スタミナ うなぎの櫃まぶし

11

 「あ、これ、もう逃げられないやつだ」


 朧月が愉快そうに口笛を吹く。


 ほんじつの報酬は、


 「はは、ご愁傷様」


 なんと、ウナギ。


 の、炊き込みご飯みたいなやつに細い玉子焼きとのりがのっかっているやつ、だった…


 *


 ほんじつ、ユリちゃんはなんと、しおらしく、いつもの席に座っていた。


 病気なのかとあわてて声をかけるけど、

 「くじらさん、きのう、元気がなかったから、」

 て、逆にユリちゃんは、オレの顔を心配そうに覗き込んできた。

 「あの、わたしにできること、いまはこれしかなくて」

 て、報酬…弁当をぎゅうぎゅ、押しつけてくる。

 「梅雨バテ防止メニュー、櫃まぶし、です!」


 え? なんて? ひつ、?


 「これで、元気、回復してくださいね!」


 きょうはなにもはなさずユリちゃんは、梅雨の煙った空気に逃げるように、バタバタと去っていってしまったのだった。


 *

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