貞操逆転世界の男性Vtuber
恋狸
第一章 てぃの巻
第1話 転移したっぽい
「んあっ? んんー!! よく寝た!」
どうも頭がぼやけている。よく寝たどころか寝すぎた。
昨日は大学の飲み友と、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをしていた記憶がある。
途中から酒の許容量を超えたのかぷっつり記憶は無いけど、まあ見慣れた天井だし帰ってこれたのならヨシ!
「水……水を」
ゾンビのようにフラフラ台所に行って蛇口を捻る。
「あー、これだよ。絶賛二日酔いの朝イチに飲む冷たい水。酒よりうめぇ……」
甘露なり。
こんなことしてるから、いつまでたっても彼女できないんだけどな。年齢=彼女無し歴。ピュアな恋愛を望む、心は童帝。体は童貞。
どうも21歳、
「テレビ、テレビと」
リモコンを探してテレビの電源を入れる。
『今朝のニュースです。昨日夜8時頃、男性の家に侵入し強制猥褻を犯したとして京都区に住む24歳の女が逮捕されました。女は「出会いが無くて腹が立った。一発ヤれば人生変わるぜ女ども」の供述しており──』
「ぶっっ!!??」
全力で水を噴いた。
「……いやはや、ビックリしたけど世の中こんなこともあるんだなぁ。相当美人だし出会いなんて幾らでもあったろうに……」
朝、というか昼からすごいニュースを見た。
女性側からの強姦なんてあるんだな。世界は広い。
『続けてニュースです。本日にも男性保護法の新案が可決される模様です。その事について専門家の夜旗教授をお呼びしています』
女性ニュースキャスターの呼びかけに、でっぷりと太った蛙のような顔をした女性が映された。テロップには『東京竜胆大学法学教授
「男性保護法? 竜胆大学?」
なんだそれ。どっちも聞いたことないんだけど、俺の知識不足?
『ええ、そうですね。とても素晴らしい法案だと思いますよ。昨日のニュースのような事件の防止も可能ですし、男性の人権を守るというこの法律において、これ以上のものは存在しないですねぇ』
『なるほど、ありがとうございます。では次に──』
「どういうことだ? 男性の人権を守る? いや、女性もだろ。どうした平等は。そんな法案炎上するだろ。これでも毎日ニュース見てたんだけど初見だぜ?」
疑問を口に出す。ニュースを批判しながら、俺の額から一筋の汗が流れ出る。こんなドッキリのような出来事をまさか俺は信じているのか?
「そうだ。こんな時のためのスマホじゃないか」
急いで検索アプリを開き、男性保護法について打ち込むと、何万件にも及ぶ検索結果が表示された。そのことに面を食らいつつも法務省のホームページを開き、内容を確認する。
『男性保護法
世界全体で1:100もの男女比になってしまった現在、我が国では著しい人口減少が確認され、これは早急に手を打つべきである。
よって、男性の人権を守り、法体制を整えることが急務であると国会で審議された結果、男性保護法を制定することに決まった。
一ヶ月に3回の精子提供による多大な支援金。男性の住居の厳重な守衛体制。その他──』
「頭が痛くなる……」
俺のスマホが壊れたのか、なんて現実逃避はしない。テレビで報道されていた通りなのだろう。
つまり俺は──
「貞操逆転世界に転移したのか……」
ネット小説で読んだことがある。
男女比はともかくとして、男性と女性の価値観が入れ代わる世界だ。
ただし完全な逆転ではなく、小説の都合上男性側に優位な点が幾つか窺えるが、恐らくこの世界もそうだろう。じゃなきゃ、一方の性別を優遇するような法案は可決されない。
「まじか、まじか。男にとって最高の世界。ナンパでもするか? ……いや、無理だろ。そんな度胸ねぇし、さっきのニュースみたいな事件が横行する世界だったら、守り続けてきた大切な童貞が無惨にも散らされる」
俺は! 恋をして! 最高のシチュエーションで! 初体験を迎えたい!!
だからモテねぇんだよな。って、やかましいわ。
「どうしよ。俺って大学に通ってることになってんの? 飲み友はどうした。RINEは……両親だけか。他の連絡先が消えてる」
陽気で愉快なバカ野郎どもとは、もう会えないのか。いや、あいつらなら悲しむより楽しめとか言ってきそうだし、まだ完全にあいつらがいないと決まったわけでもない。
「今後の方針を決め……ってハッ! 俺の推したちはどうなってる!!!!」
シュタタタ! とスマホをスクロール操作。動画投稿サイト、Yoituebを開き登録しているチャンネル一覧を見た。
「いる、いる、いる、いる、いないっ!? いる! いない!? 男性yoituber全滅ッッッ……。いや、待て諦めるな」
検索ッッッ!!
「いたぁぁ!! え、TSしてて草」
俺の好きだった配信者たちは、女性はそのまま。男性はTS,つまり女性になってた。
「こんなのってありかよぉ……」
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