第10話 帰ってきた藍里ちゃん

ただいまー。

ママー、時雨くーん。



ただいま……って、どうしたの。



メガネとって。

メガネしてない時雨くんも、珍しい。


てか大丈夫?


玉ねぎ切ってたんだ……料理に使ったの? 目に沁みるよね。ママもよく泣いてた。玉ねぎ切ってたら目が染みたーって。



て、全くないじゃん。玉ねぎ。






……私知ってるんだ。



あの頃のママは玉ねぎのせいで泣いてたんじゃない。パパのせいだって。


時雨くんも、そうでしょ?

なにか辛いことあって泣いてたんでしょ?


ほらほら、涙拭いてあげる。



!!


時雨くん?

ちょっといきなり抱きつかないで……びっくりしたじゃん。


ママ起きてきたら……。


……



でもいいよ。


今なら。



……温かい。時雨くん。







少しは落ち着いたかな。はい、ティッシュ。鼻水も出てる。


……大丈夫よ。全然情けなくない。


びっくりだったけどさ。


確かにママはパパにひどいこと言われてたけどさ。八つ当たりするのはダメよね。

時雨くんは優しいから全部受け止めてくれてる。


……悔しいって?


何もできないからって?

そんなことないよ。ママは時雨くんと一緒になってから笑うようになったし。それにいつも料理してくれてるじゃん。……家事だって。


それだけでも私、助かってるよ。


ううん、こちらこそありがとう。



あ、今日もバイトあるよ。

賄いでるけど時雨くんの料理好きだから少し食べたいな。



て、今から料理無理だよね。


えっ、作ってくれるの?


ああ、冷凍ポテト……なるほどね。こんな時のための冷凍食品! 


便利ー!

これ揚げるだけでもいいけどこれを使ってジャーマンポテトとかチーズグラタンとか好き。簡単なんだもん。



うんうん、いいよねっ。

じゃあ……チーズ乗せ。これだったら私もできるよ。


あ、卵スープ! 嬉しい。


なんかね、時雨くんと台所にいる時間増えてからここにいるのが好きになってさ。

料理してるの見てたら作りたいって気持ち出できちゃった。


ほんと? 手際いいって嬉しい。時雨くんの見てたもん。


ポテトにチーズ乗せて……ああ、ベーコンもね。


ふふっ。


もぉ……。


これが好みって。

時雨くん、なんだかんだでママのこと常に考えてるのね。



うん、私トースターに入れておくから。トイレ行ってもいいよ。うん。










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