第20話
家の中に入ると、そこには隆二とよく見慣れた人物が座ってお酒を飲んでいた。
「よっ、守お帰り~」
その人物はもういい気分で隆二とすっかり打ち解け合っている様子だった。女の癖に胡坐をかいていてみっともない。
「姉ちゃんきてたんだ……」
隆二も部屋着ですっかりくつろいでいる感じだ。
「隆二さんとお酒飲んでたんだ、お前もこいよ!」
「僕はいいよ、飲んできたから」
「ばーか、あたしの酒飲めないってのかよ!」
もう本当にタイミングが悪い。
可憐はずかずかとこっちに来ると、僕を無理矢理隆二の横に座らせた。
「とにかくいいから飲めよ! 隆二さんに沢山お前の話してやったんだ、昔の小さな頃とかさー、ほら写真とか見せてて」
テーブルには昔のアルバムが開いてあって、僕の子供の頃の写真があった。なんかいじめられたり、泣かされたりしている写真ばかりで情けなくなってくる。
「これとか可愛いよな」
隆二が長い指でそっと一枚の写真を指差した。それいじめられた直後に泣いてる写真……。
「でしょ、でしょ、ほんとにねー昔っから女みたいでさーこいつ! でもまぁそれがまた可愛くてつい、いじめたくなるというか、弄りたくなるとかそういう感じかしら? 女の子とか男の子まで変ないじめられ方してたんだよねぇ、体弄くられたりとかくすぐられたりとか」
「なんかわかる」
と言って隆二ははははと笑いました。
昔ではなく、今さっきも色々な人に揉みくちゃにされていじめられてきたんだけど。
「でしょでしょー。なんかこいつさー絶対王者的Mな感じしない? 僕をいじめて? って感じで。僕にちょっかいだしてーって感じしない?」
可憐の高らかな笑いに隆二もちょこっと苦笑いした。
ふと、僕の様子のおかしさに隆二が気づいたのか顔を覗き込んだ。
「……どうした守? 気分でも悪いのか? 見た事ない服だな」
僕は本世屋くんから借りた上着の胸の辺りをぎゅっと握り締めた。首を横に振る。
上手く言葉が出てこない。
僕の異変にお酒が入ってた可憐もちょっと普通じゃないと察したらしい。
「どした守? お前顔真っ白だぞ?」
僕は俯き加減で黙っていた。
「可憐さんに昔の守の話を色々聞いてたんだよ」
大きめのアイスブロックの入ったウィスキーを傾けながら隆二は微笑んだ。グラスの持つ長い指先が綺麗だ。
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