130話 闇魔法
闇魔法って何だろう?
光魔法ライトを使いながらラノベを読んでいたレイシアは思い悩んでいた。
火は出せる。
水も出せる。
風は吹く。
光は出せた。
あとは土と闇。
土は分からないけど地面にあるから多分何とかなる。
じゃあ、闇は?
ラノベにも闇魔法に関する記述は見つからない。
◇
その日は、月食の日。王都のような都会では空を見上げることも少ない。
だから、月食でも気がつくものは少なく、気がついたからどうという事もない。
あまり、夜空に興味がないのだ。
そして誰も知らない。
月食の夜は闇の力がとんでもなく上がることを……。
◇
レイシアは本を読み終わり、明日の準備のためメイド服をカバンに詰めた。
「さっき読んだ本に出て来た『マジックバック』このかばんがそうなったらいいのに」
ひとりごとをつぶやいたその時、カバンの中に『底』がなくなった。
「なにこれ!」
手を出し入れするレイシア。いくらでも物が入りそうな底なしのバッグ。
「もしかして、これがマジックバッグ?」
とりあえず消えてしまったメイド服を取り出さなくては。レイシアが手を入れて探るが、メイド服はどこまでも奥に行ってしまったのか見つからない。
「どうしよう。メイド服が……。出てきて!」
そう願った時、メイド服が手元に現れた。そのまま引き上げると無事に出すことが出来た。
「なにか良く分からないけど、とにかくこのかばんはマジックバッグになったのね、きっと」
レイシアは手あたり次第物を出し入れしてみた。ペン、ノート、イス、机、寝具、ベッド……。どんなに大きなものも、近づけて願えば、すぅっと入っていったし、出すことができた。しかも持ってもカバンの重さしか感じられない。
「小説の中では時間が止まるらしいけど、これはどうかな?」
レイシアは、カップに水を水魔法で入れると、火魔法でお湯にした。
「これをバッグに入れてしまえば。明日出した時の温度でわかるわ」
◇
闇魔法は、空間と時間を無にする魔法。効果は絶大だが術者の魔力が切れるとすぐに消える。しかも、月食など、あるべき光が無くなるときにしか発動することができない。
月食という「時」と、ラノベと言う異世界の「知識」、1/46656という省エネタイプの術を扱う「人」。絶えず魔力が引き出されるが、膨大の魔力量を誇るレイシアにとっては、引き出される魔力など、自然回復量の半分にも満たなかった。
つまり、レイシアですら再現が限りなく不可能な魔法。それが「マジックバッグ」の魔法。レイシアは、たまたまタイミングが合ってしまい、マジックバッグを手に入れることができた。
◇
翌日、カップを出したら、お湯はまったく冷めていなかった。
レイシアはカバンをイリアとカンナに見せたが、彼女らが触るときは普通のカバンだった。
そうして、レイシアは『マジックバッグ』を手に入れたが、原理が分からないので発表は出来ないし、売り物にもできないなと思った。
しかし、ラノベの魔道具を手に入れたレイシアは、さらにパワーアップしてしまうのだった。
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