閑話 サチからの手紙 2回目

 定期連絡の手紙が来た。見るの怖い。いや、さすがに毎度毎度トラブルはないだろう。最初は移動など日常と違うから巻き込まれただけで。ね。生活が落ち着いたらそうそうトラブルなど起こるまい。


 私はそう願って手紙を開けた。


『今月の報告書です。先に先月の報告書での不備をお知らせいたします』


 先月の報告書の不備? 書き方が雑だったからな。もしかしたらもっとましな報告だったのかもしれないな。私は期待をしながら読み進めた。


『実は、様々な思惑と権利がからむため、前回の報告書では追記として「追記 私について報告です。寮には二週間しか滞在許可が下りませんでした。学園の方針です。レイシア様の紹介で、日中は最近メイド喫茶と呼ばれ始めた黒猫甘味堂で働くことになりました」としか書けませんでしたが、聡明な領主様ならお気づきになったことでしょう。何かあると』


 気づかなかったぞ! 気づけるか! 読みたくない……。


『では、報告いたします』


 いらん! 読みたくない。


『まず、報告しなければいけないことは、レイシア様はオズワルト・オヤマー様と月に一度お食事をすることとなりました』


 オヤマーの義父とか? 大丈夫なのか?


『初めてのお食事で意気投合したのか、オズワルド様はレイシア様と合同プロジェクトを立ち上げました。レイシア様のアルバイト先の喫茶店[黒猫甘味堂]の移転並びに運用システムの構築ですね。なんだかんだで私も働くこととなり、レイシア様のお手伝いをすることになりました』


 レイシアの補助をするのがサチの仕事ではあるが……。何をしているんだ?


『この度、移転に関して、新しい特許が成立致しました。1つは店長。1つはレイシア様の権利となりました』


 特許だぁ? なにをやっているんだレイシア。引っ越しだろう!


『他にも王都の商会を巻き込んだり、様々ありましたが、無事バイト先はメイド喫茶として開店することが出来ました』


 だからどうしてそうなった! メイド喫茶って何⁉


『この度、オズワルド様とレイシア様より情報の開示と報告の許可を頂けましたので、こうして報告いたします』


 分からん! 書くなら詳しく書いてくれ!


『その他に関しましては、いたって普通の日常になります。レイシア様は学園に通い、私は日中バイトをしています。レイシア様が授業で王子を瞬殺したり、暴れ馬を止めたり、新しい魔法の使い方を見つけたりと、いたってよくある日常を過ごしております』


 なにそれ! いたってよくある日常じゃないぞ! 王子を瞬殺? 暴れ馬? 新しい魔法? どこがよくある日常だよ⁉


『レイシア様も、周りの者も、みんな元気です。ご安心を。 サチ』






 よく分からんぞ、サチ。とりあえず、お茶でも飲んで落ち着こうか。

 これが毎月来るのか。

 私は、ため息をつきながら、お茶の準備をメイドに頼んだ。


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