放課後カフェラテ!
放課後カフェラテ!
作家 裕貴
https://kakuyomu.jp/works/16816927859941984732
幼馴染の岩崎遥人が好きな高見唯は、暖かくて甘くて苦い恋をして両思いになる物語。
文章の書き方には目をつむる。
幼馴染との恋愛もの。
ベタな恋愛ゆえに、わかりやすく味わいやすい。
主人公は女子高生の高見唯、一人称私で書かれた文体。自分語りの実況中継でつづられ、やや説明的で描写は少ない。マンガのネームっぽさを感じる。
主人公の会話には『 』が使われている。
恋愛ものなので、出会い→深めあい→不安→トラブル→ライバル→別れ→結末の流れで書かれ、結末はハッピーエンドである。
また、からめとり話法に沿って書かれている。
高見唯と岩崎遥人は幼馴染。高校生になって、たまにかっこいいけどすっかり憎たらしい同級生。家でご飯を食べたり、勉強を教えてくれたりと今までと何も変わらず、女として意識されていない。
そんなとき、告白して振られる夢を見る。
岩崎遥人が所属するテニス部のマネージャーをしている先輩から、
どういう関係かと聞かれて「ただの幼馴染」と答える。先輩は彼に好意を持っているのだ。
しかも放課後の教室で、岩崎遥人に詰め寄り、意味深な会話をしていたのは親友の早坂ひなだった。親友は彼のことが好きで「一緒に勉強とかゲームしててほんとに楽しかった。でも、今は唯と二人で話したり、一緒にいるのが嫌なんだよ……」と彼の気持ちを聞いてしまう。
逃げるように走って下駄箱についたとき、追いかけてきた岩崎遥人に呼び止められる。
「ほんとに唯はバカだな。俺が好きなのはお前だけだよ」「そうだよ。嫌だよ。好きな女と二人だぞ。それに、そのお前は俺の事、男として見てないんだろうなって。好きになったらいけないって。この恋は終わらせないとってずっと思ってたんだよ。告白なんてしたら、今の関係が壊れそうだし」「お前じゃないと嫌だよ」彼の言葉をきいて、両思いだったことに涙する。
彼の告白を受けれて、奢ってくれたカフェラテを口に入れる。
暖かくて甘くて苦い恋の味がした。
身支度する理由に「先生には注意されるけど好きな人には可愛く見られたいし仕方がない。だって、私は恋する乙女だもん!」と自分語りしている。
恋する乙女、これ以上の理由はないほどに説得力がある。
登校する遥人を捕まえては洗面所に連れて行き、「寝癖を直してあげる」主人公。
あなたは遥人の母親ですか、とツッコみたくなる。
遥人は尻に敷かれるタイプかもしれない。
ひなと昼食を食べるとき、互いの弁当箱からおかずを取り合っている。毎日しているのだろう。いっそのこと、弁当を交換して食べたらいいのでは、と余計なことを考えてしまう。
先輩の三人が、遥人とはどういう関係か聞きに来る。
ベタな展開。だからこそわかりやすい。
ひなが「へー、唯ったらただの幼馴染の部活のマネージャーまで知ってるんだーよく見てるねーー」といったとき、主人公はムカついて、「めっちゃニヤニヤしながら言ってるし」とひなに対して木を悪くしている。
ちょっとモヤッとした。
親友なのだから、ひなの性格は把握しているはずなのに。
ちょっと気に触ったことで、むかつくーと、反射的に反応しただけかもしれない。それだけ主人公にとって、遥人のことはデリケートな問題なのだろう。
また、ここで、ちょっとした不協和音を入れておくことで、このあとの展開につながっていける。
ムカついてお弁当を取り合い、卵焼きをひなに全部取られてしまうやり取りが、この後の遥人を取られる(?)予告にもなっていると邪推する。
掃除当番の主人公は、じゃんけんに負けてゴミ捨てへ。おまけに「七月という事もありじめじめ暑い中、ゴミステーションまで運び終え、教室に戻るだけでもめんどくさい。うぇー。汗かいてきた。最悪。昨日から、本当にテンションが上がらない」と、不幸続きなのだ。
昨日からテンションが上がらないとある。
本作は今朝の夢からはじまっているので、昨日はわからない。
だけど、推測はできる。
なぜ今朝、遥人から振られる夢をみたのか。
おそらく昨日、「帰り道にまるで好きな子がテニスコートにいるのかなぁーってくらいじっーと」遥人をみていたテニス部マネージャーの先輩の姿を、主人公はみたのだろう。
自分が好きな遥人をみている先輩。
そして、彼に告白して振られる夢をみる。
昼食には、先輩がどういう関係かときいてきて、「ただの幼馴染」と答えてしまう。
ひなの弁当からカニカマをとるくらいでは、おさまらないほどいらだっているのだ。
そこに、教室で遥人とはなすひな。
「今でも好きだ」
「唯の事はどう思ってるのよ」
「俺の親は二人とも忙しくて家にいないんだな。それで、ずっと唯の家で飯を食ったり、一緒に勉強とかゲームしててほんとに楽しかった。でも、今は唯と二人で話したり、一緒にいるのが嫌なんだよ……」
彼が好きなのはひなだった、と勘違いする。
ライバルはAだと思わせておいて、じつはBでしたという展開は、ベタながら面白い。
勘違いしてしまうように出来事が起きているので、話の流れがいい。
彼がちゃんと追いかけてくるところがいい。
ということは、教室に戻ってきた主人公が走って下駄箱へむかったのを、遥人は気づいていたのだ。
七星高校には食堂があるらしい。
弁当持参の子もいれば、食堂で食べる子もいるのだろう。
どうして夏にホットカフェラテをおごるのか。
疑問に思っていたけれども、オチのためだった。
「これまでの話は何だったのか」いままでの体験が主人公に与えた影響や意味を暗示させるものだから、
「口に入れたホットカフェラテはあったかくて甘くて。でも、ちょっとだけ苦くて。恋みたいだなぁって思ったんだ」
とまとめるために、夏の暑い時期にホットでなくてはならなかったのだ。
暑い夏には温かい飲み物の方が身体に優しいので、ホットもありでしょう。
粗さもあるけれども、よく考えて、こだわって書かれている。
それでいて読後、めでたしめでたしで終わって読者に安堵感も与えている。
この先も、二人仲良くされることを切に願います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます