キミと一緒に終末旅行
暗黒星雲
第1話 レトロな軍用サイドカー
「ねえねえ。今日は天気がいいから気持ちがいいね」
「だな」
「オートバイで風を切って走るの。最高!」
「ああ、このサイドカーはウクライナ製なんだぜ」
「今、話題のウクライナだね」
「ふふふ、そうだ。ウクライナ製のドニエプル。1990年ごろに輸入された車両をレストアしてある」
「そうなんだ」
「元々は旧ドイツ軍で使用されていたサイドカーをコピーしたものだ。二輪駆動だからな。通常のオートバイと比較して不整地での走行性能が非常に高いぞ」
「旧ソ連って、舗装路なんて無いってイメージだし」
「だな。そんな使用環境だから、ドイツ軍のサイドカーBMW-R71が重宝された。良いものだから自分たちで作っちゃおうって事で、旧ソ連で生産され始めたんだ」
「なるほど。実用重視なんだね」
「そう。基本的に軍用品」
「なんかこう、無骨で不愛想で、ホンダみたいなお色気がないよね」
「そこがいいんだろ。硬派で女なんか関係ねえよって姿勢が好感度マックスだよな」
「その意見は尊重するけど、あたしも一応、女の子なんですよ」
「猫耳ついてて全身もふもふだけどな」
「いいじゃん。可愛いでしょ」
「まあな。白毛ってのもそそる」
「何だかエッチだね」
「男は大概エッチなんだよ」
「ふーん。でもさ、アンタは金属製でしょ。エッチできるの」
「性欲はあるぞ」
「だから、エッチできるのかって聞いてんの。あたしはもふもふだけど、ちゃんとできるよ」
「……」
「あらら。顔、赤くなるんだね。金属製なのに」
「…………」
「ねえ、ちょっとさ。あそこの木陰でしちゃおうか? ね!」
「か、からかうんじゃない! 俺はじいちゃんからお前の貞操を守れって厳命されてるんだ。俺が率先して破ってどうするんだ!」
「えーっと、あたしがイイって言ってんだからイイのよ。恥ずかしがらないで」
「馬鹿者! 頭を冷やせ!」
「ええ? ケチんぼ」
「ケチとか気前がイイとかの話じゃない。もっと自分を大切にしろ!」
「わかったよ。ケチ」
「トイレ休憩にする。そこの駐車場に入るぞ」
「ねえ、アンタもトイレ必要なの? 金属製なのに?」
「体内を循環しているアミノ酸や水分、油脂を定期的に交換する必要があるんだ」
「古いのは排泄するんだよね。つまり、ウンコするの?」
「うるさい!」
「ウンコするんだ?」
「黙ってろ! この猫獣人!」
「あ、今のは差別用語だよ」
「お前には言われたくない」
「あたしは差別したりしないよ。アンタが金属製でも普通に接してるし、エッチだってしてもイイって思ってるし」
「だから、黙ってろって。あ、冷却水の温度が急上昇してる。これはヤバイ」
「興奮した?」
「違う! ちょっと水分補給してくるから待ってろ」
「うん。私は自動販売機を漁るね」
二人の他は誰もいない道の駅の跡地。金属製の肌を持つ彼、
二人の他は誰もいない。
「アイツ……一人エッチしてんのかな。キャハ!」
劉生を煽る事がエリザの趣味であるらしい。
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