第2話 知らない少女
高校入学から2ヶ月が経過して早くも6月になっていた。
しとしと降る雨のなか傘をさして独りで帰宅する
小柄な体格で背中を丸めてとぼとぼ歩く姿からは悲壮感が漂っていた。
それもそのはず。
―――昼下がりの国語の授業の時間―――
それに気づいて
しかし、その日に限って教師から音読を任命されてしまう。
教科書のページが破られているなんて言えるわけもない。
教師は催促しても黙って立ち尽くす
これが今日の
「はー…」
大きくため息をつく
何故あの連中は毎日毎日飽きもせずに自分を虐めてくるのだろう。
こちらが辛い表情をしていても虐めの手を緩めることはなく、むしろその表情を楽しんでいるのだ。
「鬼畜だよアイツら…」
呟きながらとぼとぼ歩いていると大きな声でバカ笑いする集団がチラリと
3人の男たちが大声で話しながら大通りの歩道を我が物顔でこちらに闊歩してくる。
金髪にピアスやタトゥーと暴力的な雰囲気をバンバンに醸し出している男たち。
「うわ…」
こういう連中に絡まれては堪らないので目を合わせないように傘で顔を隠した。
ゲラゲラと品のない笑い声が段々と近づいてくる。
10歩、9歩・・もうあと数歩ですれ違う
と思われた。
だが目の前でその声は突然止まった。
「おいボウズ。ちょっと金貸してくれや」
「えっ…」
怖い男たちは
「あっあの、ボクお金持ってないです」
「あん?」
とりあえずお金を持ってないと言ってはみたが、それが返って男たちを逆上させた。
男たちは
「早く来いよクソチー牛ボウズ」
誰の目もない路地。
犯罪をするにはうってつけの場所だ。
「アハハ!このボウズ足が子鹿みたいに震えだしたぞ」
「おい!早く財布出せや。金があるかないか確認してやるからよ」
「ウソだったらぶっ殺すからな」
男たちは乱暴に財布を取り上げると中身を確認し始めた。
「千円札しか入ってねぇじゃねえか。クソ貧乏チー牛がよ」
男は文句を言いながら千円札を抜き取ると次に学生証も抜き取り写真と名前をマジマジと見出した。
「名前は
「ウハハ!名前だけ立派だな!チー牛の
男たちは名前を見ると勝手に
そして
「オレはさ…テメーみたいな顔のヤツが大嫌いなんだよ。とりあえずウソだったから殴らせろ」
男はすごい形相で
「や、やめてください!!お金は渡しますから」
恐怖のあまりに泣いて懇願する
しかし男はそんなことお構いなしに
―――その瞬間。
『辞めろ!!!』
路地に女子の声が響きわたった。
男も突然のことに手が止まり間一髪で
だが事態はこれで収集したわけではなさそうだ。
女子の声がした方向には1人の女の子が男たちを睨んで立っていた。
控えめな胸に胸元の大きく空いた丈の長い朱色のワンピースを着て一重の上着を羽織った大昔の中国の宮女のようにも見える服装。
そして現代にそぐわない風貌の女の子の登場にこの場の誰もが困惑していると女の子はポツリと一言呟いた。
『やっと…見つけた。父上の
女の子は不敵な笑みを浮かべてたしかにそう言ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます