返済計画

 お祖父様はそう言うと、大きく息を吸ってレイシアに告げた。


「まずは、先程の教会での事だがな、あんな不思議な状況は、未だかつて見たことも聞いたこともない。ギルド長も同じ意見だったよ」

「そう……ですか」


「普通の手順はな、申請書と白紙の用紙を置いて水晶に手をかざす。ここまではやった通りだ」

「はい」


「神父が祈りを捧げた後、申請者が申請書を読み上げ台座に戻す。やがて、数分から数十分間経つと白紙だった紙に文字が浮かび上がってくるんだ。大体は申請不可。通ったものにはランクが付けられている」

「紙に書いてあるのですか?」


「そうだ。それを元にして契約料の額や、使用料のパーセンテージをギルド側と交渉していくのだ。だから、本当はもっとあっさりしているのだよ」

「それだけ?」


「そうだ。今回の契約の儀はイレギュラーだ。おそらく何百年振りかのな」

「何百年振り…………」


「ああ。……神が降臨したのだからな。今思うと、どれが特許に値してどのレベルが順当かは、神が決めていたのだな」


 レイシアは息をのんだ。あの神聖な世界は神様の世界? そう思うと体が震え出した。

 お祖父様は、そんなレイシアに確認した。


「ところで、儂とギルド長は神様から、『この件は、然るべき時期が来るまで他言無用とせよ。悟られるな。感づかれるな』と頭の中に直接話しかけられた。お前はどうだ? 何か言われてはおらぬか」

「私も同じ言葉を聞きました。私だけではなかったのですね」


「そうか、他には何かあるか?」

「いいえ、頭の中で響いた言葉はそれだけです」


「そうか。ならいい。今日あったことは3人の秘密だ。よいな」

「はい。……それにしても、神様とは一体……」


「分からん。いや、教会もギルドも我々も、便利な道具くらいにしか考えてなかったのかもしれん。慣れというものは怖いな。それはそうと、特許の契約についてだが、お金の受け取り方はどうする?」


 お金の受け取り方。具体的にお金が入るイメージがなかったレイシアは、首をかしげるしかなかった。


「はあ?」


「うむ、まだ学園にも入ってはおらんし、ギルドに登録という訳にもいかんな」

「どのくらいの金額になるのでしょうか」


「それは動き出さなければ分からない。結果次第だからな。しかし、オヤマーで支援するから、かなりの金額にはなるだろう。うまくいけば数年でターナー領の借金が半分になるかもしれんな」

「借金が減るんですか」


「減りはしない。返済に充てることが出来るということだ」

「すごいです! それでしたら借金がなくなるまで返済にあててください」


「いいのか、それで?」

「はい」


「わかった。なにか必要な時はいいなさい。いつでも渡してやろう」

「ありがとうございます」


「では決まりだ。明日も教会へ行く。今日の事は黙っているように。何かあったら儂に頼れ。いいな」

「はい。よろしくお願いします。お祖父様」


 そして、レイシアは部屋に戻った。



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