第22話 領地開発という名の無双

ーー 赤の休み。


スタンピードの後始末が終了した頃には、世間は赤の休みになっていた。


お母様のお話でしばらくクロニアル子爵を僕の元で勉強させてと言われた時はよく分からなかったが。

お互い一人っ子の後継で、領地経営や開発の勉強をさせたいと言うことだった。

僕は親友とあれこれできるのは楽しいので二つ返事で了承しました。



ちょうどマッケンジー男爵とミリア男爵がもらった旧メンドー男爵領の開発があるので、2人で参加しようと決めて今向かっているところです。



ーー 再開発という名の面白いこと。



周辺3国のオークションに地竜の素材を一つずつ出した。

その結果が来るまで、いつものメンバーで再開発の素案を作る。

「先ずは逃散した領民を呼び戻すために、生活するのに必要なものを整備しましょう。」

というミリア男爵の言葉に皆が目を見開いた。

「さすが領地をもらった人は違うわね。」

とレリーナが言うと

「何言ってるによ、貴方も同じでしょ。ここを見てから自分のところを開発しないと婿の来手がなくてよ。」

と言われ、「はい真面目に考えます。」と答えていた。


僕らは見た目こそ成人貴族のようだが中身はまだ9歳の子供。

まずはしっかりとした人材を集めてからが本格的な開発になる。

それまでは地味とも思えるライフラインの整備をしていよう。


まずは正確な地図を作ろう提案して

「その方法は?」

と聞かれ、

「魔法」

と答える僕。

俯瞰の魔法を使い領地全体を見ながらその姿を大きな紙に写していく。

さらに場所場所を拡大して同じように写していくと、詳細な領地の地図が出来上がった。


「これをもとに街づくりをしよう。まずは道と水路だ。」

と言うと「道はわかるけど、水路というのはなんなの?」

とミリア男爵。


「公爵量を見ればわかると思うけど、街が清潔で綺麗な飲み水あることが大きな問題なんだよ。病気の原因に汚れた水や不衛生な生活環境があるんだよ。」

と言いながら幾つかの事例を挙げて重要性を説明した。

するとレリーナ男爵が

「どうしてそんなことまでエストニア伯爵は知っているんですか?前々から思っていたんですよ。ものを知りすぎていないかと。」

と言い出したみんなの顔を見たらみんなそうだと言う顔をしていたが。

「そこはまだ秘密です。いつかみんなに教える時が来たら教えるね。」

で話を逸らした。


高台側に移動すると僕は手を地面について、土魔法で地面の下を探る。

公爵領でミスリルを見つけた時に使った魔法だ。

「見つけたよ。ん!これは源泉だ。」

ニコリと笑った僕は、マッケンジー、ミリア両男爵に

「ここ悪くないよ。深いけど大きな水脈を見つけた。それに温泉の源泉も近くを通っている。掘削は僕に任せて。」

と言いながら魔力を練りながらイメージを固めていく。


周囲の地面を深さ5mほど掘り下げながら表面は大理石のような石で埋める。

中央の直径1mの穴を掘りさげながら壁面をコンクリート化してゆく。

そのため1分で5m程の進捗状況だ。

掘り始めて30分深さ約150mで水脈に到達し、溢れるように水が湧き出した。


僕は少し休憩すると今度は別の場所に同じように深い穴を掘り広げてから中心から穴を掘り下げてゆく。

今回は深いため3回に分けて掘り進めた。

深さ約1000mで温泉の源泉に到達した。

溢れ出る熱湯に驚くみんな。


「これで飲み水と体を清潔にする温泉を確保できた。」

と言う僕にミリアが一言爆弾を落とす。

「この湧水と温泉というのは誰の領地のものなの?」

と。

僕はなんでもないことのように

「え!だって2人が結婚すれば問題ないでしょ。」

と言うと急に2人の態度がぎこちなくなった。

「どうしたの?みんな分かっているよ。2人が想いあっているの。」

とさらに僕が言うと真っ赤になったミリア男爵が下を向いたまま離れていった。

するとすかさずクロニアル子爵が

「マッケンジー男爵、今が男を見せる時だよ。」

と背中を押すと、マッケンジー男爵はミリア男爵を追いかけていった。



僕はその一連の流れを無視して

「今度は道を作りながら水路を引いていくよ。」

と言う。

