでは!」


そう言って古金さんは購買に出かけた。


柊木さんのお母さまか……。そう考えながら私は携帯を見た。


真瀬志奈

「まだいいかな……。充電はあるし……。」


そうして私はそのまま、寝床についた……。

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