絶望
死の三日前ー
絶望しかなかった。
誰にも、話せなかった。
結果を知ってから、もうすぐ一ヶ月が経つ。
ジョーに、いつ伝えようかしら…
【宮部さん、少しだけ引き離しますよ】
耳元で、誰かの声がする。
カチ…カチ…カチ…カチ…
その音が止まった瞬間。
私は、少しだけ目を覚ました。
さっきまで、キラキラの世界にいた彼女の心は、真っ暗の闇の中にいる。
ジョーは、それでもいいっていってくれる。
体が、別の生き物のように重たくて堪らない。
勇気を出して、明日には伝えなくちゃ…。
家に帰る。
すぐに、お酒を口にした。
酒量が多くなってきてる。
この闇から、抜けれそうな気がしない。
死の2日前ー
今日は、休みだった。
ジョーから、連絡がやってきた。
今日、必ず話をしよう。
私は、準備をする。
今まで以上に暗い服を着ている。
心の中は、どしゃ降りだ。
待ち合わせ場所についた。
「千尋、久しぶりだね」
「このニ週間忙しかったから…」
無理して、笑うのに疲れてたからって言いたくても言えなかった。
「そっか。無理するなよ」
ジョーは、いつも通り手を握ってくれる。
優しい温もり…
なのに…
なのに…
幸せが、減ってるのはなぜ?
ご飯を食べ終わった。
「少しだけ話したいから、家に来てくれない?」
「ああ、勿論だよ。」
私は、ジョーを家に招いた。
コーヒーを淹れて、ジョーに渡した。
「ジョー」
「何?」
「私ね、ブライダルチェックを受けたの。それより、詳しく調べれるやつをしたの」
「うん」
「ジョー、私。子供が出来にくい体質みたいなの」
「そうか。別に気にしないでいいよ」
ジョーは、そう言って笑った。
「本当に?」
「ああ、本当だよ。気にしなくていいんだよ。俺は、千尋といれればそれだけでいいんだよ」
そう言って、ジョーは私を引き寄せて抱き締める。
「よかった」
安心した。
ジョーに話して、よかった。
よかった。
私は、ジョーとずっと一緒にいたい。
ずっと、一緒にいたい。
幸せ…。
【よかった。よかったね、千尋さん】
ペラペラと雑誌が捲られるように時間は、進んでいく
死の一日前ー
私は、嬉しかった。
気分は、最高だった。
ジョーと一緒に生きていける。
それだけで、幸せ。
明日は、ジョーと一緒に一日過ごせる。
私は、ジョーと生きていけたら何もいらない。
ドクン…ドクン…
ジョーが、ラブホテルに入って行くのを見てしまった。
やっぱり、ジョーは子供を望んでいたんじゃない。
ジョーは、嘘をついた。
胸が締め付けられて苦しくて苦しくて、堪らない。
【駄目、考えちゃ、駄目】
私は、千尋さんを一生懸命引き留めるけれど…。
過去の出来事は、変えられないのだ。
ジョーが、いない世界はいらない。
バリンっと、音が鳴り響いた
【駄目、駄目、駄目】
ジョーを愛してる
なのに、何故…
【痛くて、苦しくて、息ができない。】
ジョーと一緒に生きていきたかった
【待って、止まって】
やっぱり、過去は変えられない。
ずっと、一緒に居たかった
私は、ジョーを愛してる
ずっと、ジョーを愛してる
千尋さんの体を引き留められない。
鉛みたいな体を、引きずって千尋さんは家に帰った。
ジョー、愛してる
何度も手紙を書いては、ゴミに捨てる。
もう、真っ暗闇を感じている。
死ぬ以外を感じれない。
千尋さんは、死ぬのだ。
間違いなく死ぬのだ。
「ぁぁあぁあああああ」
涙が、滝のように流れている。
「もう、嫌」
バリン…
鏡に向かって、マグカップを投げつけた。
バリ、バリ、と音を立ててゆっくりと鏡が割れていくのを見つめてる。
もう、楽になりたい。
千尋さんは、また、紙に向き合った。
サラサラと書き上げた。
凄く、短い文章。
本当は、これだけじゃないでしょ?
私には、ちゃんと千尋さんの気持ちが流れてるよ。
痛みと苦しみで、おかしくなりそう。
ジョー、愛してる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます