第2話「偽造された書類」
「お母様、お姉様ったら酷いのよ!
お姉様のドレスからちょっとフリルとリボンを頂いただけなのに、お姉様が私のことは突き飛ばしたの!」
「カランらお前はどうしようもない子だね!
悪い子には罰を与えなくてはいけないね!
今日から一週間カランは家の仕事だけをやるように!
学校に行くことも買い物に行くことも許さないよ!」
「そんなあんまりすわお義母様!
明日は卒業式です!
私は卒業生総代に選ばれているのですよ……!」
「自分が優秀なのをひけらかして嫌味な子だね!
卒業生総代ならお前の代わりにウナがやるさ!
ウナ、カノンの代わりに答辞を呼んでやりな」
「はーい、お母様」
「そんなお義母様、それはあんまりです!」
「ウナは学年で次席だったんだ。
首席のあんたが欠席すれば、次席ウナが答辞読む、それだけのこの話だよ」
「そうかもしれませんが。
パーティーには婚約者のコアトと一緒に行くことになっています。
私が卒業式に行かなかったらコアトにも迷惑をかけてしまいます」
婚約者のコアト様は伯爵家のご令息子。
格下の子爵家の令嬢である私が、ご迷惑をかけるわけにはいかない。
「今度はコアト様を理由にするつもり?
心配しなくてもいいのよお姉様。
コアト様はだいぶ前から私と卒業パーティーに行くことになっているの。
それにコアト様はお姉様とじゃなく私と結婚したいみたい」
「えっ?」
「誰だって可愛くて優しい子と結婚したいものだよ」
地味な私と違いウナは桃色の髪と瞳の美少女。
「あんたとコアト様の婚約は何カ月も前に解消されてるよ。
言ってなかったのかい?」
「そんな……」
「心配しないで、お姉様。
コアト様と私が結婚することで、クーン子爵家とヴィレ伯爵家の縁はちゃんと結ばれるから」
学園を卒業するのに必要な単位を取った後、ずっと家で家政婦のように働かされてていました。
ここ数カ月学園に行くことが出来ず、コアト様とお会いする機会もありませんでした。
私とコアト様との婚約が何カ月も前に解消されていて、代わりに腹違いの妹のウナがコアト様と婚約していたことを今知りました
「分かったかい?
あんたが明日卒業式に行く必要なんてこれっぽっちも無いんだよ。
わかったら明日は一日家事をするんだ。
あんたはこの家のメイドになるんだからね」
「メイドとして働く?
ですが子爵家の前当主は私の実の母親。
次の当主は私のはず。
なぜ私がメイドになるのですか?」
「そんなの簡単だよ。
ウナはあんたの養女だ。
あんたを飛び越えてあんたの養女のウナが家を継ぐのさ。
あんたは使用人として一生この家で、床に膝をついて雑巾がけでもしてればいいのさ」
お義母様の言うとおり、ウナが私の養女になれば子爵家を継げる。
「私はウナを養女にした覚えはありません」
「書類はちゃんとあるんだよ。
覚えがないのはあんたの記憶力が悪いか、あんたが嘘つきかのどちらかだね」
まさかとは思いますが、書類を偽造された……?
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