第17話

美咲が戸惑うように頷くと

「そっか……。空が言ってるのは、本当だったんだな」

そう言って考え込んでしまった。

「え?空さん、何か言ってたの?」

美咲がそう聞くと

「空が言うにはさ……オイラ達は本来、美咲達人間には見えない存在なんだって。此処は大龍神様が治める世界で、いわゆる神様の世界?らしいから、美咲達にもオイラ達が見えてる。でも、座敷童子は人間界で傷付いて帰って来たから、たとえ此処に居ても、美咲達には声が聞こえないかもしれないって」

風太はそう言うと

「な!座敷童子」

と、自分とは反対側の美咲の横に座る座敷童子に声を掛けた。

美咲はその言葉に

「それって、どう言う事?」

と真剣な顔をして風太に質問すると、風太は腕を組んで考え込むような仕草をしながら

「詳しい事は知らねえけどよ。人間が神様を信じなくなって、自然を大事にしなくなった。だから神様達の力も弱まって、この世界を守るのが難しくなってるんだって」

そこまで話すと、風太は縁側から飛び降りて

「座敷童子も、お願いばかりされて都合の良い時しかお参りしないからさ。力が弱まって動けなくなっているのを、空に助けられたって言ってたよ」

と言うと、足元の石を蹴って遊び始める。

「あのさ……風太君。空さんって……どんな人なの?」

思わず美咲が聞くと

「空?大龍神様に仕える龍神で、元々はオイラの母ちゃんに仕えていたらしいよ」

風太は普通に話をしているが、美咲は混乱した。

空が風太の母親では無いとして、その風太の母親に仕えていたとしたならば……今、この場所に居る美咲達の中で、風太の父親を知っている唯一の存在だということだ。

風太は、父親が人間だと言っていた。

その時、美咲の胸の中がザワザワと嫌な胸騒ぎを起こす。

「風太君……もしかして、風太君の父親って……」

「あれ?美咲、此処に居たの?」

美咲が呟いた瞬間、呑気な顔をして修治が現れた。

「あ!修治だ!」

風太と座敷童子は修治を囲むと

「遊ぼうぜ!修治、遊ぼうぜ!」

そう叫んでいる。

「あ〜れ〜?何?俺って、ちび子にも大人気?」

嬉しそうにしている修治に

「ちびっ子にもって何?あんたがいつ、何処で、誰に人気があったのよ!」

と、美咲が呆れて呟く。

「美咲!俺はいつだって、美咲が一番だよ」

修治は美咲の手をとってそう言うと、手の甲にキスをしようとした。

美咲は慌てて手を離すと

「気持ち悪い事すんな!」

と、修治の頭にチョップをする。

すると風太達も美咲の真似をして、修治の腕にチョップし始めた。

「こ〜ら〜!誰だ!俺にチョップしてるのは!」

修治がそう叫ぶと

「やばい!逃げろ〜!」

と叫び、風太と座敷童子が走り出す。

その2人を修治が追いかけていると、恭介が裏山の方から帰って来た。

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