宿題

 夏休みになると毎年出すテイクアウト商品がある。

 小学生の夏休み課題「昆虫採集」のお供「カブトムシの餌」である。

 店長が田舎暮らしが長かったかららしく、毎年小学生向けに販売される。

 この餌、ちょっとしたシロップなんだがそれはそれは効果が抜群。

 取れる方法がちょっと変わっているのがまた面白い。

 注意すべきは、足元だ。

 ここで当レストランの事を知っている人はこう思う。

「帰る家を忘れるんだろう」

「飛び方を忘れるから捕まえやすい」

 そうではない。

 このシロップを食べたカブトムシは、みなシロップの近くの地面に潜り込もうとするのだ。

 何を忘れたか、熱心な読者なら感づいただろう。


 自分が成虫である事を忘れたのだ。

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