世界の十字路1~日常の崩壊と覚醒~

時雨青葉

プロローグ

始まりの呼び声



 ――――おいで……





 暗闇の中、小さな声が言った。



 本当に、本当に小さな声だ。

 壁か何かが遮っているのか、聞こえてくるその声はひどくくぐもっていた。

 そのせいで、さらに声は小さいように感じる。



 きっとこんな声では、多くの人の耳には届かないだろう。

 たとえ聞こえたとしても、気のせいで済まされてしまう。



 しかしみのるは、そんな聞き取るのも困難な、消え入るような微かな声を確かに聞いた。



 ――――こっちに……



 誰?

 どこに行けばいいの?



 そうは思っても、その問いには答えてもらえなかった。

 声は機械的に、一方的にこちらへ呼びかけてくるだけだ。



 ――――……おいで…………こっちに……



 分からない。

 どこへ行けばいいのか。

 何故自分のことを呼んでいるのか。



 そもそも、この声は本当に自分を呼んでいるのだろうか…?



 ――――こっちに……おいで……



 声は聞こえているのに、その言葉の意図がさっぱり分からないのは気持ち悪い。

 実が声に応えようとした瞬間―――





 ――――――だめだっ!!




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