第24話 ギルド王都支部

 ◇◇◇◇◇


 次の日。


 今日はまずギルドに行って、護衛依頼の報酬の受け取りだ。この王都は広いので、地図をもらってギルドに直行した。


 さすが王都支部だけあって、ギルドの中は広くて、冒険者の人数もすごい。


 リオの装備も目立つが、やはりリンドウの容姿と出立ちは目を引くようで、入っていくなり注目を浴びていた。

 しかも、リンドウはすでに闇賞金首。

 知っている人は知っている。

 というのも、ハンターズ発行の手配書だけではなく、ヘルサイズ発行の手配書も一般に出回るためである。

 なので、ハンターがヘルサイズ幹部狙いで大物闇賞金首を狙うこともあるらしい。

 それがヘルサイズの狙いでもある。


 ただ、今回は声をかけられるようなことはなく、受付まで何事もなくたどり着いた。


 しかし、いろんな人がいるなぁ。


 実はこの中に、アズワドから指示を受けたヘルサイズ紅蓮頭の男も紛れていた。

 当然、マスクは取っているので、そうとは気づかないがリオたちの様子を監視していた。

 もちろん、ターゲットはリンドウ。


「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件ですか?」


 受付の人が対応してくれた。

 が、やはり、リオの後ろにいるリンドウに向かって喋っている。まあ、そうでしょうね。


「はい、これを受け取りに来ました。」


 構わず、リオが受付に話しかける。

 それを見た受付の人は慌てたようにリオに声をかける。


「あ!少々お待ちください。」


 受付の人は急いで奥の階段を登っていった。


「どうしたのかなぁ?」


「まあ、待ちましょ。」


 受付の人が階段を降りて戻ってきた。


「お待たせしました。支部長がお会いしますので、こちらにどーぞ。」


 受付の人と一緒に奥の階段を登っていく。

 そう言えば、バルカンさんが、王都支部長に連絡するって言ってたよね。


 コンコン!


「支部長。お連れしました。」


「いいわよ。入ってちょーだい!」


 ガチャ!


 あれ?バルカンさん?に雰囲気は似てるけど……。


「あなたたちが、リオとリンドウね?

 よく来たわね。まあ、そこに座ってちょーだい。」


 支部長の前の席に座らされる。

 これは違う意味で緊張するぞ。


「あたしはこのギルドの王都支部長のグレコよ。バルカンから話は聞いてるわ。」


「はい、はじめまして。リオです。」


「リンドウよ。」


「あなたが闇賞金首ね。バルカンが手も足も出なかったらしいわね。

 そして、あなたがリオね。かわいいじゃない。その歳でヒールが使えるなんて有望だわ。しかも2属性持ちなんでしょ。いいわよ。」


 この人って、どっちなんだろ?


「あら、この人どっちって顔したわね。」


 ギクッ!?

 いい当てられて、思わず反応してしまった。


「まあ、どっちでもいいのよ。

 あたしはバルカンの姉ということよ。

 元Aランク冒険者で昔の闇懸賞金は1千万ペロよ。リンドウと同じね。」


「あなた、男でしょ。」


「違うわよ。体は男だけどね。心は生まれた時から女なのよ。全く不便だわ。」


「そうなのね。失礼したわ。」


「いいのよ。気にされるよりはっきり言われた方がいいわ。昔は気にして隠してたけど、今は正直に生きることにしてるのよ。そうすれば、性別なんて小さいことよ。」


「なるほどね。いいんじゃない。」


「ふふふ。リンドウはフラットでいいわね。

 それじゃ、あなたたちにお知らせよ。

 護衛依頼の報酬に加えてギルドからの追加報酬よ。

 バルカンからの情報を考慮してハンターランクを上乗せするわ。

 リンドウはバルカンに勝ったことでAランクに昇格、リオもCランクの子に勝ったことでCランクに昇格よ。嬉しいでしょ。」


「はい!いいんですか?」


「特別によ。めったにこんなことしないわよ。

 でも、王都支部長はAランクまでは昇格の権限があるのよ。流石にSランク以上は本部の承認がいるから無理だけど、すごいでしょ。

 まあ、そのランクに見合った実力があればだけどね。あとで本部からいろいろ聞かれたとき困るからね。

 ただし、昇格には条件があるのよ。

 それを飲んでくれたらの話だね。」


「へえ、条件は何かしら?」


「条件はね、この付近にあるヘルサイズの拠点の殲滅に協力してほしいのよ。

 最近になってヘルサイズがこの王国にも手を出して来ているのよね。

 まだ、大きくなってないうちになんとかしたいと思ってるんだけど、うちも戦力不足でね。

 そこにバルカンからの連絡が来たのよ。

 すごい戦闘力の女剣士とポテンシャルの高い少年がこちらに来るから、説得しろってね。」


「リオ、どうする?」


「条件はよくわからないけど、できる範囲でなら……。」


 リオは元々こういうあまり物怖じしない性格である。これが前帝国時代にも家族の癪に触ることがあり、いじめを助長させていた傾向がある。


「大丈夫よ。こっちもすぐにってわけじゃないから、ちゃんと準備はするわよ。あくまで協力をお願いする形ね。こちらで主導するから、無理のない範囲でやってちょーだい。」


「はい、それなら大丈夫です。」


「ふふふ、ありがとう。

 それにしても聞いた通り、リオが主人なのね。不思議な関係よね。

 リオのレベルは幾つなの?」


「はい、今回の護衛の同行でレベル11になりました。」


「あら、驚いたわ。まったくリオも異常ね。

 13歳になったばかりでレベル11は聞いたことないわね。しかも、バルカンの話だと、レベル6だったって聞いてたけど、異常な成長スピードね。たしかにポテンシャルはすごいわ。大物になるわね。」


「そうよ。リオはすぐに強くなるわ。」


「じゃあ、決まりね。

 何かあれば、こちらから連絡するから。

 下に行ってランクの登録と護衛依頼の報酬を受け取ってちょーだい。」



 ◇◇◇◇◇



 リオとリンドウは受付に降りて、いろいろ手続きしていた。


「はい、冒険者証をお返ししますね。

 リオさんはCランク、リンドウさんはAランクです。

 そして、こちらが王子護衛の報酬になります。追加報酬も含まれていますので確認してください。」


 ギルド受付のシオンさんから冒険者証と報酬を受け取った。


 なんと、今回の報酬は3300万ペロ!

 これには、紅蓮頭の男の報奨金も含まれる。

 そして、前金でもらっていた300万ペロを差し引いて大金貨30枚をゲットした!


 リオは王子護衛の報酬を受け取った。

 チャリン!(効果音)

 所持金:30363000ペロ。


 リオの顔がだらしなくニヤけている。

 リンドウはそれを見ながら、今日はガチャるんだろうと思わず吹き出しそうになった。


 その様子を紅蓮頭の男も見ていた。


 ◇◇◇◇◇


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