第39話 復興と学園の卒業
ーー 復興するには、徹底的に壊れていた方が意外とやりやすい。
僕らは国王の前に控えていた。
「その方らにこの度の復興事業を下命したい。協力しないものや反対するものは国王の名を持って処断する、いか様にも好きに行え。」
というお言葉を賜り、またあの地方に向かうことになった。
またギルドから顔を出した。
ギルド内には多くの怪我人がいた。
「ギルドマスターに会いたい。」
と職員に声をあっけたが
「ギルマスは此処にいません。今は副ギルマスしか・・。」
と言う職員にそれなら副ギルマスでいいと言いながら名前を名乗る
「え!エストニア伯爵様ですか、国王様の命で来られた。はいすぐに呼んできます。」
と答えると職員は慌てて裏に向かった。
裏手で怪我人の手当てをしていたと思われる男が姿を現した、
「あんたが伯爵かい、それどこの忙しい中で俺に何か言いたいことがるのか?」
と喧嘩腰だった、多分一生懸命に対応しているんだろう。
貴族なんか当てにできないと思いながら。
「ああ僕たちは、国王の命でこの地域の復興に来た。してもらいたい事を重要度に合わせて直ぐに教えろ。」
と一括すると、男は慌てて職員に指示をし始め
「もし怪我人を治療する魔法師かポーションをお持ちでしたら、頂けませんか?」
と態度を改めて申し出た。
そこで僕はミリア嬢に指示するとともに裏に向かい、怪我人を1箇所に集めると広範囲の治療魔法を行使した。
大きな怪我をしていた重症者まで、怪我が巻き戻る様に治っていったのを目にした冒険者が、驚く様に僕に目を向け。
「あんたの魔法かい?凄いな。」
と感心していた、そこにポーションを持ってきた副ギルマスが
「怪我が、あの怪我をこの時間で・・ありがとうございます。」
と頭を下げた。
その後落ち着いた副ギルマスと別室で
「今までの状況を説明してください。」
と言うと副ギルマスは
「はい、エストニア伯爵様に報告します。当ギルドのギルマスは金を持ち逃げしました。
魔物の被害は何故か、領主邸がある地域に偏っております。
一番被害が大きと思われた、森近くの村については被害のない村が5つほどあり、いずれも男女に若い冒険者が・・・あなた達でしたか。」
と言うと、頭を下げて
「一つの村は私に出身地だったんですよ。本当にありがとうございました。」
と言うと報告を続けた。
報告によると、
・イーリッヒ侯爵の領主邸のある街の殆どが壊滅的な被害を受けている状況で、領主達の安否も未だ分からないと言う事だ。
・領内の田畑は魔物にぎみ荒らされて、収穫前の穀物の収量は絶望的
・被害を受けた村や街の建物も、新しく村や街を作る方が早そうだと言う事
であった。
『ここまで来るとダメ女神の仕業だね。力技で僕の近代化を広めたい様だ。
まあ国王に下命を受けたのでするけど、水脈や鉱物など使いやすくしておいてほしいな。』と独り言を呟くと。
どこからともなく
「その程度は任せて!」
と聞こえた気がした。
ーー 王国改革3
僕は俯瞰の魔法を十全に使いイーリッヒ侯爵地方の正確な地図と被害状況を、大きな紙に写していった。
そして先ず通すべき道を決めた。
その後は、田畑の場所に街の場所を決めると、メンバーに手分けして縄張りを命じた。
メンバーは生き残りの兵や領民を使い新しい街の線引きを行い、復興に全力で当たった。
食料などは僕が準備していた備蓄用の食料を提供する事で、安定した補給が可能になりそこまで混乱はなかった。
道を通しながら合わせて上下水道用の水管を地下に埋設する。
新しく作る街の外郭に土魔法で城壁を建てていく、最近は魔力が上がったのかかなりの魔法を行使できる様になった。
飲み水用の井戸は急に増えた水脈に掘り下げると十分な水量が確保できた。
農地にするための土地には回収して回った魔物をすき込み、魔力たっぷりの農地に変えていった。
いつの間にか流れ始めた川に橋をかけたり、山手に行くと岩塩や鉄鉱石の地層が剥き出しになっており、復興の手助けに大いに貢献した。
『誰かのご都合主義が垣間見えるな。』と思いながらも今回はありがたく使わせてもらった。
この地方の復興に僕らは3つの季節を使い、何とかやっていけそうな状態に復興した頃には、赤の季節が近づいて来ていた。
ーー 国王への報告と褒賞。
僕が代表で国王の前に控える、国王が謁見の間に現れる。
「此度の復興誠に大義であった。予想以上の復興に当たり、その方らに褒賞を与えようと思う。しかしその方らは既に領地持ちの身、そこで新しき領主の任命権を与えようと思う。」
と言うとそばに控える新たな宰相に顔を向ける。
「イーリッヒ侯爵地方の主だった領主10名が生死不明、5名が領民を捨てて逃避していることが判明している。
エストニア伯爵ら6人の者達で後継の領主を決めて報告願いたい。こちらでも検討の上判断をするつもりである。」
と許可証を15箇所分いただき下がるのであった。
ーー メンバー会議。
「君たちの親族の中または家臣で、領主を任せても良いものがいれば推薦をしてくれ。」
と15人分の推薦状を見せた。
「その前に一つ確認ですが、僕らの褒賞とは領主を決める権限だけですか?」
