第20話「魔神メイドと魔術師ギルド」
ここは魔術師ギルドの会議室。
今ここではエデンの処遇をどうするか話し合われていた。
人間に制御できる状態として現状維持する意見や、
一人の人間に最強の魔神を使役させるのはどうなんだという意見、
ついには魔神等封印すべきだという意見まで飛び交う始末。
「しかし彼女達のこれまでの功績を無視する訳にもいくまい」
老齢の魔法使いオルファンはこの魔術師ギルドの長だ。
どうやら彼は現状維持派らしい。
「そもそも彼女が無所属だから問題なのだろう?」
「なら魔術師ギルドに入れてしまえば問題あるまいて」
オルファンの突飛な意見に騒めくギルドの面々達。
こうしてエデンの魔術師ギルド入門試験が始まった。
―
ここはとある王都の魔術師ギルド。
今日も優秀な魔術師達が魔術の修行に励み切磋琢磨している。
「私に魔術師ギルドに入れだと?一体なんのジョークだ?」
「ジョークじゃないんだなぁ、これが」
クロウが指輪をかざそうとするが、エデンはやれやれといった感じでギルドの案内人についていく。
そこには魔術障壁を改良して作られた魔術の的があった。
「じゃああの的に適当に魔法を撃ってくれないか?」
「少しは加減しろよ、エデン」
「ふん、くだらん・・・」
エデンが手をかざすと手から巨大な魔力の塊が飛んでいく。
当然ながら魔術の的は跡形もない。
「これでいいか?人間の魔術師」
「だめだめ、なにしてくれちゃってんの!魔力測定の的を壊して!」
「貴様等の貧弱な的等知った事か。それとも貴様を的にしてやろうか?」
エデンが試験官の方に手を向ける。
「な、なんだ、私に逆らうのか?ふ、不合格にするぞ!」
震えながらも言い返す試験官。
あれだけの大魔術を見てながらマニュアル対応とはある意味凄い奴だ。
しかしどうやらエデンが魔神だって事は伏せられてるらしい。
「やめんか!」
と、それを遮る様に一人の老齢の魔術師が割り込んでくる。
この突飛な計画を発案した張本人の魔術師ギルド長、オルファンだ。
「こちらの非礼をお詫びしたい、エデン殿」
オルファンがエデンに深々と頭を下げる。
当然ながら周囲の魔術師達が騒めき始める。
「あのオルファン最高導師が頭を下げてるぞ!」
「さっきの魔術も凄かったよな!」
野次馬達の注目がエデン達に集まった。
オルファンは頭を上げるとその重い口を開いた。
「して提案なのですが、今度はこの私に魔法を撃ってくれませんかな?」
「え?」
またもや突飛な提案に驚愕する俺。
オルファンは詠唱を始めると、先程の的とは比にならない分厚い魔術障壁を、何層も重ね自身の前に設置した。
どうやらエデンの魔力測定を自分自身で行う様だ。
「お、おい、あんなおじいさんに本気だすなよエデン」
「・・・人間の魔術師にしては中々だな。少し本気を出してやろう」
マナエクスプロード!
エデンが手をかざすと巨大な魔方陣が現れ魔力の球体が形成される。
大きさこそ先程の物より断然小さいが、高密度の魔力が圧縮されている。
そして手をオルファンの方に向けると球体は高速で飛んで行った。
何層もの魔術障壁は次々と貫通され、残るは最後の一枚という所で爆発した。
その爆発も凄まじく、試験会場全体へと被害が及んだ。
「ごほごほ、や、やりすぎだぞ!エデン!」
爆発による砂ぼこりで咳込む俺やギルドの魔術師達
そして俺の抗議を聞き流すエデン
「これで良いのだろう?ご主人様」
これは驚いた、エデンとオルファンの試験場にはドーム状のバリアが張られ、
野次馬達やギルド内部の被害は最低限に抑えられていた。
しかも俺やオルファンには個別にバリアを張ってくれている。
「勘違いするなよ、後で騒がれるのが面倒なだけだ」
そっぽを向いたエデンは若干はにかんでいる様に見えた。
「で、エデンは合格なんですか、最高導師殿」
俺はオルファンに問いかける。
逆切れして不合格なんて言わないだろうな・・・
「うむ、実技試験は合格じゃな」
よしっ!俺は心の中でガッツポーズを・・・て実技試験は?
そうだった、この手の試験には筆記試験が付き物だった!
「これだけの大魔術を扱えるんですから筆記は免除に・・・」
俺の提案を笑顔で却下するオルファン。
おいおい試験勉強なんてやってきてないぞ・・・
しかしこのやり取りを見てもエデンは余裕の笑みを浮かべている。
「最高の魔力と最高の叡智を持つ魔神だぞ?心配等無用だ」
彼女の余裕通り、エデンは筆記試験を満点で突破した。
これで彼女は晴れて魔術師ギルドの一員となった訳だ。
「勘違いするなよ人間の魔術師。別に貴様らの僕になった訳ではないからな」
「はい、心得ておりますよ魔神エデン殿」
エデンに微笑み返答するオルファン。
周囲の野次馬達が騒ぎ始める。
そりゃあこれだけの人の前で魔神って言っちゃったんだもんなぁ。
そんな周囲の声などまるで聞こえないかの様にエデンは涼しい顔をしていた。
どうやら久々に本気を出せてすっきりしたらしい。
俺は指輪をはめた指を握りしめると、最強の魔神の恐ろしさに身震いした。
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