第10話

さて、その頃であった。


ところ変わって、今治市松本町のダンナの実家にて…


家の居間には、アタシとダンナと義父母がいた。


4人は、セトウチデリカで注文をした手作り弁当で夕食を摂っていた。


この時、家の雰囲気は危険な状態におかれていた。


今にも、怒鳴り合いの大ゲンカが起こるかもしれない…


アタシは、ビクビクしながらお弁当を食べていた。


夜8時50分頃のことであった。


新居浜の友人宅にあいりさんが、自分の荷物を取りに一時帰宅した。


この時、義母とあいりさんが大ゲンカを起こした。


「あいりさん!!きょうまでの間、どこにいたのよ!?」

「義母さま!!アタシは、千鶴さんが外で働かないからアタシがパートに出ておカネをかせいでいるのよ!!」

「うちら家族は、あいりさんが家を出たあと困っていたのよ!!」

「義母さまはアタシにどうしてほしいと言うのよ!!」

「どうしてほしいって、あいりさんが作った手料理が食べたいのよ!!」

「そういう義母さまは、なんで料理をしないのですか!?」

「あいりさんが作った手料理が食べたいからうちにいてよ!!」

「キーッ!!もう怒ったわよ!!ふざけるな!!」


(ガーン!!)


あいりさんは、手当たりしだいにあった物で義父の頭を殴りつけた。


「ああああああああああ!!」

「やっつけてやる!!」

「あいりさん!!なんで主人に暴力ふるうのよ!?」

「義父さまが全部悪いのよ!!アタシとたけのりさんの結婚準備をしている時に、義父さまがふたりでためた結婚資金を勝手に使ったのよ!!」

「やめてくれ〜」

「その上に、1年前にアタシのねどこに忍び込んでナイフでおどした…そして…パジャマと下着をズタズタに破いて…アタシの身体を犯した…その時に、義母さまの悪口を言うていたわよ!!」

「あいりさん…ごめんなさい…」

「ふざけるな!!」


(ガシャーン!!)


あいりさんに突き飛ばされた義父は、ガラス戸を突き破ったあと庭先に転げ落ちた。


その後、あいりさんは義父をボコボコにしわき回した。


それを見たアタシは、叫び声をあげることができずに震えていた。


それから1時間後、あいりさんは荷物をたくさん持って家出した。


時は、11月21日のことであった。


あいりさんは、家出したと同時にたけのりさんとの連絡網を絶ちきった。


ダンナの実家の家庭の雰囲気は、極力悪化した。


アタシは、一生懸命になってパートを探していたけど、不採用ばかりがつづいた。


この時、アタシは本気でダンナとリコンして浜松の実家へ帰ることを決意した。


そんな中であった。


遠距離通勤を強いられているダンナは、心身ともにヒヘイしていた。


この日、ダンナは会社に休職願いを出した。


毎日、今治から堀江までバスを乗り継いで家と工場を往復している。


国道317号線の峠道を越えて、朝の通勤の時間帯でにぎわう松山市内の旧道を通って堀江町の工場へ向かう…


決められた時間にホームソフナーの部品の組み立てのお仕事をする…


ランチは、給料引きで注文するお弁当を食べる…


そして、暗くなる頃にもと来た道をたどって家に帰る…


義父母が『心細い心細い心細い心細い…』と言うから、ダンナはガマンして遠距離通勤をつづけたが、それもガマンの限度に達した。


休職して、ゆっくりと体を休めたい…


今のダンナの気持ちは、生きて行くことに疲れていた。


その日の午後2時過ぎのことであった。


ところ変わって、工場の休憩室にて…


休憩室にダンナと河中さんがいた。


河中さんは、ダンナ休職願いを出したことを聞いて心配になっていたので、なにがあったのかとたずねた。


「たけひこさん…休職願いを出したと言う話しを聞いたから心配になっているのだよ…たけひこさんの身に、一体なにがあったのか…」

「病気になっから休職願いを出した…」

「病気…」

「そうだよ…だから休職願いを出した…文句あるのか!?…文句あるのかといよんのが聞こえないのか!?」

 

