『お兄ちゃんのためならパンツもあげるよ』って絶対あげないからね!現実の妹を見てよ!お兄ちゃん
常陸之介寛浩★他サイト読者賞・金賞W受賞
第1話 プロローグ
「お兄ちゃん、キモ~い、この二次元美少女達、全部捨てて良いよね」
「おわっ、引っ越し午後じゃなかったのか?」
中学校を卒業したばかりの妹の碧純が、久々に会った兄の基氏の部屋に引っ越してきて第一声は、その残酷すぎる一言だった。
オタクや収集家にとって、その言葉は、どれだけ残酷な言葉だろうか?一番言われたくない言葉のはずだ。
共感はしてくれなくても良い。ただ、理解は示して欲しい。
少なくとも尊重はして欲しい。
どんな気持ち悪い趣味だろうと。
二次元キャラや、特撮物、SF物に、電車や車、はたまた虫の標本や、は虫類のペット、どこの国かの呪いがかかっていそうな人形でも。
久々に会った兄と感動の再会の挨拶をする前に、目にしてしまった光景は碧純にとって衝撃的すぎて、捨てたい、目の前から消したい、信じたくない、今、目の前の物は自分を驚かすためのドッキリの小道具なのでは?と、思ってしまうほどだった。
碧純は人の趣味に理解を示せるほど"まだ大人"ではなかった。
兄、基氏の部屋にあった物は壁一面、二次元美少女ポスター・二次元美少女タペストリー・ベッドの上にはベッドの主が寝るところはあるのか?と言う、5体の痛い二次元美少女抱き枕、シーツまで二次元美少女、デスクのパソコン三台には壁紙が二次元美少女、マウスパッドはおっぱいに手首を置く二次元巨乳美少女、棚には二次元美少女フィギュアが軽く50体が綺麗にディスプレーされており、兄が着ているTシャツにも二次元美少女が微笑んでいた。
しかも、みんなあと少しで大事なところが見えてしまいそうなほどに、布面積の少ない服と言うより布で隠していると言って良い何かを身にまとっている。
髪の色など絶対ウィッグじゃないとあり得ないだろうと言うカラフルな美少女達。
足下を見れば丁寧にスリッパまで・・・・・・。
『二次元美少女』を何度言うのかわからないほどの数で満たされていた、その部屋を見た妹の碧純は極度の嫌悪感から頭を抱え頭痛がし、吐き気まで感じるほど。
「バカ、これは仕事の資料なんだよ。碧純の為に開けてある部屋は何にもないんだから良いだろ、二次元女神様達心の中の彼女を捨てるなんて、たとえ碧純だろうと許さん」
「はぁ?ちょっと何言ってるかわかんないんだけどってか、お兄ちゃん?仕事ってなに?大学は?」
大学へ行っているはずの兄の言葉に、驚きを隠せないでいると、兄・基氏は胸を張りながら一体の30センチほどのトロフィーを見せ、
「俺、ライトノベルで稼いでいるから」
そう言いながらトロフィーを妹に差し出した後、五冊の華やかな可愛い女性が表紙のライトノベルを見せていた。
やはりそれも美少女・・・・・・露出高めの。
トロフィーには小説家になっちゃおうWEB小説大賞・大賞と書かれており、そこに書かれていたタイトル、『妹のためならなんでもしたいお兄ちゃん 著・茨城基氏』が3巻と、『お兄ちゃんのためならパンツもあげるよ 著・茨城基氏』が2巻
2シリーズ5冊、帯には『コンテスト大賞作品』『緊急大重版』『WEBで話題の!』とまで書かれているライトノベルを誇らしげに見せる基氏。
ペンネームを見れば兄であることをほぼ確信する碧純は、戸惑いの顔を見せた後、嗚咽が漏れるほど涙を見せ、
「お兄ちゃん、なんでそんなんになったのよーーーーーーこんなお兄ちゃんじゃなかったじゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん帰ってきてよ、お兄ちゃん」
手の付けられないほど泣いていた。
足はローキックを静かに何発も兄の脹脛に命中している。
引っ越し業者のお兄さんはスマートフォンを取り出し、警察に通報しようか迷っているくらいだ。
あとから荷物を持ってきた先輩のベテラン社員は、そのお兄さんに向かって静かに首を横に振り通報の必要はないことを表していた。
「碧純、お兄ちゃんは目覚めたのだよ。二次元の嫁の素晴らしさに」
「キモいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
極限の叫びはまるで、風呂に泳ぐゴキブリを見た時の女性のように大声で、碧純は奇声に近い叫びを声をあげた。
きっとアパート全体に聞こえていただろう。その悲鳴は。
後から大家さんに『新種の生物をペットにしだしたんじゃないか?』と確認されるほどだった。妹が引っ越してきただけだったのに。
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