とマッケンジー君が質問する。
「後程という事だけど、僕とクロニアル君には伯爵と子爵任命権を、他の4人にはそれぞれ1階級位が上がるそうだ。」
と伝えた。
その後、僕らは10個の領地の推薦状をセガール公爵とサンドール侯爵に譲ると僕らはケンドール公爵を交えて人選を行った。
当然クロニアル君はサンドール侯爵と相談している。
ーー セガール公爵 side
「ここでわしにもこれを持ってくるか。」
公爵が側近に手紙を見せながら笑った。
「公爵様、誰を推薦致しますか?」
という側近に
「お前もその候補の1人だ。同じ様に力を合わせられるものを選び出せ、実力本位でな。」
と指示すると、娘を呼びつけて
「エストニア伯爵に嫁げと言ったらどうする?」
と聞いた。
「お父様申し訳ありませんが、私では負い切れません。近くにいるだけで圧倒されて・・人とも思えぬ時があり、嫁入りはご容赦を。」
と頭を下げた。
「そうか」
と言うと公爵は考え込んだ。
ーー 国王 side
セガール王国の国王は執務室で何事か考えていた。
そこに新たな宰相に就任したサンドール侯爵が姿を見せる。
「陛下、御用でしょうか?」
「ああ、あれからどうなった。」
と6人の様子を尋ねてきた。
「エストニア伯爵らは、推薦状を三等分にして私とセガール公爵に譲りました。それぞれの地域から領主を出させて競わせたい様です。ただ新たに作られた街は既に成功が保障されている様なもので、よほどのバカでなければ失敗はしないでしょう。だからこそ人選は苦慮しております。」
と答えたた。
「そうか、それでケンドールの方はどうか?」
の問いに
「あそこは人材が豊富です、エストニア伯爵が幼い頃からこの様なことを見据えていた様なほどの手を打っており、我が領地にもほしいほどです。問題ないでしょう。」
と答えた。
「セガール公爵はどうかの?」
「王弟であられるセガール公爵は、意外と苦慮しているかもしれません。人材は豊富でしょうが新しい制度や物を使う事に慣れていないと思いますので。」
と答えた。
国王はまた何事か考えていた。
ーー 新しい領主と領民。
3公(侯)と僕らの推薦した貴族が新たな領主として、旧イーリッヒ侯爵地方を治めることになった。
僕はそれぞれの領地について、
・どの様な街づくりをしたか
・同の様に農耕地を再生したか
・どの様に衛生管理したか
・どの様に商人や人を集めたか
のノウハウを説明しながら、可能な限り継続するよう求めて引き継ぎを終えた。
新しい領主は、若いものが多く新しいやり方のとても興味を持った様だ。
領民にも同じように、新しい街や道具の使い方を教え、衛生についての正しい考え方を何度か教えた。
これから先は自分達で考えて実行すべきであろう。
ーー 赤の休み
学園最後の季節がやって来た。
学園入学中は何かと事件や行事が多く、あっという間に僕も大きくなった気がした。
今では僕も背が175cm程でこの世界の男性としては平均的な背になってきた。
もう少し肉がつけば良いのだがそこはこれからの努力次第だろう。
メンバーも男性はマッケンジー君が185cm、クロニアル君は178cmで、女性は160〜170cmほどだ。
皆僕より早く成長したので、その影響があると僕は思っている。
学園長も新しく変わるようで、今引き継ぎ中のようだ。
卒業すると白の季節を待って、数えの15歳になり成人とみなされる。
それぞれメンバーは、自領で領主またはその後継として自立し始めるにだ。
クロニアル君はしばらく僕の元で、新しい制度や道具を使った領地運営を学ぶそうだ。
マッケンジー君は、父親と同じ伯爵まで上り詰めたので、一族一同の自慢になっているようだ。
レリーナとセリーナは子爵へと成り、ダンジョン管理を行うことが決まっており、安定した経営が約束されている。
それぞれの家族も、要職に着けたようで一族で盛り立てていくようだ。
去年の約束通り、僕はみんなを連れて海に家と避暑地の別荘に、最後の学園生としてのバカンスを楽しんだ。
その後、避暑地の別荘や海の家または山の家というものが貴族の間で、流行り出したのだが今はまだほんの一握りだ。
ーー 赤の季節がきた。
とうとう最後の学園生活の季節だ。
お母様も自領から出てきて、卒業までは王都に居ると言っている。
お父様も新領主達の領地を視察しながら様子を見て回っているようだ。
僕が入学して学園の行事や勉強についてもだいぶ変わってきた、森の管理に大切さやダンジョンについても分かってきた、これからこの世界はずっと住みやすくなるだろうと、僕は希望を抱いで後輩に後は任せることにする。
そして学園生活が終わりを迎える。
ーー 卒業式
学園の卒業式が、黄の休みに行われた。
今年は国王が自ら参加しての卒業式で、多くの貴族が出席した。
卒業生代表として僕は挨拶を行ったが、日本人だった頃を思い出してもそんな大役はなかった。
意外とこの世界に来てよかったと思える。
これで学園編は終了です。
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