ゲンコツヤマのタヌキさん

佐伯達男

第1話

時は、2008年9月の第2土曜日のことであった。


場所は、浜松市松城町にお城の公園の近くの神社にある婚礼会館にて…


アタシ・千鶴は、両親に連れられて母親の知人の息子さんの挙式披露宴に出席していた。


館内には、新郎さんの高校時代の友人たちや新婦新郎さんの職場の同僚さんたちと新婦新郎さんの親族のみなさまなど…がたくさん集まっていた。


新婦新郎さんは、東京の総合商社に勤務していた。


社内恋愛で恋を実らせて、夕暮れの由比ヶ浜(鎌倉市)で新郎さんが新婦さんにプロポーズをした…


そして、慶びの日を迎えた。


結婚後は、ふたりとも会社をやめて浜松ヘ帰る…


市内にある新郎さんの実家ヘ帰ったあとは地元で再就職する予定である。


館内のエントランスホールのカフェテリアに出席者のみなさまが集まっていた。


みなさまは、お茶をのみながら楽しくお話しをしていた。


両親と一緒にいるアタシは、両親と新郎さんのご両親の会話をだまって聞いていた。


ひと間隔を空けて、新郎さんのお母さまがアタシの結婚はまだかと両親にたずねた。


新郎さんのお母さまの問いに対して、アタシの父はこう答えた。


「ああ、千鶴のことですか…好きな人はいるけど…まだ気持ちがとまどっていて…」

「まだ…ですか?」

「ええ…」


アタシの母は、ものすごく困った声で言うた。


「もうすぐ30になるのに、千鶴はグズグズしているんですよ…『女性の29歳と30歳は違うのよ…』と繰り返して言ってるのに言うことを聞かないのです…」

「それだったら、思いきって結婚相手を違う男性に変えてみてはどうですか?」


新郎さんのお母さまの言葉に対して、父はあつかましい声で言うた。


「結婚相手を変えろと言われても…」


新郎さんのお母さまは、やさしい声でアタシの両親に言うた。


「千鶴さんは、好きな人との結婚をためらっていると思います…それだったら、違うお相手に変えた方がいいと思いますがいかがでしょうか?」


新郎さんのお母さまから出された提案に対して、両親は生ぬるい表情を浮かべた。


アタシはこの時、小学生の時に好きだったAくんと結婚することを決めたていた。


半年前にAくんと浜名湖へデートに行った時、Aくんからプロポーズされた…


アタシは、Aくんのプロポーズを受けて結婚しようと決めた…


しかし、それから3日後に小学校のクラスで天才のBくんと再会した。


Bくんは、大学で研究をしていた案件が世界に認められた…


Bくんは、研究の成果が認められたからアタシを迎えに来たと言うてアタシに結婚の申込んだ…


アタシは、どちらのプロポーズをOKすればいいのか分からずにコンワクした。


どうしよう…


アタシは、Aくんのことが好きなの…


でも、Bくんは天才で大学の研究が世界に認められたから高収入を得られる…


Aくんは、契約社員でお給料は食べてゆくのがやっとの金額で、失業する恐れがある…


Bくんの方が安定した高収入で、失業するリスクが全くないから安心できる…


そんな生ぬるい気持ちでいたから、アタシは結婚適齢期を逃した…


そして、アタシはトラブルに巻き込まれた。


11月の第2水曜日のことであった。


アタシは、Bくんからプロポーズの返事をくれと強要された…


Aくんからは、早く挙式披露宴の準備を始めろと強要された…


ふたりから強要されたアタシは、大パニックを起こした。


さらにその上に、深刻な問題が家庭内で発生した。


アタシの家で同居をしている兄夫婦(38歳同士・4歳の長女がいる)がアタシとAくんと挙式披露宴はいつ挙げるのかと両親に何度も何度も繰り返してたずねるようになった。


アタシの両親は『挙式披露宴の日取りがまだ決まっていないのだよぉ…』と泣きそうな声で答えた。


兄夫婦のいらだちが日増しに募り出した…


それが原因で、アタシは兄夫婦から暴力を受けた。


11月の第2水曜日の夜、兄嫁が『千鶴がアタシたちをグロウした!!』と言うて物を投げつけた。


困り果てた両親は、兄嫁をなだめた。


しかし、兄嫁は家中を暴れ回って部屋をめちゃくちゃにした。


アタシは、両親から兄嫁の怒りをしずめるために両親が決めた相手とお見合いして結婚しろとメイレイされた。


アタシは、両親のメイレイで違う相手とお見合いした。


しかし、断られてばかりいた。


この2年で、300回お見合いをしたのに、断られてばかりが続いたのでものすごくつらかった…


お見合いしたくない…


…と言うか…


男なんかいらない…


それなのに、両親は『早くしてくれ!!』とか『兄嫁がイライラしているのだぞ!!』などとシツヨウにアタシをせかす…


兄嫁は、気に入らないことがあればアタシに暴力をふるう…


耐えきれなくなったアタシは、結婚をあきらめて生涯独身で通すと決意した。


それから2年後の2010年のことであった。


この時、兄夫婦のひとり娘のお受験で家庭内がキンパクしていた。


アタシは、家庭内に居場所をなくした。


兄夫婦は『(ひとり娘)は、千鶴のようなダメな女になってほしくない!!』と言う思いから神奈川県に超一流の女学院の付属幼稚園に入園させることを決意した。


家は、お受験モードに入っていた。


しかし、必死の努力にかかわらずお受験は散々な結果で終わった。


兄夫婦は、お受験に大失敗したので気持ちがギスギスしていたが、2011年度に神奈川県内にある超一流のオジョーサマ学園に入学させるためにふたたびお受験モードに突入した。


