チャーシューの生春巻き

8

 ほんじつの報酬は、


 『こないだ、習ったんですよ!』


 て、それは、チャーシューと梅干し、ねばねばしてしゃりしゃりした野菜が半透明の薄いなにかに包まれているなにかだった。


 『ほんとはエビなんですけど! 高校生男子はお肉だと思って、アレンジしました!』


 なんて、得意げにはなしていただけある。オレはもう二十歳だけど。


 「やっべ! 生春巻きまきじゃん!」


 朧月が覗き込んで歓声を上げている。


 これが春巻き⁉︎ セブンのとまったくちがう。ユリちゃん、天才か。


 「おまえ、このまま依頼完遂しなければ、一生、これ食えるのか?」

 羨望の眼差しで弁当を見つめる朧月は、ほんきの表情だった。


 *


 「女の子は、好きな人の前にでると、目がきらきらするんだ」


 パパを警戒するわけじゃないけれど、てっとりばやく終わらた方がいい、てことで、きょうは朝から朧月と、駅前のマックで打ち合わせをしていた。


 「アドレナリンがでて、瞳孔が開くんだって」


 なにそれ、女子こわ。


 「で、やたら料理とかお菓子づくりとか、はじめる。なんでかわかるか?」


 恋人修行?


 「胃袋を掴まれた男は、逃げられないんだ」


 なにそれ、女子こわ。


 「ユリちゃんはそいつに弁当か菓子か、渡してるはずだ」


 なるほど、それはわかりやすいな。定時の生徒は弁当率が低い。


 「あと、ある日突然、キレイになる。恋をするとキレイになる」


 なにその魔法、女子こわ…


 ちなみにユリちゃんはすでに十分、かわいい女子高生だった。一般論で。

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