8.近すぎる2単語は、1話目が楽な代わりに2話目がツライです
8-1.西医体主管も今では遠い昔です
No.6388解剖学
No.2564消化器官
No.660運動会
「さあ、続いての障害物は「解剖学」だー! 落ちている紙に書いてあるキーワードに関する口述問題を5問正解しないと抜けられません。さて、最初に抜けるのはどのクラブでしょうか!」
『全日本医学部総合クラブ対抗運動会』
「運動部だけに、全日本規模の交流大会があってズルい!」「文化部にも交流の機会を!」という話が『全日本医学部体育大会』執行部での会議に投げられてから約半年。まさか、こんな形で本当に実現してしまうとは誰も思わなかった。
しかし、『全医体』と違うのは、学校ごとではなくてサークル・部活ごとでのチーム戦だった。
初代チャンピオン。この言葉は人間だれしもが欲しいところではあるものの、実のところ手に入れるには相当な実力と、それを超える運が必要なはずだったが。
「さあ、3番手でやってきたのはまさかの文芸サークル。実は自費出版をしている方が多いらしい、昨今の大学生部文学部サークル。走者の、三重大学3年生
「はい、ご紹介に預かりました藤田です。よろしくお願いします。さて、中地さんはまだ3年生のようですので、基礎的なところで問題としましょう。まずは解剖学的なお話からです。『主膵管と総胆管が合流した共通管が十二指腸下行部に開口している部分』を『なんとか乳頭』とか『なんとか膨大部』と言ったりしますね。さあ、なんでしょう?」
「え、えっと。うわ。なんだっけ。すいません、わかりません」
「はい、答えは『ファーター乳頭』ですね。また、その周りを形成している括約筋を『オッディ括約筋』と言います。まとめて覚えておいてくださいね」
「おーっと! 中地選手! なかなか問いに答えられない! ピンチかー!」
「このオッディ括約筋は、その組織自体はイギリスの
生徒側の勉強不足により遅々として進行しなかった運動会は、教授陣の呆れから運動会の名を変えて勉強会となった。
かくして『第1回医学部総合勉強会』は優勝者など存在するわけもなく幕を閉じた。以降、数年おきに第1回が催されるものの、第2回開催を聞く日はなかったという。
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