地図に書いた道路の位置を確かめながら、縄張りを行う。

「メインの道路はこのくらいの幅かな?」

「両サイドに側溝を作り、水管は中心に通すか。」

独り言を言いながら作業を進める僕の横で、図面を確認するクロニアル子爵が頼もしい。


その後も2人が戻ってくるまでの間にかなりの道を完成させていた。

「凄い、いつのまにかこれだけの道を!」

と言うミリア男爵に僕は

「それに答えてまたいなくなると困るから、言わないよ。」

と言いながら作業を続ける僕。


その後7日をかけて僕らは、旧メンドー男爵領のライフラインを作り上げたのだ。



ーー 人材を集めよう。


僕らは人材確保のために募集をかけることにした。

ケンドール公爵領の人材育成の成果である数多くの若者は、100%の採用率で採用された。

次に継承権のない三男・四男などの貴族の息子や平民でも一旗あげたいと思うものが多く集まった。


そこで僕らは募集してきた人を見分けられる人物を採用することにした。

これはお父様やお母様の力をいただき、4人を推薦してもらっていた。

その中の1人は僕の所だと既に決まっておりからと言われた。

その人は王都の冒険者ギルドの副ギルマス、エリス男爵だった。

その他の3人を採用してから新たな男爵領地3つの人材採用面接が行われた。


さすがお父様が紹介された人たちだ、あっという間に面接を終えた。

旧メンドー男爵領は開発を急ぐ領地であることから、早速採用した人員を仮の領主邸に常駐させて街づくりを本格的に行い始めた。


そのこと3か国で競売に賭けていた地竜のオークションが無事終了し、大金が振り込まれてきた。

「はいこれを4人で分けてね。」

と積み上げる金貨袋の山。4人が目を剥く。

・・・みんなの目が怖いよ。


人が居てお金があって詳しい設計が有れば、街になるのにそれほど時間はかからなかった。

大半の建物が出来上がるまでに、赤の休みが終わり。

僕たちは学園の初等科3年になろうとしていた。



ーー 新たなるダンジョン。



学園行事の最後ダンジョン攻略は、昨年僕らが踏破したためにダンジョン体験訓練に変わっていた。

踏破されたダンジョンは、活動が緩やかになりその規模により違うが。

3年〜20年で消滅すると言われている。

それまでは安全なダンジョンとして利用できるだろう。


そんな話を聞いていた僕らに、ワクワクするような情報が。

ダンジョンが踏破されると何処かで別のダンジョンが現れると言われていたのだが。

王都の北のダンジョンが踏破されて今度は、南側にそれらしいダンジョンが新たにできたようだと言う情報だ。


まだ全容がわからないために学生が挑戦できないが、その内挑戦できそうである。


話はここで終わらない。何故ならそのダンジョンができたと言われる場所は、新たに領地を賜ったレリーナとセリーナ男爵領のちょうど真ん中たりなのだ。


そのため2人に王城から呼び出しがあった。

「わたしたち行ってくるね。わからない時は相談するからね。」

と言い残して城に向かう2人。


ダンジョンは魔物を生み出すばかりではなく、富をも生み出すのだ。

「2人の領地経営は、ダンジョン経営とも言えるね。」

とクロニアル子爵が呟くがその通りだと思った。




ーー 農地の再生。



街づくりが軌道になったことから次は、農地の再生をすることにした。

この時僕にはある方法が決まっていた。

この世界は魔力がある世界、のうちも魔力が豊富で有れば豊作が確約されている。

それなら魔物の死体が腐るほどある。それをすき込めば魔力と栄養のダブルで完全再生ができるのではないかと考えたのだ。


大量の魔物の死骸をスタンピードで荒らされた田畑に撒くと、土魔法で攪拌しながら土にすき込んでゆく。

炎の魔法で草などを焼くと適度に乾燥した桁土が出来上がった。

さすが異世界のご都合主義だ。と言いながら僕はこの作業をひたすら続けて行った。


一通り作業が終わったところで、早急に欲しい穀物を植え付けていく。

その後に回復魔法を混ぜ合わせた水を全体にかけて様子を見ることにする。


3日後。

突然成長し始めた苗が僅か10日で実を付け始めた。

ものすごう成長である。


