第5話 霊薬

 昨日は結局遅れて来た父親も含めて担当医と今後について話し合った。


 当然余命宣告も直接聞いたりもした。


 自分が思っているよりも一ヶ月くらい長く生きられそうと言うことがわかったのは僥倖ではあった。


 両親や妹は大泣きしていたが、俺としては抗がん剤を使わない治療に切替えて行くと言うことが何よりの吉報だと思えるのだが……


 そんなこんなで疲れて寝てしまったらしく、翌日の朝、久しぶりにスッキリと目覚めることができた。


 真っ先にダンジョンコアを握り、透明なタブレットを出し、ナビゲーターのパツコさんに挨拶をする。 


 タブレットの真ん中には昨日までは0Pだったダンジョンポイントが更新されていた。


「2561P?他を知らないからなんとも言えないが、これはきっと日本一稼げたのだろう!最強新宿駅から大都市周辺だからなー!日本円に換算すると256,100円!1万P使って1日2,561Pということはこれが毎日なら3ヶ月後には2300万円前後……思ったより少ない?」 

 当然90日生きられる保証は無いわけで、もっと少なくなる可能性も有るのに、この稼ぎだと自分で思ってたほどの金額にはならない……。


 このポイントでエリアを拡げて行っても三ヶ月後に2300万以上になるという保証はない。


 ただアップ系のアイテムに回収量アップ2倍〜5倍があるのでれを使って回収ポイントを増やし掌握エリアアップを使ってガンガンエリアを増やして行くのが良いのか?2倍が1,000P、3倍が3,000P、5倍が5,000P、4倍が無いのが謎だがまぁそれはいい。

 2倍を使うなら1日待って3倍を使ってその後5倍を使い続けた方が賢そうかな?そしてエリアの掌握をしていくのが正解かな?掌握エリアアップはポイント自体が増えるわけでは無いのがミソだな。


 いや〜本当に上手く行くかわからないが凄くやり甲斐を感じている。 


 このままずーっと運営して行きたいと強く思ってしまい、自分の運命に対し悔しさで涙がこぼれて来るのを感じる。


 自分の残された余命ではダンジョン制作まではたどり着く事は出来ないであろう。 


 そう言えばダンジョンとはそもそも何なのだろう?と思い、聞いてみる。


『そもそもダンジョンとは異空間に存在している特殊空間になります。地下に作って行きますが実際にはそこにはなく、別の空間に存在することになります。ダンジョンはダンジョンコアを育てる為の施設になります。ダンジョンマスターはDPを貯めてコアのランクを上げて行くことが目先の目標となってきます』 


 何か難しくなって来た?コアを育てるって何だろ?なんかやべぇ感じが…。


『当然コアを育てて行けばマスターにも恩恵はありますし、損は一切有りません…』


 ん?何か言い淀んでいた気がするが気のせいかな?まぁどうせそこまで行くことはないから良いか。 


『いえ、マスターは最後までやり遂げる事が出来ます。』


 イヤイヤ無理だろう…なんせ余命三ヶ月の身である。

 

『いえ、「アイテム」の「エリクシール」を使えば身体に存在する全ての病気、病巣、怪我、欠損を治癒することが可能となっております』


 「エリクシール」霊薬、神の水


 色々と言い方はあるが、ファンタジーの世界では定番の万能薬であり、不老不死になれるとも言われ、取得最難関のアイテムで在ることは知っている。


 最高取得難易度の素材を集め、高レベルの錬金術などで作ることが出来たり、それこそダンジョンの最下層のボスがドロップしたりと……。


 そう言えば、俺がダンジョンマスターだった!!最下層のボスとか言う次元の上の存在である!「エリクシール」など速攻ゲット出来る存在だったわ!と、かなり興奮してしまった。アラート鳴っちゃうよ!!

 早速タブレットの「ポイント交換」から「アイテム」を見てみる。


「ポーション」「マジックポーション」などグレードも色々と有り、ポイントも安いのから高いのまで。

 目的の「エリクシール」は1番下にあった。

 「エリクシール」10,000,000P

 

 ん?ポイントが良く見えないが……

一千万Pとか見えるんだけど気のせいだよね?! 

 もう一度よく見てみるがやっぱり一千万Pだった……見間違いでは無かった…。

 日本円で十億円ですよ……。 

 今のペースでポイント稼いでも4000日弱……どっちにしても間に合わないじゃないか……?泣けてくる。

 ダンジョン運営が軌道に乗れば余裕のポイントなのか?一千万Pなんか早々貯まるものでは無さそうだが?三ヶ月で貯める裏技でもあるのか?聞いてみる。


『裏技などは存在致しません。』


 ちょっとカチンとぎてしまうが、俺は大声をあげるタイプの人間ではない。

「それでは結局間に合わないじゃないの?」


『マスターが90日以降も生存している事が可能な方法は存在致します』





『人間を辞めませんか?』





「……え?」




 

 

 

 

 

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