それと同時に、アタシに対する風当たりがさらに厳しくなった。


『娘が超一流校に入学できるようにさせてよ!!』

『いつになったら結婚するのよ!?』

『娘のお受験が失敗したらその時は千鶴さんにつぐなってもらうわよ!!』


兄嫁は、ことあるごとにアタシにバセイを浴びせた。


アタシの両親は『千鶴はお見合いをしても断られるから結婚なんかしない方がトクサクだ…』と言うて完全にあきらめモードになっていた。


だからアタシは、自分の力で結婚相手を探そうと決意した。


9月のいつ頃かおぼえてなかったけど、アタシは静岡市内へ遠出して結婚相手を探しに行った。


市内にある結婚相談のお店を複数軒回って、結婚相手を探すことにした。


アタシは、わらをもつかむ思いで結婚相談のお店に行った。


しかし、現実はとても厳しかった…


アタシは、こんなところで何をやっているのか…


こんなはずではなかったわ…


お試しのデータマッチングでつまずいた…


それだけではなかった。


ひどい場合には、来た早々に店の責任者から『勝手に来ないでください!!』と言われて追い返されたこともあった。


もっともひどかったのは、N店に行った時だった。


店のスタッフさんから『どうして30歳過ぎてからコンカツを始めたのですか!?』と頭ごなしに言われた…


ブチ切れたアタシは、店のスタッフさんと大ゲンカを起こした…


N店での事件が原因で、アタシの気持ちのギスギスがさらに高まった。


それなのに、両親はアタシの結婚のことは完全に無関心だった…


アホらしくなったので、アタシはまたリタイアした。


そして年が明けて、2011年になった。


兄夫婦は、ひとり娘が名門校に受かるようにと思ってお受験にいどんだ。


しかし…


結果は惨敗に終わった。


兄嫁は、アタシの両親に対して『(ひとり娘)が名門校に合格できなかった原因は全部千鶴さんにあるのよ!!』と凄んだ。


凄まれた両親は、どうすることもできずにコンワクした。


兄夫婦のひとり娘のお受験の失敗の原因がアタシにあるなんて…


兄嫁(おねえ)さまの言うことがよく分からない…


アタシはこの時、本当に家出して行方をくらませようかと考えた。


そして、2011年3月11日に深刻な事件が発生した。


午後2時46分頃に東日本大震災が発生した。


静岡県の沿岸にも大津波警報が発令されたので、街は緊迫した雰囲気に包まれた。


3月16日頃に津波に関する警報注意報は解除された。


しかし、千葉県にある兄嫁の実家が大津波で流されて、実家の家族全員が行方不明になった上に建物も根こそぎ流された。


帰る実家(いえ)をなくした兄嫁は、大パニックを起こした。


その上に、兄は職場の上の人間から任されていた事業が大失敗したので全責任をおえと強要されたのでカザフスタンへ行くことになった。


職場側は、兄に対して後始末が完了するまでは帰国禁止と言うた。


兄嫁さんは、実家の家族の安否が分からずにいらだちをつのらせた。


アタシの両親は『バンサク尽きた…』と言うてヒヘイした。


結婚をすることをあきらめたアタシは、どうして行けばいいのか分からす、トホウに暮れていた。


そして、2011年3月11日に深刻な事件が発生した。


午後2時46分頃に東日本大震災が発生した。


静岡県の沿岸にも大津波警報が発令されたので、街は緊迫した雰囲気に包まれた。


3月16日頃に津波に関する警報注意報は解除された。


しかし、千葉県にある兄嫁の実家が大津波で流されて、実家の家族全員が行方不明になった上に建物も根こそぎ流された。


帰る実家(いえ)をなくした兄嫁は、大パニックを起こした。


その上に、兄は職場の上の人間から任されていた事業が大失敗したので全責任をおえと強要されたのでカザフスタンへ行くことになった。


職場側は、兄に対して後始末が完了するまでは帰国禁止と言うた。


兄嫁さんは、実家の家族の安否が分からずにいらだちをつのらせた。


アタシの両親は、いらだちを募らせている兄嫁に対してバンサク尽きたと言うてヒヘイした。


結婚をすることをあきらめたアタシは、どうして行けばいいのか分からす、トホウに暮れていた。

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