ダンナは、よりし烈な怒鳴り声をあげて河中さんをイカクした。


河中さんは、つらい声で『文句はないけど…』とダンナに言うた。


「それだったら問題ないじゃないかよ…それより、休職願いは受理されたのか…上の人が休職願いを受理したかどうかと聞きよんのが聞こえないのか!?」


ダンナは、よりし烈な怒鳴り声で河中さんをイカクした。


イカクされた河中さんは、つらい声で言うた。


「その事で、上の人と相談したのだよ…」


河中さんは、つらい声で『休職願いは上の人が破棄した…』とダンナに言うた。


「たけひこさん…たけひこさんの休職願いは…上の人と話し合った結果…見送られのだよ…」

「どうして休職願いを破棄した!?」

「人手が足りないんだよ…若い従業員さんたちは…」

「若い従業員がいるからやめるなと言いたいのか!?」

「たけひこさん…」

「若い従業員がナマケモノだからオレにやめるなといよんか!?」

「たけひこさん!!若い従業員さんたちは必死になって仕事をおぼえる努力をしているのだよ!!」

「そのように見えない!!若い従業員は、ろくに仕事もせずに休みたいとかカネだとか…グダグダグダグダとほざいてばかりいる…定時に帰宅することとヨアソビすることだけは一丁前で、工場ではだらけている!!」

「たけひこさん!!」

「それよりも、休めたいとかカネだとほざきよる若い従業員を今すぐに追い出せよ!!」

「たけひこさん、怒る気持ちはよくわかるけど、たけひこさんに工場にいてほしいんだよ…たけひこさんがしているお仕事が出来る人が他にいないのだよ…ホームソフナーの部品の組み立てのお仕事ができる人が…」

「ふざけるな!!ぶっ殺してやる!!」


たけひこさんは、河中さんに思い切り怒鳴りつけたあと、はき捨てる言葉を浴びせた。


「オラオドレ!!オドレは若い従業員さんたちはホームソフナーの部品の組み立てができないと言うたな!!…と言うことは、若い従業員たちは無資格だからと言うことだな!!」

「そうじゃないんだよ…ホームソフナーの組立ができるのはたけひこさんしかいないんだよ…」

「逃げ回るのもいいかげんにしろ!!」

「逃げてなんかいないよ…それよりもたけひこさんお願いです…工場にいて下さい…たけひこさんが工場にいないとホームソフナーの生産が鈍ってしまうのです…」

「拒否する!!」

「たけひこさん、それだったら遠距離通勤の負担を減らしてあげるから平田町からある従業員寮へ移り住むことを検討してください…」

「それも拒否すると言うた!!」

「なんで拒否するのですか…私はたけひこさんの遠距離通勤の負担を減らしてあげたいから従業員寮へ移り住んだらどうですかと提示しているのです…」

「拒否すると言うたら拒否する!!」

「うちの工場の送迎バスはあるけど、遠方も行けるところと行けないところがあるのです…遠方は奥道後と郡中(伊予市)と砥部まで…今治寄りは、浅海(あさなみ)まで…そこから先は、(国道196号線の)カーブがきついから行けない…」

「送迎バスもダメか!!」

「だから従業員寮へ移ってください!!」


(ガーン!!ガーン!!)


ダンナは、河中さんをグーで殴りつけた。


「たけひこさん!!」

「よくもメイレイしたな!!ぶっ殺してやる!!」


ダンナは、よりし烈な力を込めて河中さんに暴行を加えた。


その後、ダンナは上の人をボコボコに殴りつけた。


そして、若い従業員さんたちをよりし烈な力で次々と殴りつけた。


そこから数分後、若い従業員さんたちから大金を強奪して工場から出ていった。


ダンナはその後、行方不明になった。


アタシは、この日を持ってダンナをすてて浜松ヘ帰ることを決めた。

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