第14話 クラス2ハイ・サモナー:ヒューマン個人戦4
飛行機が上空で
……答えは見てる側も、する側も『恐怖』である。
(目が、回るぅぅ……!?)
『事故りそう』なのではない。もう、『事故っている』
「そんなのアリかよォッ!?」
ただ、そんな変態挙動が功を奏した部分もあった。
魔力は感情が不安定だったり、動きながらになると途端に溜めるのが難しくなる。難しくなるだけで出来なくなる訳では無いが、今の召喚術師が正にその状態だ。
この程度のことで動揺するなんて……クラス2にしては修羅場慣れしていない。いや、『この程度のこと』と割り切るには出鱈目な曲芸だとは俺も思うけど。
「そこだッ!」
「ぐァ!?」
ギリギリまで魔力を溜めようとしていたせいで初動が遅れた召喚術師に勢いのまま、すれ違い一閃。流石に直撃とまではいかなかったが、召喚術師の羽織るローブは大きく裂けた。回る視界と踏ん張りが効かない状態からの攻撃なのだ、焦りを引き出せただけでも上出来だろう。
(手傷を負わせられれば良かったが……っ!)
それよりも今は次の行動に切り替えないといけない。なにせ召喚術師はトレーニングルームの
「かはっ!?」
背中から生じた鈍い衝撃が全身へと侵食していく。最低限の受け身を取った俺の身体は勢い良く壁面に叩きつけられていた。
衝撃を逃がすように口からは悲鳴と空気が抜け出ていくが、それだけで受け流せるなら受け身の技術が発展する事は無かっただろう。もしかしたら受けたダメージは俺の方が大きいかもしれない。
ただ、それでも衝突が背中からだったのは運が良かった。下手したら
◇◇◇
衝撃が身体を通り過ぎると、俺は重力に従う形で地面に崩れ落ちた。
(怪我、は……大丈夫、だな。)
素早く身体チェックを行ってみるが、今回は壁面に強く身体を打ち付けただけで思考にもノイズは混じっていない。問題なく、戦闘続行出来るだろう。
(それでも、素直に回避していれば……)
素直にスケルトンを回避していたなら、そもそもこのようなダメージを背負う事は無かった。そう考えると今回の強行突破は失敗だったかもしれない。
ただし、その場合には召喚術師の狙い通りに試合が進む事になる。それは、良くない。対人戦に慣れた相手のレールに乗り続けていては辿り着く先は『敗北』だ。随所で召喚術師にとっての予想外を作らなくては勝利に近づけない。
(それなら、これ以上の反省は後回しだ……!)
脳裏に浮かんだ後悔を一旦頭の片隅へと追いやる。今はこの局面に集中しなくては。戦況はすぐさま入れ替わるのだから。
「gigigigi!!」
召喚されてから一直線に距離を詰めてきていたのだろう。ふらつきながらも立ち上がった俺の前でスケルトンが剣を振るう。
スケルトンが装備している片手剣は言ってしまえば切れ味が当てにできない粗悪品ではあるが、それでも体勢不利の状態から叩きつけるように振るわれてしまえば膂力的にも受けきることは出来ない。
骨だけの身体の何処にこれ程の膂力があるのだろうか。まぁ、それを言うなら声帯だって無いのに叫んでいるけども。
(受けるのが難しいなら!)
剣先の向きから振るわれる軌道を予想。そこからサイドステップで大きく逸れてやれば安全圏への離脱は容易い。
スケルトンは行動が安直なので、避けるだけならそこまで難しいことでは無いのだ。
(召喚術師は……召喚獣の裏か。)
時間を掛けない範囲でチラリと状況確認。対人戦のセオリー通りに召喚術師はスケルトンの背後に陣取るようだ。
こうなってしまうと、召喚術師を直接狙うには『スケルトンの回避』と言う一手の遅れが出てしまう。普段以上の速度を出していた先程でさえローブを切り裂く事しか出来なかったと言うのに、追加で一手掛かるようになってしまうのでは逃げに徹した相手を捉えられるだろうか?
それに、捉えるまで背後をスケルトンに晒し続ける事になるのも問題だ。両方を同時に相手取れる程、俺の技量は高くない。
「おっとォ、これ以上の召喚獣スルーはイケねェなぁ?」
「召喚獣の裏にびくびく隠れている方がイケてないと思うが?」
「ハッ! 俺は自分で手を汚すほど野蛮じゃねェんだよ!」
「召喚術師の面汚しは言う事が違うね。」
「ンだとォッ!?」
激昂しつつも、召喚術師自らが挑みかかってくる様子は無い。先程の接触で警戒心が増したのだろう、俺がスケルトンを避ける素振りを見せただけでも召喚術師は逃げ腰になっている。
……攻め込んでも召喚術師が逃げない可能性は低いだろうな。勝算の低い賭けに出るのはまだ早い。
(クラス1召喚獣の召喚時間は10秒前後。 ただし、2体目からは1体目の召喚維持にも魔力を消費するようになるから、更に時間が掛かる。)
つまり、クラス2召喚獣の召喚までにはまだまだ時間的余裕があるはずだ。
(……方針変更、するか。)
無理をして強行突入したと言うのに結局こうなってしまったのは残念だが、仕方がない。地に足をつけるように、俺はスケルトンの対面で短剣を構える。
まずは、スケルトン狩りだ。
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