約2週間で収穫できるまでになった穀物を戻ってきたばかりの領民に収穫してもらう。

農民らは大いに喜び収穫すると領主のミリア、マッケンジー男爵にはじめての収穫を納めたのであった。

それを2人は高値で買い取りさらに収穫祭をするようにと追い銭を与えた。


この収穫祭が後々評判となるのだが、この時はそこまで考えていなかった。


この農地再生の成功は今後この世界の農業の改革となる。

エストニアはこの時そこまで影響のある発見だとは思っていなかった。



ーー 黄の休み。


領地開発をしているうちに学園が創業式を迎え、その年も終わるとなる。


僕たちはそれぞれ知らぬうちに初等科3年となっていた。


休みに入ったため僕らはそのまま領地開発を続けていた。


ダンジョンの方も5階層まで探索が終わり、新たなダンジョンが中層以上であることがわかってきた。


旧メンドー男爵領の開発が軌道に乗ったことから、僕とクロニアル子爵は今度はレリーナ、セリーナ男爵領に向かった。


ダンジョンの入り口付近には、急拵えの警戒門が作られており兵士が常駐していた。

これらは領主である、レリーナ、セリーナ両男爵家からの差し出しの兵士である。


その周辺の村は今やゴールドラッシュの町のように、人が溢れていた。

僕はケンドール公爵領とサンドール侯爵領の御用商人に出店の依頼を出して、何もない草原に新しい街を作り始めた。

先ずは道を広めに取り王都からの行き来を楽にさせる。

馬車置き場や食事のできる店を周りに置き、ダンジョン探索に必要な武器屋、道具屋それとギルドの支店を臨時で置いた。


宿泊所については、王都までの馬車が深夜まで稼働することで補った。


早急に沢山の冒険者に対処できる体制を整えたいところだ。

採用した人材が仕事をし始めた、次々に案を出して検討したりやってみたりして、次第にものになってきた。


「ここはこれでいいかもしれないね。後は2人に任せよう。」

僕はクロニアル子爵とその場を後にして、クロニアル子爵の実家に挨拶に向かったのだ。



ーー サンドール侯爵領。


「先日は、商人の手配や人材派遣につてありがとうございました。」

侯爵に御礼を兼ねて挨拶をする。

「それについては例には及ばない。うちの寄子の子弟を多く家臣として採用してもらった御礼だよ。」

と言う侯爵。


すると侯爵夫人が

「エストニア伯爵も成長されて、公爵様によく似ていらっしゃる。」

と僕がお父様に似ていると言ってくださった。


その後は、僕とクロニアル2人の活躍や領地開発で試したことを色々と聞き取っては意見をしてくれる、楽しい時間を過ごした後、僕は御礼を兼ねて2人に。

「これは息子から両親への感謝の印と思って受け取って貰いたい。」

と言って、「若返りの秘薬」と「エリクサーの丸薬」を差し出した。


侯爵らは暫く品物と僕らを見比べていたが

「これはありがたく受け取っておくよ。これからもクロニアルをよろしく頼むよ。」

と言われた。


その日は侯爵家に泊まり、次の日には僕の伯爵領地へ向かったのだった。



ーー 伯爵領の代官エリス男爵。



伯爵領に着いた僕らは、領主邸に入った。

「お待ちしておりました、エストニア伯爵。」

ミカエル騎士爵が僕を迎えくれた。

「代官が赴任してきておりますが、伯爵の認可がないので仕事ができないと申しております。すぐに呼んできますので暫しお部屋でお待ちください。」

と言うとどこかに立ち去った。

「代官と言えば確か副ギルマスの・・」

「エリス男爵ですよ、伯爵。」

扉を開け部屋に入りながらそう言う男は確かのエリス男爵だった。

その場で認可状にサインをして、代官を任命する。


「そう言えば聞きたいことがあったんだ。エリス男爵は何故僕のところに?確かセガール公爵の傍系だったよね。」

と尋ねる僕に

「私も上を目指してみようかと思いまして。伯爵の元なら想像以上の出世も可能だろうと下心で応募したんですよ。」

と答えたが、真剣な目を見て

「それでは上を存分に目指してもらおう。」

と答えて握手を交わした。


こうして僕の元に心強い仲間が加わった。


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