第17話

「はい、クロノさん」

「あ、ありがとうございます」

 お茶を入れにキッチンに行ったケイさんが、お盆に湯飲みを2つ載せて戻ってくる。

 そしてテーブルの上にお盆を置き、湯飲みをクロノの目の前に置くと、自分もテーブルに着く。

「あの、ケイさん」

「はい、何ですか?」

「今日は何の用でしょうか?」

 用件はたぶん学園長室でのことだろうと思うが、念のために用件を聞くことにする。

 返ってきた言葉は先程と同じく「学園は、楽しいですか?」という質問。

 そう聞いてくる顔は笑顔だった。だがクロノはどことなく威圧感を感じていた。


 結局、俺はケイさんの威圧に負け、教室と廊下で起こったことを告げた。

「そうですか……そんなことが

話してくれて、ありがとうございます」

 そういうと、ケイさんは湯飲みを持ち、茶をすすった。

 そして一気に飲み干すと、静かにテーブルに湯飲みを置いた。

「話してくれてありがとうございます」

 それだけを言い残し、ケイさんは扉まで歩をすすめると「失礼いたしました」と頭を下げ、出て行ってしまう。

 ケイさんが出て行ってしまったことで部屋には俺だけが部屋に取り残される形となった。

 とはいっても、もともとこの部屋にいるのは俺だけなのだから当たり前といえば当たり前なのだが。

 テーブルをみると、湯飲みが2つ。片方はケイさんが茶を飲み干して中身は空の物。もう片方は中に茶が入っており、いまだに湯気が残っている物。よく見ると茶柱が立っている。

 俺はその茶を息を吹きかけ温度調節をしながら少しずつ飲んだ。

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